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AroAce調査発表会に行ったら勇気づけられた話

AroAce調査発表会に行ってきました

 12月10日、#AroAce調査発表会 に行ってきました。みなさん感想報告している&資料もネット上にアップされているところ恐縮ですが、こんな感じだったよ&自分はこういうところが印象に残ったよというのをここに記しておきたいと思います。

早稲田大学の早稲田キャンパス3号館の5Fの教室にて実施。廊下から見える景色は壮観。建物はクラシカルでなんだか素敵な様式

1.どんな雰囲気?

 到着が2分前だったので、開場後~スタートまでの雰囲気はわからず。ただ、横一列5人がけの席に隣り合って座っている人(2人以上のグループ)が2~3割、残りは1人ずつとソロ参加者が多めでした(れいすいきもそのひとり)。5人がけの席が横に3つならび、縦に23列ほどあるので、ざっくり345人くらい入る大教室でした。
 その教室にお隣になることなく、みなさんが1人分ずつくらいの席が空けて座っていて、全体4割ほどが入っているイメージでした(実際の人数は165名とのこと)。
 ではどんな人が来ているか、教室の左後方からなんとなく眺めていると、7~8割は後ろのシルエットから「女性」とわかる感じで、女性のほうが多いのかなーという印象です。発表中にあった「AroAceの男女比で見ると、女性が9割と多い」(概略)ということをこの会場でも裏付けているのかな、なんてこの文章を書きながらおもったりしました。
 ただ、ここに参加した人がすべて当事者というわけではありません。パソコンを持って、テーマとして興味を持って参加したという風貌の学生さんもいました。外国籍らしき方もいれば、白髪交じりの男性もいたりするし、メッシュに染めているストリート系の方もいれば、スーツを着ている人…とさまざま、ステレオタイプに当てはめるつもりはもともとありませんでしたが、本当にいろんな人が参加しているなーなんて眺めていました。と、見ていると、1人カメラを持った人が。そうそう、メディアの記者さんも1人参加していて、前方の席の方は撮影時後ろ姿が映り込むという説明もあったんです。身バレしたくない人も多いでしょうから、このあたり事前こ説明があったのはありがたい配慮ですね。
 配慮といえば、同じフロアにだれでもトイレと呼ばれるジェンダーフリーのトイレがあるよと案内されていたり、性的なテーマの時など何かあったら自由に出入りしてくださいとアナウンスがあったりもしました。
 早稲田大学もすべての建物、すべての階にジェンダーフリーのトイレがあるわけではないと思うので、そのあたりはこのイベントにあわせて準備してくださったのかな、と、主催の早稲田大学GSセンターの気配りを感じずにはいられませんでした。

2.印象に残った調査結果

 As loop さんの調査概要報告を、団体の自己紹介、「標本の構成」について(どういう人が対象になっていたか)、調査概要について、まとめという流れでお話がありました。
 ここにその内容があるので、ぜひ見てみてください。
 いろいろ気になる内容ではあったんですが、個人的にはここ気になったよ、ってところを3つピックアップして取り上げさせてもらいます。

2-a.ロマンティックはみんな恋愛が“したい”のか?

 代表の三宅大二郎さんの話の中で、ロマンティックの恋愛的志向について、「たしかに」と思える話がありました。
「付き合いたい」と思うことはあるか?というアンケートをする前、三宅さんはロマンティックだから「付き合いたい」が100%かな?と思っていたそうです。なんとなく自分もそう思っていましたが、ロマンティックの恋愛的志向を自認の方の中で、付き合いたいという気持ちがあると思うことが「あまりない」と「ない」方は、あわせて25.1%。あれ意外と多い? そしてこれは、特殊な数値ではなく、調査に関わった平森大規さん(専門は計量社会学)の指摘によると、出生動向基本調査の「独身者調査」(セクシュアリティを限定していない調査)でも3人に1人が「異性との交際は望んでいない」という結果があり、(同性は?など留意すべき点はありますが)ロマンティックの方に広く2~3割程度は「交際を望まない」層がいるということがわかります。

 よくよく考えてみると「恋愛はしたい」という人でも「今は自分の時間が大切」とか「今はそんなに思わない」とか考えたりすることは当然あるはずです(ロマ/アセクだと性行為が嫌だから…とかもあると思います…)。

 どうしてもAroAce側である(と思っている)身からすると、アロマ/ロマみたいな分け方で、背理法的な考え方をして、恋愛が好きなんだから付き合いたい人…?みたいに見てしまいがちですが、そこにもスペクトラムがあるわけです。AroAceの調査ではありますが、改めてロマンティックという恋愛的志向にも、人それぞれのグラデーションがあるんだなと気付かされました。

