『クソさんとそらか、純喫茶にて②』

空花「…クソさんに裏でそんなに私の意識が操作されているとは知りませんでした」
クソ『操作だなんて滅相もない。私だって、「りんご飴が食べたい」とか、「ポテチ食べながらゴロゴロしたい」なんて、そんな無生産な時間を無闇に過ごしたいわけじゃないのよ。私はね、宇宙由来のピュアなインスピレーションによってのみ、あなたに命令することがゆるされているの』
空花「は？」
クソ『たとえば、ふと頭の中に聴いたことのない美しい曲の旋律が流れていたりすることって、あるでしょう？』
空花「はい」
クソ『なんとなく「あのお寺に行ってみよう！」と思い立って行ってみたらたまたまそこで旧友と出会い昔話に花を咲かせ、「最近、デパートでライブしたいのよね」とか何気なく話したら、「私今、デパートで働いているの。GWに大きなイベントがあって、ステージ出演者を募集しているのだけれどよかったら出ない？」なんて声をかけられたりとか』
空花「まあ、なんとなくひらめいて行った先でたまたま悩んでいたことの答えのようなものをもらったことなら、あります」
クソ『そういうのを、インスピレーションというのよ。神とか、宇宙とか、そう呼ばれる大いなるなにかがくれるひらめきのようなもの。それによってのみ、私たちはベストな道を歩むことができる』
空花「曲が降りてくる的なことと、『りんご飴たべたぁい』っていう、煩悩まみれなクソさんからのお願いが同じようなもんってことですか」
クソ『まあ、宇宙からのインスピレーションによるもの、という意味ではね』
空花「なんと。ますますインチキくさい。きっとこの後、怪しい壺のプレゼンとかしてくるに決まってるんだから。そもそもこの人が私の中にいるもう1人の自分って、その設定から嘘に決まってるわ。今時子供でも騙されない嘘に引っかかるところだったわ。アホらしい」
クソ『まあ、信じられないならそれでもいいけど』

店員「お待たせいたしました、あみ焼きチキンサンドでございます」

クソ、空花『「はぁ〜い🥰」』
店員「おふたつ置いておきますね」
空花「…」
クソ『…☺️』

店員「続いて、ソフトクリームでございます」
クソ、空花『「はぁ〜〜い！😍」』
店員「おふたつ置いておきますね」
空花「…」
クソ『…☺️』
空花「ちょっと、真似しないでくださいよ」
クソ『待ち合わせで先にお店に入ったのは私でしょう？私のオーダーは、あなたが来るより先に済ませていたのよ。真似しようがないわ』
空花「ぐぬぬ…。た、たまたまだもん！こんなインチキ壺売り職人さんと私が気があうわけないんだもん！！こんなものぐさな人と、私が同じなわけが…」
店員「お待たせいたしました。餅米でからし味噌あんといちごを包んだ期間限定メニュー、からし味噌いちご大福でございます」
クソ、空花『「はいはい！はぁ〜い😍😍😍」』
店員「お好みでこちらのコチュジャンたれをつけてどうぞ」
空花「うへぇー、超気になってたんすよこれ」
クソ『どう考えてもメニュー発案者さんの味覚、どうかしてるわよね』
空花「35.1周回ってものすごく食べたかったんです」
クソ『わかりみ』
空花「…」
クソ『…☺️』

さっきの店員「店長ー！からし味噌いちごやっとオーダー来ましたー！」
純喫茶店の店長「やっとか！メニュー出してから一ヶ月で初めて入ったな🥰」
店員「どう考えてもこんなゲテモノメニュー、売れないに決まってるじゃないですか。」
店長「ゲテモノだなんて！わかる人には、一口食べればわかる。これは、歴史的な運命を変える、そんないちご大福になると」
店員「はあ」
店長「夢で見たんだ。この大福を、双子？のようにそっくりな巫女姿とジャージ姿の女性たちが仲良く頬張る姿を。その2人は一心同体で、これから地球を救う運命にあるようだ。この大福が、2人を繋ぐ大きな役目を担っているようだな」
店員「店長、寝不足っすか？アブナイこと言ってないでさっさと仕事に戻って下さい」
店長「なんてこというんだ！このいちご大福を出すことは俺の一世一代の大きな役目で…って、いない？最後までハナシをきけぇーーい！ったく、最近の若いバイトってのは」

クソ、空花『「…😶‍🌫️」』

空花「…知ってました？」
クソ『私もこの大福にそんな大きなお役目があるだなんて、存じなかったわ。きっとあの店長さんも宇宙に遣わされた存在ね』
空花「じゃ、食べましょっか」
クソ『そうね』
2人『「いただきまぁす🥰」』
2人『「…」』
2人『「Wow!なんてこった！パンナコッタ！今だかつてない、未知の味」』
空花「これはこれはー🎵」
クソ『それはそれはー🎵』
2人『「運命かもね、そうかもねー🎵
オリジナル曲もできちゃったもんねー🎵
2人で世界を救いましょう^_^」』
空花「…」
クソ『…☺️』

空花『ぜぇぇぇったい、ちがうんだからねッ！！！！！』