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「正欲」を引きずり続けた夏

夏が終わりました。

朝井リョウ「正欲」を読み
ひたすらに引きずった夏でした。

誰と何を話していても
すぐに正欲と結びつけてしまったり
とにかくずっと頭の中にいた。

そりゃもう

寝ても覚めても
食べても吐いても
押しても引いても
出しても入れても
浮いても着いても
泣いても笑っても
勝っても負けても

言語隠蔽効果って言うけれど。
その時の感情をそのまま
持っていられたらいいんだけれど。

せめて盛り上がっていたあんな気持ちやこんな気持ちを
性と向き合った夏の記録、断片を
ここにしまっておこうと思います。


「人はずっと性の話をしている」
という真実が面白すぎる
社会がそもそもつがいになった若い男女が
どんどん生まれていくことをベースとしている
カフェでも職場でも人はずっと性の話をしている
それを一番人気の関心ごととするように仕向けたのは何だろう


性をあけすけに書くにはまだこの人は
若すぎると感じさせられることがあると
生意気に熱弁したわけだが
書き手を知っているからそうなってしまうだけなのだろうか
わたしは中年女性が織りなす自由で美しく
気持ち悪く残酷な世界が大好きだ……
それを書き得るのは当事者だというのはあまりに思慮不足か

「性をあけすけに書く」は矛盾しているようだが
私にとって実に繊細なニュアンスであり
「休み時間に保健体育の教科書を音読する」
ようなものでは寒気がしてしまう
「カフェでプレイボーイを読む」も違う
「コインランドリーでダビデ像を舐め回す」
コレである

「本当に気になる人にだけいいねしてます」
「期間限定ではじめました」
「(肉の写真ドーン)美味しいもの食べに行きませんか」
登録時に消費者行動論の講義でもあるのだろうか。
見事な戦略である。

夏だから海に行きたいみたいな気持ちがわたしにもあります
季節を意識して生きています

女の子は皆いい靴履いた哲学あるイケメンが好きよ


子供用のミュールを見ると泣きたくなりませんか


改めて聖司と雫の陣形が尊い
相手の好きな本を読むなんてもうほとんどセックスでしょ……

「明日死なない」という大前提を受け入れたフリを続けられるよう手を組んでくれる共犯者があの人やその人の隣にも居ればいいなと思い泣きました


「どんな子供だった?」と聞かれて思い出すのはプロフィール帳が大好きだったこと。
架空の女の子で埋まっていったプロフィール帳。
たいして友達もいないのに何冊もプロフィール帳をねだる娘のことを母はどう捉えていたんだろう


通知OFF 必要ないほど モテないな ゾンビの足跡 虚無の掃き溜め

カメラ小僧 ドライブ小僧に 古着小僧 口を開けば 「おすすめは何?」


"生き延びるために、手を組みませんか。"
という状況は無限と転がっている。
怒る上司と怒られる部下、
レジを打つ店員と財布を出す客。
誰もが知る文脈の中で「役割」を全うする安心感。
終わりに向けて日付にバツ印をつけるような人生。

性とは。正とは。
もう戻らないただの夏を抱きしめて
秋も頑張って生きましょう

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