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シュガー・ベイブ『SONGS』(1975)

アルバム情報

アーティスト: シュガー・ベイブ
リリース日: 1975/4/25
レーベル: ナイアガラ/エレック(日本)
「50年の邦楽ベスト100」における順位は2位でした。

メンバーの感想

The End End

 どうも私は初期モノフェチらしい。任意のバンドやミュージシャンの作品に関して、1~2枚目の作品をフェイバリットに挙げることがとても多い。“目指しているもの”と“知らず知らず影響されてきたもの”、そして手癖が折り重なって生まれるザラッとした質感が好みなのだと思う。
 『SONGS』は、そんな私には本当にたまらないアルバムだった。よく知っているわけではないが、その後の山下達郎や大貫妙子のエッセンスが随所に散りばめられていて、とても興奮する。
 「ためいきばかり」などに見られる、本来シンコペーションしているリズムを“食ってる分の時間を足して”拍の頭から鳴らすような奇妙なリズムがとても面白い。近年シティポップと言われているようなこの時期の日本のミュージシャンの作品たち、こういう少しチグハグな部分が面白がられて海外でウケたんじゃ…?と思っている。専門外なので滅多なことは言えないが…

桜子

 明るい音楽最高!!!!
 使っているコードこそテンション使ったりでオシャレだとは思うんですけど、なんというかそれを忘れちゃうくらいのストレートな活発さと言いましょうか、そんな雰囲気がこのアルバムにあると思うんですよね。オシャレさって時には、自分との距離感を感じてしまう要素になってしまったりするんですが、SONGSはそんなの忘れて私を元気にさせるパワーがあります!洗練されているとは感じるのにそれが不思議です。

俊介

 音楽を聴いて、ありありと景色を思い描く体験ができた初めての作品。
 ジャリボーイでも一聴すれば途端に好きになれるようなこの魅力の源泉は一体どこから。 出会ってから10年以上経って、普段は記憶の中の遠い遠い片隅に置いてますが、今でもたまに埃をはたきつつ、春の風なり冬の陽射しのもとに晒してみたり。この作品の全曲、春夏秋冬のどれかに分類できる気がするんですが思い違いかな。
 初めて聞いた小学生当時のノスタルジックさと衝撃を伴った状態でしか、この盤をみつめることができないので、いますごく他のレビュワーがどんな感想を書くのか気になって気になって仕方がない。 あと、Wikipediaの「バンドの構造的宿命から1976年に解散したが、」の一節を当時(2014年頃)読んだとき、ものすごい美しさを感じた記憶がある。(綺麗で美しいものはすべて、そのままの形を保ったまま一生輝き続けると思ってたので) 春夏秋冬を感じるといった手前、なかなか申し上げづらいですが、「SONGS」にはエバーグリーンな魅力があると思います。

湘南ギャル

 シティポップと名の付くものすべてに苦手意識があったので、シュガーベイブのこともかなり敬遠していた。完全に食わず嫌いだった。メロディも歌詞も変なカッコつけがない。これなら東京以外の場所で聴いても没入できそうだ、と安心する。他に思ったことを言うと、楽器が上手い。各々の持ってるパズルピースがめちゃくちゃちょうど良くハマっていくのを見てる感じ。うまく言えねー。かっちりハマってかっこいいね!っていうバンドは、それぞれの持ってるピースが長方形だったり正方形だったりしがちであると思う。でも、シュガーベイブはそれぞれのピースがジグソーパズルみたいな形なのに、うまくハマっている。バンドが上手い、というのはこういう状態なのかも。

しろみけさん

 文法が変わった。使われているコード(この後に続くシティポップの楽曲群で指摘されているように、メジャーセブンスの使用頻度が極めて多い)や、ギターも含めた全ての楽器が全体のリズムにぴっしり従属するように組まれている(自分はJBの、バンドメンバー全員にドラマーの意識を植え付けようとした姿勢を想起した)など、ここから違うレースが始まったのだと強く感じた。こういうふうにも、ロックは日本語で話せる。

談合坂

 全然単純ではないし、滑らかというわけでもないと思うのだけど、耳馴染みが良すぎて正直何を書いたものかと思いながら聴き進めていた。気にしようと思えばいくらでも気になるくらいにザラついているのに…… 確実に言えることがひとつ、聴いているとものすごく自然に体が動いている。

 素敵だ。山下達郎も大貫妙子も自然に楽しそうに演奏している。このあと「シティポップ」がもたらす狂騒など露知らず、パキッとした演奏でビーチ・ボーイズ以降のポップスを消化している。素敵じゃないか。

みせざき

 シンプルさと曲のメロディー感がすごく良く、またレトロな雰囲気も感じさせ、聴きやすい作品でした。山下達郎がビーチボーイズに強く影響を受けているそうですが、そうしたアメリカのルーツロックの雰囲気はすごく感じますし、それに日本語の詩もとても自然にハマっていると思いました。この作品が当時セールスが伸びなかったり、批判を多く受けたというのも聴いた後ではかなり意外に思いました。勿論ギターもコーラスやコンプの効いたサウンド、時々ワウをかますサウンドも特別強い主張というより、上手くバンドサウンドの中に溶け込ませているなと感じました。日本のフォークロックを代表する作品だなと思いました。

和田はるくに

和製ビーチボーイズだ!コーラスのさざ波が押し寄せてくる。この領域にまで日本語の歌が拡張された瞬間だと思う。
昔からカーネーションが好きだったんだけれども、EDO RIVERがシティポップの名盤とされていて、いうほどシティポップか?とずっと思っていたが、「DOWN TOWN」を聞いて腑に落ちた。

渡田

 どの曲も音の伸びが聴いていて気分が良い。そういう声色の人が集まっているから当然なのだけれど、ボーカルの声だけでなく楽器の音の伸びもアルバムの印象を決定づけている一要素だと思う。
 伸びた声がだんだん消えそうになる前に、そこを補うように楽器の音が代わりに伸びてくる。その繰り返しのテンポが良くて、音をゆっくり響かせながらも、寂しさや緊張感はなくて、ポップでこれから何か始まるような予感を持たせてくれる。

次回予告

次回は、小坂忠『ほうろう』を扱います。

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