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しぜんのかがくep.53(8/23)「南海トラフ地震臨時情報」の振り返り、「わからない」からこそ備える。

2024年8月8日の夜7時15分に南海トラフ巨大地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。宮崎県の日向灘でマグニチュード7.1、震度6弱の地震があったからですね。8/15に内閣府の政府としての特別な注意の呼びかけは解除されましたが、まだ引き続き警戒が必要な状況です。

以下振り返りをしてみましょう。


1.「南海トラフ巨大地震臨時情報」ってなに?

「南海トラフ地震臨時情報」とは、南海トラフ地震の可能性が普段より高まった場合に気象庁から発表されます。
南海トラフは、なぜそんなに危険なのでしょうか?なぜ高まったと言えるのでしょうか?
それは、そもそも南海トラフの地震は過去繰り返し起こっていることが歴史的によくわかっているからです。また、プレートの一部がズレると、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘までの日本列島の広範囲のプレートのズレへと連動し、非常に大きな揺れになる可能性が高い場所だからです。

南海トラフの「トラフ」とは、海底の溝状のくぼみ部分です。
静岡県の駿河湾から、熊野灘(御前崎から伊良湖岬)、紀伊半島(三重県、奈良県、和歌山県)の南側の海域、及び土佐湾(高知県)を経て、今回話題になった日向灘沖(宮城県)までのフィリピン海プレート及びユーラシアプレートが接する海底にあります。
最古の南海トラフの記録は飛鳥時代。684年の白鳳地震は、720年に完成した最古の歴史書「日本書紀」にその様子が書かれています。愛媛の道後温泉が止まったほど、大きな揺れだったそうです。

天武十三年十一月三日(684年)
684(天武13)年に起きた白鳳地震は、南海トラフ巨大地震の最古の記録とされている。日本書紀には人々が絶叫し、山が崩れ、家屋や寺社が倒壊し、伊予(道後温泉)では湯が出なくなり、土佐(高知)では田が没して海となった、と記していた。」

レファレンス共同データベースより

南海トラフがなぜこんな昔からの記録が残っているのでしょうか?
それは都(奈良、京都)が震源域に含まれているからです。
特に平安時代は地震等災害などの天変地異などは、神様の仕業と言われ、それを鎮める祭事の記録が残されています。この歴史記録から、南海トラフのみ、100年〜150年周期で地震が起こることがわかっています。
現在、南海トラフの一部である1854年の安政東海地震が起こってから、すでに170年が経過。この場所はいつ次の地震が起こってもおかしくない場所であるからこそ、警戒が必要なのです。

「南海トラフ地震臨時情報」は、どのような経緯で出されるのか?というと、地震が起こった場所である震央のマグニチュード(地震のエネルギーの大きさ)と、地震がどこで起こったか?が基準となります。

南海トラフ地震 その時の備え 内閣府、気象庁 より

2.なぜ南海トラフ臨時情報(巨大地震注意)が発表されたのか?

今回発表された巨大地震注意の基準は、Mw(マグニチュード)7.0以上の地震の発生です。これは世界で(1904〜2014年)発生した地震の事例を集めて統計的に示したものです。
M7.0が起こった後、M8.0クラスの大きな地震が7日以内に発生する可能性が高い(1143回中6回、数百年に1度。具体的にはMw7.0以上の地震が世界で1437回発生。その地震の震源から50km以内かつ7日以内にMw8クラス以上の地震が6回発生。)という確率です。
「大きな地震が起きた直後はまた大きな地震が来るかもしれない。」というデータを元にしています。その取り決めにより、今回の日向灘の地震は、Mw7.1 の地震であり、プレートの境目(陸のプレート とフィリピン海プレートの境界)で発生したので、マニュアル通りに評価委員により検討され、発表されたものです。

3.注意情報が解除されましたが、警戒は必要?

15日午後5時をもって政府は「特別な注意の呼びかけ」を終了しました。
1週間の注意情報が解除されても、安心というわけではありません。
過去の南海トラフ地震では、1944年の昭和東南海地震の2年後、1946年に昭和南海地震が発生しました(その間の1945年に直下型の三河地震が発生しています)。備えの継続は引き続き必要なのです。
1週間の基準というのは、どの程度備えや注意が継続するか?という市民感覚(アンケートの結果)だけで、根拠はありません。

以下、参考情報です。

気象庁と内閣府によるパンフレット
南海トラフ地震-その時の備え- 制作:気象庁、内閣府
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nteq/leaflet_nteq.pdf

津波到達前に、地震動に伴う堤防沈下の影響により、概ね地震発生から30分以内に30センチメートル以上の浸水が生じる地域を事前避難対象地域としています。

臨時情報の時にどう行動すべきかの漫画もあります。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nteq_manga/index.html?

[NHKスペシャル] もしも南海トラフ巨大地震が発生したら?シミュレーションCGとドラマで解説 | MEGAQUAKE | NHK

以下、連動型の過去の地震。イラストもあります。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02086/

防災ひとこと

災害はいつ起こるかは、科学的にも「わからない」

今回の巨大地震注意情報は、Mw7.0以上の揺れが南海トラフの想定震源域付近で起きたことは事実ですが、その後本当に南海トラフの地震が起こるのか?いつ起こるのかは科学的にもわかりません。過去の地震災害と同じことが起こるわけでなく、それぞれの災害によって何が起こるかわかりません。

今回の臨時情報への対応も予想外の対応が行われ、私たちの生活にも影響が出ました。JRの運休(東海道線でも南紀など運休)や速度を落とした運行(東海道新幹線、三島〜三河安城)をしていました。避難所開設(4県24市町村の139か所)をしている自治体もありました(愛知県内は岡崎市のみ)。
やはり個人の行動としても水や食料(カップ麺など)、防災グッズ(突っ張り棒など)の買い占めがあったようですね。

いつどこでどのような災害が起こるかわからないからこそ、それぞれの人が何が起こっても柔軟に対応できるように、普段からできる限りの備えを進めたいですね。

⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく

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