ADHD、LSD、知的障害/知的能力障害、反応性アタッチメント障害、神経発達症群/神経発達障害群、選択性緘黙(場面緘黙症) 公認心理師試験過去問解説

注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>

ADHD/ Attention-Deficit Hyperactivity Disorder
女性は男性よりも「不注意優勢型」に診断されることが多い。これはDSM-IV時代からの研究結果で不注意の行動特徴を示すという一致した結果がある。DSM-5の複数診断基準のうち、2つ以上の状況において存在している必要がある。また、いくつかの症状が12歳になる以前から存在している必要がある。
診断には、不注意、多動、衝動性の3タイプ全ての行動特徴を有することは必要でない。いずれかひとつでも特徴があれば診断される。自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)に注意欠陥多動症/注意欠如多動性生害(AD/HD)を併発する場合も多く、尚且つ両方とも神経発達症群/神経発達障害群に属するので診断に併記ができる。

AD/HDの併存障害について

DSM-5において、一般の人よりAD/HD患者に発症率の高い疾病・障害が記述されており、反抗挑発症、素行症、重篤気分調節症、限局性学習症などは顕著である。一部には不安症群、うつ病、間欠爆発症、物質使用障害なども見られるとされる。
併存障害は多岐にわたるので、環境調整も薬物療法もありうる。
AD/HD患者の10〜20%がうつ病を発症する。うつ病や双極性障害(躁鬱病)を気分障害と言い、合併率は20%前後とされている。

原因は不明ながら二次障害の可能性が考えられる。
いい子になりにくいので虐待的な養育が生じる危険性がある。ペアレントトレーニングは重要である。また、社会的困難を経験しやすく自己効力感や自尊心も低下しやすい。DSM-5で反抗挑発症とされる、反抗挑戦性障害の初発症状は未就学時点で現れるのが一般的で50%近くにもなると言われる。多くは児童期にも併存する。

AD/HDは過去の心的外傷が原因とは考えられていないため、過去の心的外傷に注目する精神分析的心理療法は第一選択肢にはならない。

知的障害/知的能力障害

DSM-5において神経発達症の一部
知的障害はDSM-5において神経発達症の一部、「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と記載されている障害。ICD-10においては「軽度〜最重度知的障害(精神遅滞)」と記載されている。次はDSM-5の診断基準
A) 臨床的評価および個別化、標準化された知能検査によって確かめられる、論理的施行、問題解決、計画、抽象的思考、判断、学校での学習、および経験からの学習など、知的機能の欠陥。
B) 個人の自立や社会的責任において発達的および社会分化的な水準を満たすことができなくなるという適応機能の欠如。継続的な支援がなければ、適応上の欠陥は、家庭、学校、職場、及び地域といった多岐にわたる環境において、コミュニケーション、社会参加、および自立した生活といった複数の日常生活活動における機能を限定する。
C) 知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。

DSM-5では「概念的、社会的、及び実用的な領域における知的機能と適応機能両面の欠陥を含む障害」とされている。
DSM-IV-TRや、ICD-10では重症度がIQの値のみで決められていた。DSM-5では、概念的領域、社会的領域、実用的領域全ての知的機能・適応機能の検査、および臨床的評価によって重症度が特定される。

DSM-5における有病率は1%だが年齢により変動するとされている。
DSM-5では数値による分類は廃止されている。一般的にIQ70が一つの基準となり、平均値より2標準偏差以上低いことが通常とされる。

知的能力障害は基本、生得的に発症するか、発達期に起きた外傷や感染症でも発症する。
DSM-5では神経発達症群に記載され、「発達期に発症」と記述されている。年齢は限定されておらず、「幼児期まで」ではない。

療育手帳(に知的障害のある人が取得できる障害者手帳)は昭和48年に事務次官通知としてガイドラインが示されただけで、国の法律としては規程されていない。実際の実施要項は都道府県によって決められている。他の手帳と同じく、成人になってから療育手帳の交付を受けることもある。


限局性学習症SLD

Specific Learning Disability
読む、計算するといった学習上の特定の分野において、1以上の著しい困難さがある。
全般的な知的発達の遅れはないことが多い。

背景として、中枢神経系の機能障害が推定されるが、観光的な要因によるものではないと考えられている。
環境的な要因が影響しているとは考えられない。

視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの他の障害が直接の原因となって生じた学習上の困難は限局性学習症とは異なる。

DSM-5において、「神経発達症群/神経発達障害群」に含まれる。「通常、幼児期・小児期または青年期に初めて診断される障害」はDSM-IVの分類であり、ここに学習障害は含まれていた。


