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 井伊直弼(なおすけ)には、大老として「幕府の権威を取り戻す」という強い決意があった。そして、それこそが、彼に与えられた天命だと信じていた。

 当時幕府は2つの大きな問題を抱えていた。1つは、「第14代将軍を誰にするか」であり、もう1つは、「アメリカと通商条約を結ぶか」である。

 直弼は、独断によりこの2つの大きな問題を解決する。まず、彼が押していた徳川慶福(よしとみ)を第14代将軍にした。そして、日米修好通商条約を天皇の許可なく結んだ。

 この直弼の独断は、大きな反発を生む。反対派は、直弼を詰問するために江戸城を訪れる。

 直弼は、反対に、「彼らが許可なく江戸城に来た」ことを問題にし、彼らを謹慎や隠居に追い込んだ。また、彼の意見に反対している尊王攘夷派の志士達を捕らえて、ある者のは処刑し、あるものは牢獄に入れた。世にいう「安政の大獄」である。

 この直弼の処置は、幕府の権威を回復させる。しかし、世の中に大きな不満を生み、また大きな恨みを買った。



歴史は、人間が創るドラマです。特に、幕末はたくさんの英雄が出てきます。そんな時代とその時代の人たちを小説にしたいと思いました。