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冬の気象〜雪〜しぜんのかがくep.29  防災豆知識〜雪の災害に気をつけよう〜

1月になり、雪があまり降らない場所でも雪がちらつく季節になってきました。冬の気象といったら、雪。今回は「雪のでき方」や「雪の形」、「雪の結晶の撮影」についてです。

雪はどうやってできる?

雪は空から降ってきますが、どうやって雪はできるのでしょうか?
ちょっと以前のポットキャスト(水の回ep.7)の復習です。雲は空気中の水蒸気が上空でエアロゾルという微粒子に集まってできる水のツブであると言うお話(実験)もしました。

雲の中では水の粒は凍り、「氷晶(ひょうしょう)」になります。この形は水分子の形が結晶化して大きくなったものなので、雪のもとは六角柱の形をしてるそうですよ。水の回(ep.6)でもお話ししましたが、この六角形の形は水の分子の構造が関係しています。
雪を降らせる積乱雲内の上昇気流により、氷晶は大きくなっていきます。
重たくなった氷晶が下に落ちてくる時に結晶化する温度や水蒸気の量によって雪の結晶の形が変わります。

冬のような地上が寒い状態だと雪の結晶はそのまま落ちてきます。おおよそ地上気温が2〜3℃以下だと雪になります。
通常、私たちが住む日本など温帯に降る雨は「冷たい雨」と言い、一度上空で雪の結晶となったものが溶けて雨粒となって降ってきているんですよ。
(「暖かい雨」は熱帯に降る雨で、水のツブになった後、ある程度の大きさになると氷晶にならず、そのまま降ってきます。)

雪の形の種類について

雪の形は通常、雪マーク(樹枝状)を思い浮かべますね。実は結晶化する際の水蒸気量と気温によって雪の結晶の形は様々です。雲に含まれる水蒸気が飽和を超えるほど多く含まれている場合、樹枝状や扇型など複雑で美しい形になります。

雪の結晶の形と気温・水蒸気量の関係(小林ダイヤグラム)

雪の結晶の種類はどのくらいあると思いますか?
実は氷晶やみぞれ,雹なども含めて「121個」もあるんですよ。
小林ダイヤグラムを見ると、水蒸気が多いと雪は扇形から樹枝状、角柱は針状に。角板が交差するように成長した交差角板や砲弾という結晶は粒が小さくかなり低温の状態で成長します。

※写真集は1983年出版と古い本ですが、「雪の結晶ー冬のエフィメラル」 北海道大出版会が写真やイラストが美しくてオススメです。


牡丹雪は名古屋でもよく見られる雪ですが、雪の結晶がくっついて大きな塊となって降る雪です。比較的気温が高く、湿度が高い時に降ります。名前の由来は牡丹の花びらのように降るから、また、ぼたぼたした雪だからという説があります。

気象庁気象研究所 荒木健太郎研究室より
気象庁気象研究所 荒木健太郎研究室より

これだけ種類があるので、雪の研究で有名(世界で初めて人工雪を作った研究者。北海道大学で研究)な物理学者で随筆家の中谷宇吉郎(1900-1962年)は、「雪は天から送られた手紙」という言葉を残しています。これは、雪の形を見るだけで、空の雲の中の気温と水蒸気の量がわかるということです。
雪の結晶の形は空から降ってきても空から地上に落ちるまで1〜2時間の命です。空の情報が雪の美しい結晶の形で降ってくるお手紙なんて、なんてロマンチックなのでしょう。

中谷宇吉郎さんは、「地震は忘れたころにやってくる」という文章の一節を残した、同じく物理学者の寺田寅彦の弟子なんですよ。

雪の模様

雪の形はとても美しく、昔から人々に親しまれてきました。中国では紀元前から雪は「六出(ろく出)」と記され、天文学者のケプラー(天動説: 地球が宇宙の中心で、太陽や惑星、恒星のすべてが地球のまわりを回っているという考え。地動説はコペルニクス)や哲学者のデカルトも雪の観察をしています。
日本では、江戸末期の古河(こが)藩主(茨城県古河市)の土井利位(としつら)が、雪の模様を顕微鏡を使って約20年かけて観察してまとめた「雪華図説」という本(1833年)が出版されました。

日本語: 土井利位英語: 土井利貫, パブリック ドメイン, via Wikimedia Commons

この本には、86種類の雪の結晶が掲載されています。日本で初めての科学的視点から記された雪についての自然科学書ですね。この本の出版後、「雪華」模様は江戸の街で庶民の間で大流行したそうです。土井利位は「雪のお殿様」と呼ばれたそうですよ。浮世絵や刀の鍔(つば)、かんざしなどの小物、さらには着物のテキスタイルと様々な物に用いられました。

「江戸の松 名木盡(づくし)」渓斎(けいさい)英泉(えいせん)

今でもお菓子の模様や家紋、学校の校章などにも雪の結晶がデザインされていますね。

消防の消防章にも使われていて、「消防章の図案」は、雪の結晶の拡大図を基礎とし、これに日章を中心として水管、管そう(消防士が持つところ)それに筒先から放出する水柱を配したものだそうですよ。

私物。消防車の消防章です。

雪の結晶を見てみよう

雪の結晶は、接写レンズをつけたスマホカメラで撮影することができます。

黒い(濃い色)布(私はPCのカバー、不織物の黒い布)を十分に外で冷やします。その上に雪が積もったらすかさず、スマホカメラのシャッターを切ります。雪の結晶はすぐ溶けてしまうので、連写するのがポイントです。
名古屋の雪は降ってくる間に少し溶けてしまうのか、私はなかなかうまく撮影できませんでした。上記は東北で昨年撮影した写真です。

#関東雪結晶 プロジェクト 気象庁気象研究所 荒木健太郎さんHPより
※#関東雪結晶 プロジェクト」によるデータ募集は終了しています。

スマホ用マクロレンズは100均で手に入ります。数が少ないようで、運良く手に入った方はラッキーですね。ネットでも千円程度で販売されています。

スマホをクリップのように挟んで使います。
私はピントが合う場所でガードをつけました。

以下、気象庁気象研究所の荒木健太郎さんのYouTubeの動画も参考にしてみてくださいね♪

防災豆知識〜雪の災害に気をつけよう〜

雪がふわっと積もっているのを見ると、雪は軽く見えますが、実は雪は積もれば積もるほど、災害起こすような非常に危険なものになります。

「雪水比」という雨と雪の量を換算する式があります。新雪は積雪1cmで降水量約1mmになります。雪が積もると時間が経つと圧縮され、3mmの降水量と同じになると言われています。

(雪は水が凍ったもの。水は1リットル(10×10×10センチ)で1キログラムと重量があります。)

例えば、大雪時に1m積雪すると1m四方あたり(100リットル×3)の雪の重さは300kgとなります。大人(体重50キロ)6人分ですね。
屋根の上に1メートルの雪が積もると、一坪(3.3m2)あたり、約1トンもの重量の雪が載っている状態になります。
雪国ではこまめな雪下ろしが必要ですし、重い雪が落ちてくると本当に危険ですね。

雪が道路に積もると、車での立ち往生などの災害も起こります。2022年12月に新潟県などで記録的大雪で車が立ち往生し、22キロが通行止めになりました。雪がマフラーの上まで積もると排気ガスが逆流し、車内で一酸化炭素中毒になる危険性もあります。雪が降る地域に行く場合、マフラーの周辺を定期的に除雪するスコップなどの準備、毛布やカイロなどで車内で暖を取る準備などをしてください。

⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく


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