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はじめての出張#2(東京駅にて)
「トーキョー、トーキョー」
東京駅にはあっけなく、そして早く着いた。
電車のアナウンスを聞いて、僕の小さく小さくなった心臓が踊り出す。
これから、出張初日にして今回の出張における最大の難所、
「新幹線への乗り換え」が始まる。
新幹線への乗り換えを1人でするのは今回が人生で初めて。
前回は中学校3年生。修学旅行ぶりの新幹線である。
旅行ならまだしも今回は「出張」。
他の人に新幹線を予約してもらっていて、お金も支払い済みだからこそ、絶対に乗り換えを間違えるわけにはいかない。
だからこそ、早朝の新幹線にも関わらず、更には朝が苦手な自分が早起きをしてきたんだ。駅に着いたのは、新幹線発着時間の40分前だった。
早いと思うかい?僕を侮っちゃいけないよ。
「さてさて」と、まるで指をポキポキ鳴らすかような振る舞いで、余裕を周囲に見せつけるかのごとく、電車を降りる。
流石に僕もバカじゃない。徹底的にリサーチはしてきた。
だから、乗り換えのイメージは完璧にある。
写真付きで乗り換えを紹介してくれているブログを読んだからね。
まずは、「あの」下り口を探そう。
ブログには「このエスカレーターで下に降ると新幹線への乗り換えが近い」と書かれていて、「その」エスカレーターが写真で紹介されていたのだ。
しかし、「その」エスカレーター、ないぞ。
・・・
背中がヒヤリとする。
もしかして、あのブログの写真は改修前のものだったのかしら。
というか、改修したの?
早々に出鼻を挫かれる展開。
こういうことを人は「案の定」というのかもしれない。
ちなみに僕は、こういうときに負け顔ができないタイプ。
「まぁ、どこの下り口でも行けっし」くらいの雰囲気を振りまきながら(誰も見ていないのに)、僕は見たこともないエスカレーターに乗り込んだ。
エスカレーターは長いトンネルのようだった。暗くて、長かった。
・・・
それにしてもエスカレーターは長かった。
こんなにも長いと、さっきまであった緊張感、みたいなものが良い意味で弱まってくる。
降りている最中、壁に貼ってあった駆け込み乗車の注意ポスターが面白かった。
だって、「電車を遅らせると、みんなに変な目で見られるぞ」みたいなことが書いてあるんですよ?この注意の仕方がなんか日本らしいなぁと。
というか、まだ言っても40分あるじゃないか。
サッカーの前半ほぼまるまるじゃないか。
そう考えたら、エスカレーターを降りたところからキックオフとして、じわりじわりと攻めてやろうじゃないか。
そんな心持ちになることができた。気持ちも少し楽になった。
覚悟を改めて持ち直し、
エレベーターを降りた僕はグッと、視線を上げた。
・・・
東海道新幹線はこちら
・・・
ドーンと、目の前に、巨大看板が現れた。
どう首の角度を変えても視界に入るほどのデカさ。
そして看板には、矢印がビョーンと伸びていた。
それからというもの、東京駅は僕に悩ませる隙を一才与えなかった。
まるで数メートルおきくらいの電柱のように案内表示が立てられていた。
2分後には僕は、新幹線の改札の目の前に立っていた。
こういうときに限って、物事は実にイージーに進むのである。
東京駅のホスピタリティたるや。
「発着時間まで、どう時間を潰せば良いんだよ…」。
続きはまた今度。
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