Reiko. M
点と線の 点だけがふえて いっきに飛んだら 線だけが残った まるで 動く抽象画をみているようだった
夏の終わりには セミがよく転がっている 機嫌よく飛んでいる途中で いきなり死が訪れたみたいに 自分が死んだことに まだ気づいていないみたいに 掌の中で鳴くセミが まるで電子楽器のように 無機質な音でわめきちらすことを 覚えておいた方がいい 甲虫の脚の力強さも 知っておいた方がいい まだ掌がちいさいこどものうちに
庭でたわわに実るブラックベリー ムシャムシャ食べても決しておいしいものではなく かといって腐らせてしまうのも勿体無から 夏のあいだ毎日ちょっとずつ冷凍保存しておきました それがだいぶたまったので昨日はそれを解凍し スロージューサーで絞り グラニュー糖を入れて鍋でぐつぐつ煮詰め 3つの瓶詰めにしてブラックベリー・シロップの完成です と書くと簡単そうですが ブラックベリージュースとその搾りかすは まるで鮮血のような赤い色をしているので キッチンが殺人現場のよ
戦争で命を落とした画学生たちの 描き遺した絵を集めて建てられたという 信濃の緑地に佇む戦没画学生慰霊美術館「無言館」 訪ねたことはないがもしそこに立ったなら 複雑な想いで動けなくなるのではないだろうかと 想像しながら挿絵を描いた (日々の新聞 8月15日号) 【紙面を読んで】挿絵/宙に浮かぶパウンドケーキのようなスポンジの 一部トリミング