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見送る夏①

 今年の夏から秋にかけて大切な人をニ人見送った。そのうちの一人は伯父だった。
 伯父と伯母の間には子どもがなく、小さな頃からとてもかわいがってくれた。お酒とおいしいものが大好きな伯父は、私の成人を誰より心待ちにしており、会う度に「あと◯年」とカウントダウンしていた。10年以上前だったので、あまりに気が早くていつも笑っていた。

 実際に成人してからは、「おいしいものを教えてやる」と言われ、何度か一緒に飲みに行った。伯父の連れて行ってくれたお店はどこも本当においしかったし、大人の世界を垣間見るようで楽しかった。毎年お正月には親族で集まって宴会をしており、いつもお互いに楽しみにしていた。結婚してからは夫も一緒に行くようになり、夫のこともかわいがってくれた。コロナ禍があり、ここ数年はぱったりとそれもなくなっていた。

伯父が行きつけのバーでキープしていた
ジャックダニエル。

 夏、伯父がもう危ないと知らせがあった。妹とお見舞いに行ったら、ひどく痩せた伯父がベッドに横になっていた。伯父は私と妹の顔を見るなり、
「お前さんたちが来てくれて一番嬉しいよ。」
「マスクとって、こっち来て、もっと顔見せろ。」
と言ってくれた。マスクとっていいのか?と戸惑いつつも言う通りにして、伯父と写真を撮った。伯父は
「〇〇(私の名前)さんは仕事やめるんだって?かわいそうになぁ。」
と言うので、
「やめるけど、もしかしたらまたやるかもしれないよ。師匠から後任になってほしいって言われてるし。」
と私は慌てて付け加えた。(嘘ではない)私は大丈夫だと伝えたかった。痩せ細ってはいたけど、いつもの伯父がそこには居た。

 その2日後、再びお見舞いに行った。伯父はずっと眠っていた。そして私たちが帰ったその夜、息を引き取った。実感が湧かなかった。一昨日まで話していて、私の心配をしていたのに。

伯父は祖母が揚げる天ぷらをいつも褒めていた。
祖母も喜んで揚げていた。

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