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1000日分の335稲垣吾郎。「燕は戻ってこない」

4月30日(火)からNHK総合で放送されるドラマ『燕は戻ってこない』。
桐野夏生さんの小説を原作としたこちらのドラマに稲垣吾郎さんが元トップバレエダンサー役でご出演ということで、原作を読みました。

【あらすじ】
北海道から上京し、派遣社員として暮らす29歳のリキ。いつもギリギリの生活で、職場の同僚から「卵子提供」の仕事に誘われる。
元トップバレエダンサーである草桶基は、自らの遺伝子を残したいと望んでいるが、妻悠子は流産を繰り返す不育症であり、年齢的に受精も不可能と言われ、アメリカの生殖医療エージェントから提案された「代理母出産」について考えはじめている。
リキはエージェントから、高額の謝礼と引き換えに、高桶夫妻の子どもを産む「代理出産」を打診されるー

正直、吾郎さんのドラマ化の話がなかったら、読もうとは思わなかったテーマ。
興味がないのではなく、身近にありすぎて辛いのだ。
「生産性」なんていう言葉を使った、議員資格をはく奪してほしいくらいの最低な女性議員もいたけれど。
作品の中で綴られる、吾郎さん演じる草桶基のように、「優れた遺伝子を残す」という言葉は、実際にこの耳で何度も聞いたことがある。
そして私の場合、多くはそれを私に言うのは「子どもを持った女性」だった。
彼女たちに悪気はない。
子どもを持つことがいかに素晴らしいことか、と説いてくるそこに、悪気もマウントもない。
本当に、そう思っているだけなのだ。
だから余計にきつい。

作中、登場人物が妊娠した後「何か自分がすごく価値のある、偉い人になった気分」だと話すその言葉が、そのまま「子どもを産めない女は価値がない」と聞こえてしまう。それは自分で勝手に打ち込んだ杭なのだけれど。
こちらが「子どもを持ちたくない」と言ったことは一度もないにもかかわらず、ある一定の年齢を過ぎて、子どもがいない仕事をする女のことを、世間は「子どもを産みたくない人」というくくりにするのはなぜなんだろう。
男性も女性も、子どもは自然と授かるもの、望めば産まれてくるものだと思っている人が多いのだな…と、自分に向けられる言葉で思い知る。
そして、そうでないことは、自分が一番よく知っている。

鬱々とした気持ちで読み始めたけれど、読後、意外にも、そんなにどんよりとしたた気持ちにはならなかった。
確かにテーマは重い。
けれど、登場人物がみな、本当に愚かなのだ。愛しいほどに。
みんな身勝手で、結局自分のことが一番で、だけど優しいところもにくめないところもあって、おろおろして、何度も迷って、周りを振り回して、短絡的に行動したり、反省したり、開き直ったり。
その様が、ああそうだな、人間ってそうなんだよな、でもそうやってみんな生きていくんだよな、と思わせてくれる。

吾郎さんが演じる草桶基も、自分の遺伝子が優れていることを疑わない鼻持ちならないヤツだけれど、その言動を見ていると、憎みきれないところがああって、ドラマでどんな風に描かれるのかが楽しみになってきた。
すれ違いはあるけれど、こうしてデリケートな問題について、ぶつかり合いながら本音で話し合える草桶夫婦を羨ましいと思ったり。
きっと、悪い人ではないのだ。
最近はSNSで己の正義を振りかざす人たちもいるけれど。誰が正しいとか、誰が間違っているとか、そんな風に言いきれるものではないのだと思う。

ちなみに。
原作の中には、SMAPファンが反応しそうな箇所がぽろぽろあります。
別々の場面だけれど、「キムタク」「9月9日」が出てきて、それだけでもちょっとテンションあがる相変わらずの低燃費(笑)

うん、ちゃんとドラマ楽しめそう。
ぜひ皆様も、原作・ドラマ共にお楽しみいただければと思います。

『燕は戻ってこない』
【放送予定】
2024年4月30日(火)~7月2日(火)
総合 毎週火曜 よる10:00~10:45
BSP4K毎週火曜 午後6:15~7:00
[再放送] 総合 毎週金曜 午前0:35~1:20 ※木曜深夜


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