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「声をあげる」というリーダーシップ(国際女性デー記念)

3月8日は、国際女性デーらしい!!そんなこともあり、あ、そういえばあの案件どうなったかなーとふと思い出したことがあり、確認したところ、一応、ちょっとは進展していて嬉しかった!ので、ご報告する。

発端は 2020年8月3日。Twitterで、敬愛するKeiko Torii教授(米国でご活躍中の植物学者の女性研究者)のTweetを拝見したことだった。

九州大学教授の中山敬一先生のホームページhttps://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/saibou/index.htmlに、「教授からのメッセージ」というページがあり、これから基礎研究者を目指す若者に対するアドバイスが書かれている。Q and A形式なのだが、その中に問題の文章があった。

Q58. 結婚や出産は女性研究者としてデメリットになりますか?

A58. 一流になりたいなら、結婚は△、出産は×。

http://dp17101259.lolipop.jp/nakayak1/qanda.html

で、これが不適切極まりないということで、Twitterで炎上しており、そこにKeiko Torii教授も批判的なTweetをしてくださっていたのである。

2013年以来、7年越しに同じ文章を見た!

私はこれを見て非常にショックを受けた。というのも、私がこの文章を見たのは初めてではない。私はこの不快な文章を、2013年以来、7年越しに目にしたのだ。

学士編入生として医学部に入学した私は、医学部生時代も基礎研究室に通っており、基礎研究で身を立てていくことを真剣に検討していた時期がある。そんな時期に、医師として基礎研究をしていくためにはどうしたらいいのか、ネット上に答えを求めて、中山先生のウェブサイトも目にしていた。その時には、「ああ、やっぱりそうなのか。。。女性だと厳しいのか」と間に受けてしまった。多少疑問に感じることはあったとしても、「そうなのかもな、やっぱりね」という感じで、諦めに近い感情を覚え、怒りまでは感じなかった。

その後私は医師として臨床現場で働き始め、このウェブサイトのことなどすっかり忘れていた。

そして2020年8月、このウェブサイトが当時のまま全く変わらず7年間放置されていたことを知ったのだ。

2020年、卒後7年が経過した私が感じた感情は、当時と同じではなかった。「こんなのはおかしい、絶対おかしい、間違っている」という怒りの感情である。もちろん、Twitterで抗議のTweetはしたが、フォロワーは1000人余りと限られているし、これだけで終わってもいいのか、と思った。

九州大学 男女共同参画推進室に抗議のメールを送る

このウェブページは、当時は中山研究室の公式HP(九州大学の公式Webページ)の中の一画を占めていた。いくら個人の表現の自由があるとはいえ、こんな差別に満ち溢れた表現を置いておくことを、国立大学の九州大学が許容しているというのはありえないと思った。

よって、私は九州大学の男女共同参画推進室にメールで抗議をすることにした。なお、この手の男女共同参画事業には、文部科学省などから予算が出ていることが多く、九州大学も同様の予算を取得しているようである(文部科学省技術人材育成費補助事業 ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ)。

中山先生に直接抗議したかったが、連絡先もわからないし、九州大学に抗議するのもそれなりに効果があるように思われたから、そのようにした。

実際のメールの抜粋がこんな感じ。問題のページのリンクのURLは、赤丸で示す通り、九州大学のサーバ内のページであった。

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返事は返ってこなかった

メールへの返信は来ず、天下の九州大学もこんな重大なことを無視するのかぁ、と思って、私もそれなりに忙しいので、この一件のことも忘れていた。

2021年3月になってもう一度Web pageを見てみると...

1) 問題の記載は、九州大学のページ内ではなく、中山先生「個人」のページに移動していた

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問題のページに行こうとすると、「ここから先は個人のページです、九州大学や学会とは関係ありません、了承して進みますか?」との記載が出る。

同意する をクリックすると、個人のページに飛ぶ

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2) 個人のページの中に、中山先生の「言い訳」が書いてある。

何が「誤解」なのかは全くわからないが、最後には「皆さん、この問題に対する解決策を一緒に考えましょう。実効性のあるアイデアをお寄せいただければ、私が責任を持って、しかるべき組織へ働きかけます。妙案をお待ちしております。」と対話を促す文章が書いてある。

一通のメールでも少しは意味がある

中山先生の「表現の自由」を脅かすところまでは至らなかったものの、問題の文章が、九州大学の公式サーバーから駆逐されたことは少しは評価したい。なお、確認したわけではないので、私はメールが発端となって、九州大学のWebページから問題の文章が追い出されたのかどうかはわからない。他にも同じような抗議のメールや電話が大量に来ていて、私のメールはそのうちの一通だったのかもしれない。それでもいい。まだまだ不十分だけど、ちょっと変わっただけでも嬉しい。

何かを変えたいと思った時に、人が限られた時間の中で出来ることには限りがある。だけど、限られた時間の中で、一通のメールや電話をすることで変わりうることがあるなら、これからもほんのちょっとだけ勇気を出してやっていくことが重要。これがいわゆる、主体的に行動する、リーダーシップを発揮する、ってことなんではないでしょうか。

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