折り合いがつかないこと
水に濡れると、ぜんぶなくなってしまう気がする。
今日生きたこと、何日も前から考えてきたこと、わたしがかき集めてきた他人からの気持ちとか評価とか。それが嫌だから、水を浴びることが難しい。シャワーを浴びて、すべて落として、自然な姿で生きることがこんなに難しい世界に生きている。そんなことを考えてしまう小難しい意識を持ったわたしを、わたしはあんまり好きになれない。
一昨日から食べてばかりいる。毎朝の日課だった体重も測っていない。さっきもエビのトマトソースのスパゲティを作って、おいしいのかも分からないまま山盛りのそれを平らげた。今はあまいどら焼きが食べたいなと思っている。そういう自分がわたしは好きになれない。
自分にとって自然に生きることって、こんなにも難しいのかと毎日思う。
人とは会いたくないと思っても、先月のわたしは明日の約束をしてしまう。仕事に行きたくないと思っても、わたしはすぐに洋服を買ってしまうから、仕事へ行かなきゃ支払いができない。
なにも予定がない休みの日は家にいる。ひとりぼっち。それが嬉しいのか楽しいのか、悲しいのかもよく分からないまま、ソファに座って前を向いて、じっと煙草を吸っている。
煙が天井に上がってく。もやっと溜まって、左右に散らばって、わたしはその行方を気にしている。
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