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 老中阿部正弘は焦燥していた。四隻の艦隊でやってきた、東インド艦隊司令長官であるマシュー・カルブレイス・ペリーが、こちらの指示に従わないのである。

 これまで幕府は、外国船が日本に来ると「長崎に行ってくれ」と指示し、時間を稼ぎ、長崎では、長崎奉行が彼らの開国の要求に対して「祖法に反する」と言って追い返していた。

 ペリーには、この手が通用しないのだ。幕府役人の「長崎に行け」という指示を無視するばかりか、江戸湾に侵入すると勝手に測量を始めた。そればかりか、江戸に向けて数十発の空砲を発射したのだ。完全に恫喝である。

 このペリー艦隊には、全部で70門以上の大砲があったが、当時幕府が江戸湾に備えていた大砲の数はその1/10も無かった。その上、飛距離と命中精度も大きく劣っていた。戦えば必ず負ける。そして、江戸は火の海になるのだった。

 

 

 


歴史は、人間が創るドラマです。特に、幕末はたくさんの英雄が出てきます。そんな時代とその時代の人たちを小説にしたいと思いました。