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何故、親は「結婚して欲しい」と言うのか

彼女はできたの?
いつ結婚するの?

もう何度言われてきたことだろう。
親とはLINEでやりとりするくらいには、なんだかんだ仲が良いし、たまに実家に帰ったりする。

でもその度にこれまで何度もされた質問を年々トーンを少しずつ落とし表情は徐々に困惑気味に変化しながら、聞いてくる。

いずれもない、今後の希望もないと伝えると。あぁそうと言いながら、親は

「幸せになってほしい」

と言ってくる。それも毎年、いろんな言い回しで(笑)。

そこでふと考える。
何故親は子どもに結婚して欲しいと願うのか。おそらく答えは幸せになって欲しいからなのだろう。
ただ、アセクシャルを自認する私、れいすいきにはイマイチ響いてこない。

・自己紹介させてください

本題に入る前に簡単な自己紹介を。
れいすいきと申します。
他人に対して恋愛感情を抱くこともなければ、性的に惹かれたなーという経験もない、そんな人生を歩んできました。
性別は男で、20代後半ですが、男性にも女性にも恋愛的な感情で「好き」と思ったことはありません。
そんな私はAセクシャル(アセクシャル)で、おそらくAロマンティック(アロマンティック)だと自分自身を定義しています。

・親は結婚をどう考えているのか

そんな私は、「結婚することが幸せなのか?」と純粋に疑問に思い、たまにそんな意見を親に言ったりする。でも結果は平行線。

一体親はどんな考えなんだろうか。
その答えのヒントとなるエピソードがある本の中にあった。女性から男性に性転換した杉山文野さん。その杉山さんが女性のパートナーと結婚しようとした時に直面したのは親の反対だったという。

"幸せに生きているLGBTQのロールモデルが見えないことで、未来を描けないのは当事者だけではない。親御さんもまた、僕と付き合う我が子の幸せな未来が描けない。だから苦しんでしまう。"                                                杉山文野『元女子高生、パパになる』p54

そういえば親の描くロールモデルについて自分は考えたことがなかった。この本ではトランスセクシャル、およびセクシャルマイノリティの方との結婚への親の反対だったが、アセクシャルの「結婚をしない生き方」についても、日々どこかの家庭では親が反対しているように思う。

・親の描く幸せのロールモデルとは?

私が主張している「結婚せずひとりで生きていくこと」に親は確かに幸せを見出していない。
「私(親)が亡くなってあなた(れいすいき)が1人で暮らすのは心配」みたいなことを言ったりしてくる。
それでは、親が描く幸せのロールモデルってどんなものなんだろう。

自分の場合、親がよく理想としていたのは親の親、つまり祖父母夫妻だった。
祖父母はお見合いだったが、親自身は恋愛結婚だった。

そうなると親自身に内在化されたロールモデルとして以下のステップが形成される(右に行くほど成長、成熟していると見られる)。

出会い→恋愛→結婚

(この間に性愛とか細かくいえばその他ゴチャゴチャ入るのだろうけど、今回は省略)

上記の、人は最終的に結婚に行き着くという価値観やモデルを私は"恋愛進化論"と呼んでいる。
なかなか結婚しない子どもにはお見合いを進めるなど進化論の過程は実は家庭によって異なるが(ダジャレではない)、肝心の行き着く先の最終結論、「結婚」が揺らぐことはない。それは自分たちが結婚して幸せだ(と思っている)からであり、子どもにも"あるべき"成長段階を踏んで、結婚にたどり着いて欲しいと思っているから。

・ちゃんと成長してきた我が子

にしたって、アセクシャルの自分からすると、何故親はそこまで結婚にこだわる?とも感じる時がある。
その理由の一つに思ったのが、私たちがこれまで親が考える成長のレールに沿って生きてき(てしまっ)たからというもの。
アセクシャルの多くは高校を卒業し、就職をしているか大学に進学している。(もちろんそれ以外の進路を歩む人もいる)
勉強をして、学校に行って、就職して...と親からすれば成長のレールを私たちは実はしっかり走ってきている。
親が考える私たちのレールのその先、次の停車駅は結婚。
だが、アセクシャルの子どものレールは結婚方向には向いていない。

「今まで成長を見てきた私の子供がなんで...」
「今まで勉強も、就職もちゃんとしてきたのになんで...」

親は着実に成長する姿を見てきたからこそ、思わぬポイントで恋愛進化論的な成長の軌道から外れたアセクシャルの子どもを"元に戻そう"とする。

「あなたは今までちゃんと成長してきた。何故ここであるべきレールから外れてしまうの。しっかりとした子どもなのに」

・「いつ結婚?」で感じる親の無意識の声

グレていたり、体が丈夫でなかったりすると「生きていてくれるだけで良い」とか違う見方になっていたかもしれない。
しかし、そこまでトントン拍子で多くの人が辿る成長段階のステップを踏んで人生を歩んできてくれた我が子。その子の成長を間近でつぶさに見てきたらこそ次は恋愛に、結婚に向かうはずだと親はレールのその先を望み期待する。

だから、成長を見てきた親は無意識のうちにこう考えながら言っているんだと思うんです。

(あなたは私が思うように成長するはず。だから)結婚して欲しい。いつ結婚するの?

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