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半袖しか着ない子

「うちの息子一年中半袖しか着てくれないの。」

近所の公園でお母さんがママ友と話している。

小学6年間春夏秋冬、半袖半ズボンで過ごした同級生が卒業式で、
”よく頑張ったで賞” 的な
謎の表彰をされていたことに違和感を感じていた小学生時代の記憶を蘇らせていると、

「でも、最近は少しずつだけど着てくれるようになったの。」

つづけてお母さんはそんな子供の成長を嬉しそうに話し始めた。

子供の成長を真っ直ぐ話すお母さんの嬉しそうな表情を見てなぜか僕も幸せな気持ちになる。

「ね〜カズくーん!」

お母さんは遊びから帰ってきた息子に優しく話しかけた。

僕はカズくんに目を向けると、
思わず頭の中で冷静さを失い、取り乱した。

カズくん..七分袖だ..
カズくんは七分袖だ。
もう一度言う、カズくんは、七分袖なのである。

僕が悪い。僕が悪いのだが勝手に、
半袖の日もあるが、
少しずつ長袖を着てくれる日も増えた。
という成長の仕方だと解釈してしまっていた。

カズくんの成長は
”長袖を着る回数が増えた”
という頻度が成長したのではなく、
“半袖から七分袖になった”
という物理的な長さ、
半袖から七分袖までの”距離”の成長だったのだ。

僕が浅かった。カズくんもお母さんも何も悪くない。僕が浅かっただけだ。

僕なんかが長袖を着てる場合じゃない。
長袖を着る資格などない。
七分袖からやり直しだ。









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