消費増税と実質消費の関係について

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出典:「羽鳥慎一モーニングショー」2019年7月12日放送。
https://trend-at-tv.com/word/28095

この画像は京都大学の藤井聡先生が作られた図です。1997年と2014年に消費税増税が行われ、その時には実質消費の落ち込みだけでなく、「実質消費の伸び率」の低下が起こっていた、ということを示しています。「実質消費の伸び率」の低下は当然のことながら、GDPの伸び率、すなわち経済成長率の低下に直結します。

これを見ればまあ、消費税増税が「実質消費の伸び率」を低下させたことは火を見るより明らか、とは思うわけなのですが、頑張って消費税増税の影響を否定しようとする人もいるわけです。1997年はアジア通貨危機があった、2014年はアベノミクスによる影響だ、といろいろ他の要因を並び立てるわけです。

そりゃまあ、他の要因が全く影響していないとは言わないですが、たまたま偶然、「実質消費の伸び率」の低下を招く事態が、消費税増税と同じタイミングで起こり、それ以外のタイミングでは一切起こっていない。そんなことがあり得るのか、ということです。

この25年間で、消費税増税は2回行われました。そして、「実質消費の伸び率」を低下させる何らかの出来事(仮にXとします)もこの25年間で2回起こっています。仮に、このXと消費税増税が全く無関係(独立事象)とするなら、Xがたまたま消費税増税と同じ年度に発生する確率はどの程度あるのか、ということです。

Xを、発生確率8%の確率事象と考えます。25年間のうち、消費増税を行った2年度にだけたまたま発生する確率は、0.08^2*0.92^23=0.00094 つまり、0.094%です。これは「実質消費の伸び率」の低下が消費税増税と全く無関係に起こった確率です。統計的仮説検定として考えれば、0.1%水準でも有意となり帰無仮説「消費税増税と実質消費の伸び率の低下は無関係」は棄却されます。さすがにこの結果を見て、消費税増税と「実質消費の伸び率」の低下は無関係である!と主張するのは無理があるといえるでしょう。

消費増税による個人消費への影響

出典:みずほ総研「消費増税で消費は再び低迷するか:鍵を握るのは家計の体感物価と節約志向」
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp180907.pdf

なお、消費税増税が「実質消費の伸び率」を低下させることについては、上図のようにみずほ総研のレポートでは節約志向効果による消費トレンドの低下として描かれています。しかし、私はこの変化は単に節約志向によるものではなく、もっと構造的な変化であると考えます。

すなわち、消費が継続的に失われることによる企業の業績の悪化により雇用が失われることによる所得の低下、といったスパイラル的な効果によるものではないかと。そうでなくてはここまで明確で継続的な傾向としては表れないはずです。ここまで明確で継続的な傾向として現れるということは、「消費税率」と「実質消費の伸び率」の関係を何らかの形でモデル化することも可能だろうと思います。

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