【後編】公安スパイが安倍晋三首相をマークした話
承前。
2018年1月31日。
ロシア大使館で「新年会」が開催された。
日本・ロシア協会会長の高村正彦自民党副総裁が出席。
乾杯が行われる。
筆者は、ウォッカをショットグラスでグイと干して、グラスを置いた。一同がビールなどを飲んで、グラスを置いて、拍手が起きるまで「時間」がある。その時間差を筆者は利用し、自席(といっても、立食パーティーだが)から、来賓席へと走る。
革靴がバタバタを「大きな音」をたてないように、誰にもぶつからないように注意しながら走る。目標は、高村正彦副総裁。
「『日本経済新聞』の『私の履歴書』を拝読しました」
「ありがとうございます」
「『副総裁』の役割として『(安倍)総裁の特命事項』という記述がありましたが、(前日本・ロシア協会会長である)鳩山邦夫前会長の急逝にともなう、(高村正彦副総裁の)日本・ロシア協会会長就任は、『特命事項』でしたか」
「ないです」
間(ま)をおいて何かを考えるような副総裁の視線が泳ぐ。
「・・・・・・ないです」
拙著
PDFファイルでp.68に登場させたエピソードだ(ページ番号がご使用の端末で電子書籍版と異なっていると思うが、ご寛恕のほどをお願いしたい)。
第二次安倍晋三政権における対露外交。
前のめりとされていた安倍晋三首相だが、少なくとも、高村正彦副総裁レベルでは、(正体不明の)筆者の質問には、明確な否定をした。ウソかホントか、それはわからない。間違いなくいえるのは、筆者自身が、生の体験として、「第二次安倍晋三政権」に物理的に最も接近した瞬間だということだ。
安倍・プーチン首脳会談などの公式(あるいはそれに付随する非公式)の場は、世界中に発信がなされる。通訳を除いて誰も入れない一対一での首脳会談もたくさんあったが(担当通訳官の職員名も筆者は聞いている)、外務省の直上司(ロシア課長)にも報告できない「特定秘密」なので、さぞかしやりにくかっただろうと、異業種交流会で会費4,500円を割り前勘定してうわさしていたものだ。
それに毎月、大阪府警外事警察のカウンターパートとは会食していたので、「日本の対ロシア外交はどうなるか」という話になれば、自然と「安倍晋三首相」の動向に関心をいだくのは、筆者にとっては当然といえば当然。
意外に思われるかもしれないが、「首相動向」(例)を新聞紙で毎日確認していたわけではない。とあるメディアで読んだのだが、「首相動向」も各紙によって微妙な差があり、日本に駐在する外交官に「A紙の『首相動向』をおすすめしたら、後日、大いに感謝された」という一節を出くわしたことがある。首相がどのような活動や誰とどのくらいの時間(移動時間を含む)に費やしただろうか、ということを分析材料にするには、残念ながら筆者の守備範囲を大いにこえていた。
「安倍晋三首相の『次の首相』は誰になるのだろう」
「ポスト安倍」。
かつてなら「麻垣康三」などの造語がうまれたこともあるが、内閣総理大臣への野心をもっていた有力政治家にとっては、「コン・チク・ショウ」と思いながら、大臣と自民党役職を往復していたのかもしれない。たとえば岸田文雄議員は。
「ポスト安倍」の中に、加藤勝信議員の名前を大阪府警外事警察のカウンターパートに報告したときには、「???」という反応だったが、大阪に帰って書類に書いてくれていたら・・・・・・。
「鬼が笑う」ではなく、上司に怒られるのは必至なので個人の情報としてストックするか、フツーに忘れていたか、メディアで「加藤勝信」の名前が出た時に思い出してもらえるか。
私は、知らない。