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泣きながらご飯を食べるシーン

日曜日の夜。

アマゾンプライムを開く。
ぽちぽちぽちぽち

ご飯のお供に何を観よう。
可愛い女の子が出てくるやつがいい。
あんまり重くないといい。

あっ
これにしよう。

「さよならくちびる」

ハルレオというユニットをめぐる物語。
日曜日の夜にぴったりの味付けだった。

なんといってもあの名シーン。

ハルの作ったカレーを乱暴に口に運びながら
レオが泣き出すシーン。

ここで一時停止ボタンを押して
しばし泣いた。

皆さんは覚えているだろうか。

「カルテット」の名シーン、
泣きながらカツ丼を食べるすずめちゃんに
マキさんが放つあの名台詞を。

"泣きながらご飯を食べたことのある人は、生きていけます。"

同じく坂元裕二脚本のドラマ
「大豆田とわ子と3人の元夫」においても、
これもまた同じく松たか子演じるとわ子が
亡くなった親友の部屋で料理をし、
泣きながらご飯を食べるシーンがありましたね。

わたしはこれらの作品を見た時、
どうしようもない気持ちになって
たまらなく
坂元裕二さんを抱きしめたくなりました。

この世には数々の「泣きながらご飯」の名シーンが転がっている。

「千と千尋の神隠し」にて
千がハクにもらったおにぎりを頬張るシーン。

ポロポロと溢れ出す涙の粒が
ご飯粒と調和してとても美しかった。
あれはすごい。 

最近のドラマだと
「お耳に合いましたら。」にて
元カレとの思い出のハンバーグを食べるシーン。

ここでは「泣きながらご飯」には珍しい、
「泣きながら話しながらご飯」を見ることができる。

乃木坂46の「夜明けまで強がらなくてもいい」
のmvにて堀未央奈が薄暗い部屋で
ドーナツを頬張るシーンも良い。
映画「おんなのこきらい」を彷彿させる。

「さよならくちびる」と同じカレー部門だと
児童書「ハッピーバースデー」だろうか。

残り物のカレーを電子レンジでチンして食べる。
あすかに冷たく当たる母と兄。
そのあと、あすかは声が出なくなる。

何故でしょうね
こんなにも「泣きながらご飯」が
切なく苦しく愛おしく映るのは。

何度考えてもしっくりくる答えは出ないし
「エモい」の一言で片付けられるのかもしれないが

生き死にの交差点でうずくまっていた人が
立ち上がり歩き出す

その姿に心を打たれているんじゃないか。
なんて。

いやでも違うな。
違うわ。全然違うわ。
そんな24時間テレビみたいな綺麗なものじゃ無いわ。
もっとぐちゃぐちゃで痛々しくて
不恰好なもの。
目を覆いたくなるもの。
もしくは誰の目にもとまらないほどの我楽多。

泣きながらご飯。

祖父が死んだ夜の鉄火巻き。
好きな人に振られた夜の冷凍餃子。
試験に落ちた日の歌舞伎揚。

(歌舞伎揚はご飯。)

そうか、喉に詰まる。
泣く時は、喉からなにかが
込み上げるようにぎゅっとなる。

切ないからぎゅっとなるのか
ぎゅっとなるから切ないのか。

私たちは自分の経験を引っ提げて
フィクションを受け取る。
これはどうしたって避けられない。

私はこれからも「泣きながらご飯」を
追い求めて旅を続けます。

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