研究猫とも

政策研究猫。趣味は政策立案、特技は車輪の再発明です。猫なので偉そうなだけで基本的に役に立ちません。 Youtube→https://www.youtube.com/c/reiwanekotomo

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マガジン

  • 研究猫的経済論~MMT現代貨幣理論を中心に

  • サー・ジェームズ・ステュアート研究

    「政策科学の父」(と呼びたい)であり、アダム・スミスよりも9年早く経済を体系的に論じた『経済学原理』の著者である、サー・ジェームズ・ステュアートについての翻訳・論考です。

  • 研究猫的れいわ新選組論

最近の記事

翻訳:第1部「貨幣原理の導出と英国硬貨への適用」(サー・ジェームズ・ステュアート『経済学原理』第3編「貨幣と硬貨」)

序章この研究のように、ほとんどすべての段階で新たな関係へと枝分かれし、それがさまざまな結果の連鎖へとつながっていくような研究においては、あらゆる手を使って全体を結びつけるようにすることが有用である。 そのため、新しいテーマの始めに導入の章が必要になると思われる。 読者は、前編の最後の章(つまり、富と流通との均衡の揺らぎを扱った章)が、貨幣というテーマに導入するために書かれたものであることに気付いただろう。 貨幣に関する一部の原則を新たな論説として導入するよりも、交易の原

    • 政府債務残高対GDP比の変動要因

      はじめに「日本の政府債務残高対GDP比が増加したのは名目GDPが増えなかったからではなく、政府債務が増えたから」という主張を見かけました。根拠はこのグラフのようです。 確かに、他の国に比べて日本は「政府債務変動要因」が突出して高くなっています。一方、「名目GDP成長要因」は小さくなっているため、「日本の政府債務残高対GDP比が増加したのは名目GDPが増えなかったからではなく、政府債務が増えたから」という主張を裏付けているように見えます。 ここで2つの疑問が浮かびます。

      • れいわ新選組の政策は実現可能か?

        注意:この記事は当然ながら、れいわ新選組の公式見解ではありません。記事の内容については全て「研究猫とも」個人の見解です。 いよいよ2022年参議院選挙の投票日(2022年7月10日)が迫ってきました。各党、さまざまな公約を掲げていますが、とりわけユニークな政策の政党といえば、山本太郎(東京選挙区)率いるれいわ新選組が挙げられるでしょう。 れいわ新選組は、「参議院選挙 2022 緊急政策」において、次のような政策を掲げています。 これだけの大胆な政策が果たして実現可能なの

        • なぜ政府支出伸び率と名目成長率の間には強い相関があるのか?

          政府支出伸び率と名目成長率の間にある強い相関の謎について研究してみました。 1. 論争を呼ぶグラフ出発点は、こちらのグラフを巡る論争です。このグラフは、1997年から2017年にかけての名目政府支出伸び率と名目GDP成長率を年平均で示したものです。両者の間には決定係数0.8906という強い相関があり、また、$${x}$$の係数は0.9265となっており、「名目支出伸び率≒名目GDP成長率」という関係が成り立っています。 この相関関係はどのようにして生じているのでしょうか?

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        • 研究猫的経済論~MMT現代貨幣理論を中心に
          11本
        • サー・ジェームズ・ステュアート研究
          2本
        • 研究猫的れいわ新選組論
          5本

        記事

          翻訳:ステュアートの租税貨幣論(サー・ジェームズ・ステュアート『経済学原理』第4編第4部第9章「財政破綻」より)

          もし税をなくしたとしたら、税に由来する大きな金額が完全に消えてしまう。想像とは違って、今税を支払っている人たちにお金が均等に分配されることはなく、税を払わなくなった金額に比例して所得が増えることもない。その理由は簡単で、納税に用いられるお金は人々に必要とされるから、流通するのである。税をなくしたとしたら、人々は以前よりお金を手に入れる機会が少なくなり、流通量も少なくなってしまう。税の支払いが必要だからこそ、税を支払うためのお金が創造される。そしてお金の創造の方法を考え出さなけ

          翻訳:ステュアートの租税貨幣論(サー・ジェームズ・ステュアート『経済学原理』第4編第4部第9章「財政破綻」より)

          国の借金が大変!? 実は景気が悪いだけだった

          日本は到底返せないほどの借金を抱えていて、このままでは大変なことになってしまう! という認識の人は多いと思います。 でも、もし「国の借金が大変」というのは、「実は景気が悪いだけ」だとしたら? 1. 財務省の説明財務省は『これからの日本のために財政を考える』という資料で、国の借金(政府債務残高)について次のように説明しています。 そして、GDPに対する借金の大きさ(政府債務残高対GDP比)を他の国と比較するグラフを掲載しています。 2020年度の日本の政府債務残高は、G

          国の借金が大変!? 実は景気が悪いだけだった

          国民全員に1億円配るとどうなるのか?

          こんなツイートが話題になっていました。では実際に1億円配るとどうなるのか、シミュレーションしてみようと思います。 1. モデルシミュレーションには、こちらのモデルを使います。 このモデルは、政府支出伸び率と名目GDP成長率との間にある強い相関の謎を解明するために作成したものです。詳しくはリンク先のスライドをご覧ください。(※まだまだ発展途上のモデルのため、今回のシミュレーションはかなり大ざっぱなものです。) 2. 1億円給付シミュレーション最初の政府債務残高を1000兆

          国民全員に1億円配るとどうなるのか?

