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鈴木茂『BAND WAGON』(1975)

アルバム情報

アーティスト: 鈴木茂
リリース日: 1975/3/25
レーベル: PANAM/ クラウン(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は61位でした。

メンバーの感想

The End End


 ストリーミングサービスには2017年のリマスター版しか無かったので、そちらを聴いた。明らかにリマスターによってモダンな響きを獲得している感じがあり、音像に対するコメントはなかなか困難だなと感じた。オリジナルと聴き比べてみたいな…
ただ、マスタリングの違いを差し引いても「とにかく音も曲も演奏もめちゃくちゃ良い…!」と思ったし、よく言われる“今聴いても古さを感じないだろう?”みたいな文脈で言えば『風街ろまん』とかを越えていると思う。知らない人は聴いてみると、かなり純粋な新鮮さを感じられると思います。
「スノーエキスプレス」、こんな込み入ったフレーズのギターでダブリングが成立してるの上手すぎるだろ。天才なので当たり前なのだけど。

桜子

 砂の女のフェイザーの感じが大好きです。
エフェクトがグルーヴを作っていて、私が想起するアラウンド80'sの真ん中って感じ!
あとは、やっぱり100ワットの恋人が好きです。
言葉選びこそクサい気がするけど、2人の、ほんの小さい世界を歌ってるバランス感が好きです。

湘南ギャル

 楽器がみんな上手で、完成度も高くて、アルバムとしてのまとまりもある。耳触りがあまりに良い。耳触りがあまりに良いので、引っかかりを探すのが難しい。ファンクの泥臭さとか胡散臭さとかを感じさせないようになっているため、聞きやすいアルバムではある。上流階級ファンク。

しろみけさん

 気を吐いている。1人西海岸へと向かい、現地のミュージシャンたち(スライやリトル・フィートのメンバーなど、とても豪華だ)と作り上げた本作。鈴木のシグネチャーであるダイナコンプによってハイが強調されたギターからは、ソングライター/ギタリストとして行列の先頭に立とうとする、前のめりな野心を感じた。フェイザーをかけてより鋭くなった「100ワットの恋人」でのカッティングなど、ただのセッションでは終わらせない気概に溢れている。

談合坂

 いい意味で体感時間が長い。すべての楽曲が3、4分という標準的な尺ではあるけれど、3~4分の曲の型みたいなものを想定して聴く場面がなくて、ただただ「今」を楽しむような体験だった。プレイヤーがプレイヤーとして作る音楽は楽しい。

 はっぴいえんどのメンバーとして活躍後、ジャパニーズポップスの黎明期を支えるギタリストとしてキャリアを歩む中で発表した一作目。「風」という言葉でアルバムは幕を開け、はっぴいえんどからの連なりを読み取ることも出来るが、目立つのはそのサウンドやグルーヴの豊穣さだろう。アメリカ西海岸のスタジオでサンタナやスライのメンバーを集めて録音された音の立体感と懐の広さの快楽には抗えない。風街=心象風景とノスタルジーのイデアを抜けた風が西海岸のどこまでも広がる空へ舞い上がる。そんな解放感にみちている。

みせざき

 鈴木茂の人として、ミュージシャンとしてのカッコよさを存分に味わえる作品なのでは、と思いました。何よりもやっぱりギターのカッコよさが際立ってました。リズムギター、ソロ、各々において聴いていて気持ちよくなるほどのカッコよさを感じました。ギターをメインにして作られるアンサンブルの心地良さをすごく感じました。何というか、全然歪ませてもいない、クリーンめな音を基調としてる感じや、それらを多重に重ねて作られるアンサンブルの心地良さがありました。コンプをかませた音、カッティングで感じるファンク感が心地良かったです。鈴木茂のギターにおける総合力が遺憾なく発揮されている作品に感じました。鈴木自身のボーカルもはっぴいえんどで馴染みがあった関係で耳に馴染みやすかったです。

和田はるくに

俺には難しい

渡田

 曲を聴いて頭に自然に思い浮かぶのは、いつか過ごしてみたい素敵な休日の景色。晴れた休みの日に1人で車で遠出するイメージ。砂の女は特にそう。
 どの曲も、背後の音はそれぞれ聞いてみると複雑で独特だけれど、ついにはポップにまとまっている。歌詞はシンプルな言葉遣いながら、時折小説のような表現が目に止まる。
 気楽で聴きやすい音楽の裏に、豊富な経験や知識が伺い知れるのが、教養人の充実した休暇を思い浮かべさせ、そのイメージに憧れを抱かせるのだと思う。

次回予告

次回は、矢野顕子『JAPANESE GIRL』を扱います。

#或る歴史或る耳
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#アルバムレビュー
#鈴木茂


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