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Pink Floyd『The Piper at the Gates of Dawn』(1967)

アルバム情報

アーティスト: Pink Floyd
リリース日: 1967/8/5
レーベル: Columbia(US)
「『歴代最高のアルバム』500選(2020年版)」における順位は253位でした。

メンバーの感想

The End End

 え、このアルバム、金澤ダイスケがキーボードを弾いていますか……?ところどころにフジファブリック感が……
 それはさておき。ジミヘンに対して"呪術的"というレビューを多く見たし納得するが、個人的にはこちらの方がドロドロしていて、呪(まじな)いというか、この世界ではないところと接続するためのものに感じた。グニャリとした音像に対して、楽曲の構造やフレージング自体は頭で練られたように感じるものが多く、そのコントラストがより不気味に私の中へ入り込んできた。

コーメイ

 "うわ、広い!"のであった。様々な楽器を用いて、様々なギターの音色を重層的に構成している様子を聴いていて、この時期から、このような論理的なアルバムを作成していたと思うと、感心してしまった。中には、童謡からヒントを得たものが、なかなかがちがちの理論になっており、"うーん、こういくか"と新たな視点が得られた。

桜子

 7曲目変な曲でワロタ!変だし長いし!ながびよーん 

湘南ギャル

 ご多分に漏れず(?)ピンクフロイド一発目のチョイスとして「狂気」を選んでしまって以来、このバンドとは距離を置いていた。こんなテイストのアルバムも出していたのか!サイケで、でも牧歌的で、ジャキジャキしてるけどふわふわしてて、真面目でもありトンチキでもあり、いろんな方向からいろんな音がして、それでもメロディアスで、とにかく要素が多いのにすごいスッキリしてる。めちゃくちゃバランス良い。なんかジャケもめっちゃかわいいし。自撮りの時こういうフィルター使うと結構盛れるから私もよく使う。

しろみけさん

 フィル・スペクターの演出するサイケデリックは遥かなる波の壁を目の前にしたカタルシスだったが、これは波に飲み込まれて脳震盪をくらっている最中に錯乱した目が捕まえた光の景色。メロディはポップなんだけど、どうしたって演奏からアウトサイダー特有の視点のズレみたいなのが醸し出されていて、聞いてるだけで肩が強張ってしまう。本人たちは現代音楽のアプローチに惹かれていたようだけれど、それがロックのフォーマットに落とし込まれることによって、ありもしなかったジャンルがいとも簡単に生まれてしまう事象は痛快に思えた。

談合坂

 知識としてしか触れてこなかったのでこうして機会を得て初めてちゃんと聞いてみたのだけど、シンプルに勉強になるな~という感じ。この音楽の内側に入り込めるかはともかくとして、これを煮詰めてあれやこれやになっていくのね、という展望がもたらされるような感覚があった。チューニングベースである当代のロック・ポップスの表情が見えているというのも大きい要素としてある気がする。

 以前「狂気」を聴いて、何もわからずピンク・フロイドなんて二度と聞くか!と決意したのですが、このアルバムは好きです。バーズやビートルズなどこれまでの音楽語彙で説明できそうだけど、環境音や録音の仕方など技術的/時代的な進歩も見られて、素直に聞けるけどちょっと不思議なサイケデリック作品という塩梅が好きです。なんだろう、少しだけポストロックっぽい気がしますね。「The Scarecrow」みたいなポップなソングライティングもできるんですか。すごい!

みせざき

 ピンク・フロイドのディスコグラフィの中でも凄くいびつな存在で、大学入りたての頃から疑問符を浮かべながら聴いていた。
 自分はサイケについて全然精通しておらず、これがサイケなのかも分かっていないが、出てくるサウンドが想像を遥かに超えたラインからピョンピョン飛び出してくるようなイメージを感じる。
 ただコードとかメロディーにカッコいい!と思わせる要素は感じられ、特に「Intersteller Overdrive」の不気味な降下していくコードとかが好きです。
 ピンク・フロイドは昔から好きなバンドですが、所謂プログレ期の方が好きなので本稿では特に語らないようにします。

六月

 こんなことを言ってしまっていいのかわからないが、Johnny RottenがこのバンドのバンドTシャツに、「I hate」と書き殴った気持ちがわかるくらいには、Pink Floydのことが好きではない。だがこれはバンドがああいう大仰で眠たくなる作風になる前のサイケデリック・ロックと言われていた時期のアルバムなので、割とわかる(それでも、勘所が掴めるまでかなり時間がかかった類のアルバムの一つなんだけれど)。
 何というか、60年代のグレート・ブリテンの空気がわかるような音かなぁとまず思った。Jefferson Airplaneの時にも似たようなことを書いたが、あっちがアメリカ的な乾いた空気なら、こっちはロンドンの曇ってどんよりとしている空気がパッケージングされている。その空気を基調として、変な音がたくさん詰め込まれてる。どことなくサウンド・コラージュ感も感じて、その音の配置や位置関係に面白さがある作品だと個人的には考えている。
 それにしてもその奇妙さ加減に、この音楽を作った男のその後を思わずにはいられない。あまり精神疾患に罹っている表現者をやれ天才だ鬼才だと褒めそやして弄ぶのはその症状を揶揄うのと同じことで、やるべきではないとは思う。それでもその受け取り方と、狂気性(あまり好きな言葉じゃないから使いたくないが)がなんの衒いもなくそのまま出力されていて、それとして受容する表現が、赦されていた時代の産物、それを"徒花"と卑下するにしては完成度が高すぎるので困る。

和田醉象

 夜通し運転してるとき、手放せなくてなんとなく流し始めてそのまま一晩何周も聞ききってしまった、思い出がある。同乗者も変えてくれればいいのにそのままにしておいたもんだからかなりキツイ思いをした。
 でもってこれはかなりイヤホン向きなアルバムだ。時代っぽく泣き別れみたいなミックスなんだがそれが却って音の不可思議さを高めている。右へ行ったり左へ行ったりと酔っ払ってるみたいだ。ずっと聞いていると何かの儀式に参加させられている気分にもなっていて、内なるなにかが目覚めそうだ。

渡田

 このバンドに対しては聴く前から既に苦手意識があったけど、規則性が分かりにくいフレーズを除けば、結構好きなところもあった。むしろそれぞれの音についてはかなり好み。エコーマシンで増幅した音や暗い声など、ポストパンク、特にゴシックロックに関係のある音も沢山あった。もっと分かりやすくキャッチーで盛り上がる部分があれば絶対好きになれるはずなのに…

次回予告

次回は、Kinks『Something Else by The Kinks』を扱います。

#或る歴史或る耳
#音楽
#アルバムレビュー


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