          又貸し銀行と万年筆銀行

          太郎さんは資金が必要になったので、銀行で融資を受けることにしました。近所に「又貸し銀行」と「万年筆銀行」という2つの銀行があったので、まずは又貸し銀行に入ってみることにしました。 又貸し銀行にて太「すみません、ちょっと資金が100万円ほど必要なのですが、融資してもらえないでしょうか? 50万円は現金で、50万円は預金で受けとりたいのですが。」 又「大変申し訳ございません。ただいま当行には50万円しか現金がございません。なので100万円のご融資はできかねます。」 太「ええ

          又貸し銀行と万年筆銀行

          又貸し説の問題を示す例

          例1:一つの銀行内で完結する場合X銀行にAとBが口座を持っている。準備率を1%とする。Bが1万円をX銀行に預金する。X銀行がAに100万円の融資を行い、AはBに100万円を振り込む。 又貸し説でこの状況を説明するとどうなるか。 1回目の融資:X銀行が貸し出しに回せるお金は、準備の100円を除いた9900円。X銀行はAに9900円を融資し、AはBに同額を振り込む。この時点でX銀行の負債としての預金は1万9900円。 2回目の融資:X銀行が貸し出しに回せるお金は、準備の19

          又貸し説の問題を示す例

          米山氏のMMT批判の問題点

          こちらの記事の3つの問題点を指摘します。 米山氏の批判対象米山隆一氏は、中野剛志氏の記事を元に、MMT批判を行っています。最初に、中野氏の主張6点を取り上げ、「このうち1~5は標準的経済学でも同じ結論になります」と述べています。 1.銀行の預金が貸し出されるのではなく、預金は貸し出しによって生まれる 2.通貨発行権を持つ国は財政赤字では破綻しない 3.財政赤字は民間の貯蓄を増やす 4.財政赤字によって通貨供給量が増える 5.財政赤字は金利上昇をもたらさない 6.財政赤字が

          米山氏のMMT批判の問題点

          山本太郎戎橋演説は許可が必要だったのか?

          ポイント①大阪府条例とされているものは「条例」ではなく「規則」 ②「一般交通に著しい影響を及ぼすような」ものでなければ許可は必要ない ③表現の自由は最大限の尊重を必要とする 経緯2020年10月12日、大阪ミナミ(戎橋)でれいわ新選組代表山本太郎さんが演説中、警察から演説の中止を求められたという問題です。詳しい経緯はこちらの記事を参照してください。 大阪府条例で許可が必要?この問題を巡って、このような画像が「大阪府条例では許可が必要。許可を取らなかったのが悪い」として出回

          山本太郎戎橋演説は許可が必要だったのか?

          国債発行のプロセスをごく簡単に説明してみる

          国債というのは、表面的には財源不足を補う手段です。なので「借金」と言われるわけです。しかし、実は政府の支出に財源が必要だというのは、あえてそういうルールを作って運用しているだけであって、本来政府はお金を自ら発行して支出することもできるんです。実際、硬貨に限っては政府は自ら発行しています。 そして、財源が必要というルールではあるものの、実は国債発行の原資を作り出しているのは日銀によるお金の発行です。だいたいこんな順序になります。 ※ここでいう「お金」はベースマネー(現金+日

          国債発行のプロセスをごく簡単に説明してみる

          100人の怠け者と100人の働き者

          100人の怠け者が住む国100人の怠け者が住む国がありました。国民は怠け者ですが、みな100万円のお金を持っていました。政府は橋をかけるために、税として1人100万円ずつ徴収しました。政府は1億円の予算で橋を架けようとしましたが、誰も働かないので橋をかけることはできませんでした。 政府は税収の範囲でしか支出できない/税収の範囲であれば支出できると考えている人は多いでしょう。しかし、どれだけ税収があっても、その国に生産力がなければ政府は支出することができません。怠け者しかいな

          100人の怠け者と100人の働き者

          消費税輸出戻し税のパラドックス

          この記事はあくまでも「あり得ない想定」を置いた上での「頭の体操」です。実際の消費税は常に公平公正であり、輸出戻し税による不当な利益なんてあるはずがない、とみなさんおっしゃっているのできっとそうに違いありません。ですよね? ①国内も輸出先も消費税0%まず、初期状態としてこのような状態を置きます。企業Aが製造した原料を企業Bが加工し、企業Cが国内向けと海外向けに販売しています。消費税はどちらの国も0%です。何という平和な世界。 (国内)    A→B→C 価格 100 150

          消費税輸出戻し税のパラドックス

          社会変革のパラドックス

          はじめに保守とリベラルの対立というのは政治的価値観における基本的な対立図式である。この保守とリベラルの対立には面白いパラドックス(逆説:一見矛盾するような状態)が隠されているので、解説してみる。 なお、これはあくまでも論理を使ったお遊びであり、現実の保守とリベラルの関係を正確に表しているとは限らない。とはいえ、現実を理解する上での新たな視点を提供してくれるものである。 定義ここでは一般的な保守・リベラルの定義にかかわらず、次のように定義する。 保守:極力社会変革を起こさ

          社会変革のパラドックス

          政党支持に関するアンケート分析結果

          概要・調査期間:2019/12/11~2019/12/18 ・回答数 :1,406 インターネット調査で行いました。実際の年齢構成に合わせて補正済みです。 1. 政党支持通常の世論調査と違って、全ての主要政党について、支持・不支持の程度を聞いています。また、認知度も同時に分かるように設計しました。 ポイント ・自民党は支持率がダントツとはいえ、「支持」はそこまで多くない→受け皿となる政党があれば、自民党支持を覆すことは案外やりやすいのかもしれない ・立憲民主党も、「支持

          政党支持に関するアンケート分析結果