原点が消える

freemlがサービスを終了する。

私が高校生のときは、freemlというメーリングリスト(メーリス)を介した情報共有がスタンダードだった。現在LINEにやれ大学のサークルやら職場の同期やら家族やらと、人生の様々な人間関係を異なる枠で切り取ったグループLINEが存在するように、そして時にはクラスLINEと別にごく一部の仲良い人たちだけを集めたグループLINEがあるように、当時は様々に階層化され、時には重複するようなメーリスが存在した。

グループLINEにグループ名がつけられるように、メーリスにも当然グループ名がつけられる。これまでにいくつものグループ名が時には端的に、時にはその場のノリで適当に決められたと思う。
しかし、自分たちのことを呼ぶときにさも当たり前のようにグループ名で呼び合っていたのは、後にも先にも、高校のグループだけなのであった。

高校2年のクラス替えで、彼女たちと出会った。基本的に皆クラスの中心からは遠ざかったようなところにいる人たちだったけど、次第と似たもの同士固まり、仲良くなっていった。メーリスを作ったのは何故だか思い出せないけど、おそらく単に流行りに乗っただけだと思う。
メーリスを作成した彼女は、何故かグループ名をとある有名作品の男性キャラクターの苗字に別の男性キャラクターの名前を合わせたものにした。その友人は腐女子ではなかったけど、内輪でよくその作品をネタにして遊んでたのと、下ネタとしてBLを楽しんでいるところはあったので、あくまで「ねぇ何これwww」という反応を期待してそのようなグループ名にしたのだと思う。
それから、私たちはメーリスで色んなやりとりをした。真面目な会話や悩み相談なんてものはなくて、基本的にはしょうもないネタを誰かが書いてはそれに乗って、という感じでメールを送り合った。気づけば自分たちのことを「○○」と、グループ名に入れられた男性の下の名前で呼び合うようになった。

いつからか次第に「○○」の人たちもガラケーからスマホに移行し、LINEが誕生してからは少しずつLINEを始める人が増えていった。そして、メーリスと同じ名前のライングループも誕生し、メーリスの使用頻度は下がっていった。
一方で、今までメーリスでやっていたような馬鹿話は、LINEではなくツイッターの高校用鍵付きアカウントでするようになった。全員がアカウントを持っていたわけではないけど、大学2年生から3年生くらいにかけてはくだらないことばっかツイートして、大学に入ってから減りつつあったやりとりや活気を取り戻してきた。
でも、環境が変わったり(某友人が厄介化したり)する中で、ツイッターもだいぶ閑散とし、今では誰かの誕生日を祝うときや久しぶりに会う予定を立てるときにグループLINEを使うくらいになった。

高校生が大学生に、一部の人は大学院生に、そして社会人になり、ガラケーはスマホになり、メーリスはツイッターやLINEになっていった。会う予定は今でも立てるし全員に声をかけるけれど、今はもはや全員集まることはとても難しく、高校を卒業してからはある友人の結婚式でしか全員集まれたことはない。しかし、それでも自分たちを「○○」という名前の共同体だと思えるのは、元はといえばメーリスでそのような名前を付けて、自分たちをその名前で呼び合うようになったからだ。
だから、もうfreemlを使うことはほとんどないとはいえ、自分たちを「○○」たらしめたfreemlがなくなってしまうと聞いて切ない気分になった。って高校垢でつぶやいて誰も反応してくれなかったけど。

#日記 #エッセイ #メーリングリスト #ガラケー #スマホ #高校時代

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