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Bob Dylan『Highway 61 Revisited』(1965)

アルバム情報

アーティスト: Bob Dylan
リリース日: 1965/8/30
レーベル: Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は18位でした。

メンバーの感想

The End End

 すごい。どんどん姿を変えていく。演奏はどんどん変わっていくのに、同じ人が書いた曲を同じ人が歌っていると確実に分かる。作家性ってこういうことですね……
 そして、この歌い方に影響を受けたであろうボーカリストの顔がいくつも浮かんできて、ニコニコしちゃった。すべては繋がっている!

コーメイ

 有名な「Like a Rolling Stone」が収録されているけれども、全体を通じて、ざらざらした感じが、円熟してきた印象を抱いた。とくに、ブルース系統がナンセンスであるけれども、なぜが聴いてしまう力があった。

桜子

 またボブディランかよーー!!!!そんなに得意じゃないから原稿書くのつらいなーと思い切りたかったのけれど、悔しいことに(?)一曲目がまあまあ好きだなー!薄くピャーと鳴っているオルガンの音の抜け具合がとても好きだし、ドラムのアレンジが、独特な感じがして面白いー!

湘南ギャル

 バンドの編成が増えて曲自体がメロディアスになるほど、歌い方の特異性が目立ってくる。レビューを書くのに苦戦し、何度も何度もアルバムを聴き直したが、それでも満足に歌える曲は一曲もない。彼の歌い方が後のロックに大きな影響をもたらしたと聞いたことはあるが、ここまで他人に音を取らせないアーティストはなかなか浮かばない。ヒップホップですら、もっと頭に残る。ただ、その唯一無二さが彼を輝かせるのだろう。脳内で再生できないなら、音源を聴くしかない。そうして、何度も何度も彼の歌を聴くことになる。そして、その頃にはもう彼の作品を好きになっているのだ。

しろみけさん

 前作よりもバッグバンドらしさが抜けたというか、派手なバンドサウンドにすることへの衒いが失せたように感じた。それにはボブの節回しの軟化というか、ぶっきらぼうに言葉を言い連ねていた以前と比べてメロディの動き方が滑らかになっている。"歌に寄り添う演奏"とはよく言うが、むしろ"演奏に寄り添う歌"とも言うべき態度にボブが突入したことを伺わせる。

談合坂

 「Like a Rolling Stone」のことしか知らなかった(と思って聞き進めたらいくつかはわりと聞いたことあった……)けど、アルバムを全部聞いてみると思っていたよりもしっかりロックだった。ロックたろうとしていることで生まれるものというよりも、より自然体にこのスタイルをやっているのが伝わってくる気がする。

 いつだったかフジロックのCMに「Like a Rolling Stone」が使われていて、曲の嘘みたいな開放感と画面に映る山の中にあるフェスティバルの様相にとんでもなく惹かれたことを思い出す。今聴くとオルガンのフレーズとカントリーっぽいギターが混ざって聖なる響きと泥臭い美しさがいい塩梅に耳に飛び込んできたんだな……と分かるが、そんな取ってつけた理由抜きにして素晴らしい曲だ。アルバム全体を見ても「Like A Rolling Stone」に近い響きを持った作品がゴロゴロ転がっているけど、やっぱりとにかく歌の奥で鳴るオルガンやハーモニカの人生3周目みたいな響きがいい。

みせざき

 高校の時から聴いていたアルバムだった。なぜ聴いていたかって言ったら、素直に名盤と言われていたからだった。あと好きな村上春樹の小説に良く出てくるからBGMにしながら読んだりしていた。
 普通に長い曲が多いし取っ付き易くは無いが、気づいたら優しく包み込んでくれるような魅力が含まれていると思う。特に全然和訳を読んでも意味は良く分からないが、「Ballad of a Thin Man」にはそんな魅力が詰まっていると思う。
 わかったような気になるがまだまだ時間がかかりそうなアルバム、そういう位置付けでこれからも付き合っていくことになるのだろう。

六月

 キーボードがすごい重要な仕事をしているアルバムだと思う。「Like a Rolling Stone」は言うに及ばず、特に、「Queen Jane Approximately」が良い!ああいうピアノの音みたいな、脳みそを気持ちよくまろやかに肉切り包丁でぶった切ってくれるような表現を自分も何かしらで作ってみたいなあと思う。そのほかの演奏もそれにつられてなんとなく煌びやかというか、雨の日の光に塗れた夜のショーウインドウが並ぶ街みたいな艶艶を纏っている気がする。
 ボブ・ディランって、後年のミステリアスなイメージから孤高な存在みたいに思ってたけれど、みんなが真似したいと憧れる音をその都度作ってきたトレンド・セッター的なミュージシャンだったんだなあと思いました。ちなみにですが、「Like a Rolling Stone」は、後のThe Bandのメンバーと一緒に演った1966年のライヴ・バージョン(演奏直前に"Judas!"と観客にヤジられるやつ)がやっぱり最高です。あのオルガンの単音に乗せて一斉にみんなが爆発するように演奏を始める瞬間、ああいう瞬間のために音楽は生まれたのだと思う。

和田醉象

 急激にバンドサウンドがしっくりくるようになった。前作のぎこちなさはどこへ行ったんだろう。
 前はギターが主体の音楽過ぎたけど、アレンジャーがいいのかアルバムの内容が一本調子になりにくく、、緩急効いてて聴きやすい。初めてBob Dylan聴くならこれかもね。

渡田

 声は綺麗ではないし、音程は最低限しか意識されてないような歌なのに確かなリズムが感じられる。楽器の音に乗る歌声は、微妙にそのメロディから外れているのに不自然に聞こえない。いつまでも間延びしたり、何も喋らなくなったり、急にとめどなくなったり……その独特の間の取り方は音楽としては不規則なのかもしれないけれど、妙に惹きつけられて、映画の核心部分に入り込むときのような、小説の重要な部分を読んでいるときのような感覚にしてくれた。
 このアルバムが作り出している独特のリズムは、音楽としての規則正しさというより、小説や映画の一場面で見られるような、印象的で小気味良い会話のテンポと同質のもののような気がする。

次回予告

次回は、Otis Redding『Otis Blue: Otis Redding Sings Soul』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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