反応性アタッチメント障害

認知面の遅れと言語の遅れが併発する。
乳幼児期のマルトリートメント(良くない療育,虐待など)と関係が深い。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉と症状が一部類似する。DSM-5でも鑑別診断についての記述がある。
常に自分で自分を守る態勢をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。PTSD関連障害群であり、「過覚醒、過度の警戒心」「過度の驚嘆反応」が生じやすい。
養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効であるとされる。しかし、心理療法と言えるのか微妙とされることがあったり。また、有効性にも議論がある。


神経発達症群/神経発達障害群

知的障害のように、発達の里程標への到達の遅れだけでなく、サバン症候群のように限定的だが極めて特異な優れた特性を持つものも含まれ、過剰な兆候も含まれる。
典型的には2歳頃までの発達早期に明らかとなる。DSM-5に「発達期に発症」「典型的には発達早期」と言った記述がある。
神経発達症群の中に、知的能力障害群というサブカテゴリが設けられており、知的障害を伴うこのある発達障害のグループである。
DSM-IVまでは発達障害の併存を積極的に認めなかったが、DSM-5では併存症として神経発達症群の疾患が相互に多く記述されている。異なる神経発達症が併発すると言える。現実にそのような臨床像も多い。


選択性緘黙(場面緘黙症)

DSM-5では不安症群、不安障害群に分類。
言語能力は正常であるのに、選択された特定の場面(学校など)や人に対して、話すことができないという小児期特有の状態。家庭では良く話すことが多く、親が気付かない場合や、気付いても成長とともに変わるだろうと考えることが多い。
DSM-IVまでは発達障害の一種として分類されていたが、DSM-5では不安症群、不安障害群に分類されている。18歳未満の診断という条件がなくなっている。


2018年第一回
問32 注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>の診断や行動特徴として、不適切なものを1つ選べ。
① 女性は男性よりも主に不注意の行動特徴を示す傾向がある。
② 診断には、複数の状況で症状が存在することが必要である。
③ 診断には、いくつかの症状が12歳になる以前から存在している必要がある。
④ 診断には、不注意、多動及び衝動性の3タイプの行動特徴を有することが必要である。
⑤ DSM-5では、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害<ASD>の 診断に併記することができる。

正解は④


2018年第一回
問132 注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>の併存障害について、正しいものを2つ選べ。
① 環境調整と薬物療法とを考慮する。
② 成人期にしばしばうつ病を併存する。
③ 養育環境は併存障害の発症に関係しない。
④ 自尊感情の高低は併存障害の発症に関係しない。
⑤ 児童期に反抗挑戦性障害を併存することは少ない。

正解は①と②


注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>の二次障害について、正しいものを1つ選べ。
① 素行障害が出現しやすい。
② 気分障害の合併率は5%以下である。
③ ペアレント・トレーニングは効果がない。
④ 精神分析的心理療法は治療の第一選択である。
⑤ 養育環境は二次障害の発症や程度に影響しない。

正解は①


KALS模試 正答率66.9 赤本2021p204
限局性学習症<SLD>について、正しいものを2つ選べ。
① DSM-5において、「通常、幼児期・小児期または青年期に初めて診断される障害」に含まれている。
② 全般的な知的発達の遅れはないことが多い。
③ 読む、計算するといった学習上の特定の分野において、1以上の著しい困難さがある。
④ 背景として、中枢神経系の機能障害が推定されており、環境的な要因も影響しているとされる。
⑤ 視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの他の障害が直接の原因となって生じた学習上の困難であっても、限局性学習症と定義している。

正解は②と③


2018年第一回追試
問52  DSM-5の神経発達症群/神経発達障害群について、正しいものを2つ選べ。
① 選択性緘黙が含まれる。
② 典型的には発達早期に明らかとなる。
③ 知的障害を伴わない発達障害のグループである。
④ 異なる神経発達症が併発することはほとんどない。
⑤ 発達の里程標への到達の遅れだけでなく、過剰な兆候も含まれる。

正解は②と⑤


2018年第一回
問97 知的障害について、正しいものを1つ選べ。
① 成人期に発症する場合もある。
② 療育手帳は法律に規定されていない。
③ 療育手帳は18歳未満に対して発行される。
④ DSM-5では重症度を知能指数<IQ>で定めている。
⑤ 診断する際に生活全般への適応行動を評価する必要はない。


2018年第一回追加
問88 DSM-5に記載されている知的能力障害について,正しいものを1つ選べ。
① 幼少期までの間に発症する。
② 有病率は年齢によって変動しない。
③ IQが平均値より1標準偏差以上低い。
④ 知的機能と適応機能に問題がみられる。
⑤ 重症度は主にIQの値によって決められる。

正解は④

2018年第一回
問110  反応性アタッチメント障害について、誤っているものを1つ選べ。
① 認知と言語の発達は正常である。
② 乳幼児期のマルトリートメントと関係が深い。
③ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉と症状が一部類似する。
④ 常に自分で自分を守る態勢をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。
⑤ 養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効である。

正解は①

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