2-b.性欲の有無論争

「性欲」というテーマも発表会では報告がありました。
この界隈は性嫌悪のある方も多いですし、性欲があるだけで「自分はアセクシュアルではないんじゃないか」、「アセクシュアルだから性欲を持ってはいけないのではないか」とか頭によぎった人って絶対いると思うんです。ただこの調査結果ではアセクシュアルという性的指向を自認している方の69.6%が、性欲があると「思う」「やや思う」と回答しました。
 三宅さんの説明によると、英語圏では証明されていた「性衝動(=英:sex drive,libido)とアセクシュアル自認は矛盾しない」がこの結果からも改めて明らかになったそうです。
 改めて言いますが、アセクシュアルというのは「こういう人」というモデルはありません。あくまで志向、ひとつのラベルなので、いろいろなタイプがいるよね、ということがこの「性欲」という項目の調査を通しても分かった気がします。

 この結果によってエンパワーメント、勇気づけられる人がいると思います。というのも、日常生活で、性欲について聞かれることがある人もいるでしょう。仮に性欲があると思っている人が正直に伝えると決まって返ってくるのは「じゃあ(他人との)性行為も好きだ」という反応であったり、「性的なことが好きなんじゃないか」というものなのかなと想像します。その言っていることへの対応や決めつけがひどいというのは、一旦置いておいて、まずそう言われたとしても、「あなたがアセクシュアルである(と思っている)」ことは揺らぐ必要が一切ないということです。その裏付けとなるデータをこの概要報告は伝えてくれています。
 なお、質問コーナーで、今徳はる香さんが、

 性欲/性的な意味で他の人を魅力的に感じる/他の人と性行為をしたい、する 

 というのは何が違うかという説明をしていました。
 今徳さんは、アセクシュアルの説明でこの手の質問はあるらしく、食欲と食べ物の関係によく例えているそうです。
 つまり、

 お腹が空くか/美味しそうと感じるか/実際食べたい、食べる

 と言う形に置き換えられると。なるほど、そう考えると、何かモヤモヤしていたものもスッキリする人がいるかもしれません。

2-c.生きる中で不安に思うことトップ3は…?(複数回答)

1位.周囲に自分のあり方が理解されないこと(53.0%)
2位.恋人/パートナーを持たない生き方をすること(42.2%)
3位.病気やケガをしたときに助けてくれる人がいないこと(34.7%)

 発表される上記のAroAceの不安トップ3の結果を見て、「やっぱり」というのが正直な感想でした。twitterを見ていると、上記3つについて悩んだり、苦しんだり、嘆いたりしている人が多いと思います。かくいう自分もそのひとり。twitter上では定量化されていない「悩み」が数値として出てきたなという印象でした。

3.発表会を聞いて感じたこと

 これは発表会を聞いたからこそわかったことなのですが、As loopの方たちがどのようなことを考えて、設問を作ったかがわかって、面白かったです。「恋愛感情あるか?」という文字にすれば8文字ほどの文章でも、気になる、尊敬している、ドキドキする、独占欲がある、その人のことを知りたいと思う…などどれが恋愛感情なのかという定義は難しく、設問にその苦労と工夫が盛り込まれていたんだ、と気付かされます。
 また、自由記述で寄せられた当事者たちの声は胸がしめつけられる思いになる体験話が多かったですし、社会に横たわっている問題を投げかける、考えさせられる内容でした。
 オフ会で、よく苦労話というのは聞いたりするのですが、改めてこの自由記述に寄せられたエピソードを聞きながら、「自分だけではなかったんだ」と思いました。ただ、共感だけでなく、「そんなひどいことが…」と思うことも多く、「質的研究」ではないですが、この具体事例のありようについて考える取り組みはどんどんされてほしいし、自分もしていきたいなと思いました。
 今回の発表会、特定の誰かに会いにいったわけではないですが、AroAceコミュニティーに興味のある存在が可視化されたことで、オフ会に参加した時のような「自分だけではない」感覚を味わうイベントになりました。そこに集う人が100人以上いたことは、当事者(と自認している自分)の身からすると、勇気づけられる光景だったように思います。そこに会話があったわけではないけれど、「いる」だけで勇気づけられる。数字の上でも、多様性の中でたしかに「いる」ことが証明された。自分自身を強く持てるようになる2時間だったことは間違いないです。

参考文献:
Aro/Ace調査2022 概要報告資料 As loop編


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