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冬の気象〜オーロラ〜しぜんのかがくep.30 防災まめ知識〜太陽風(磁気嵐)による災害〜

冬に空で繰り広げられる美しい自然現象というと、オーロラですね。オーロラが見える場所はどこでしょう?南極、北極、カナダ?アラスカ?寒い場所ばかりが思い浮かびますね。

オーロラはどんな現象?

冬の気象と紹介しましたが、実はオーロラが見える場所が寒いかどうかは関係ありません。寒いからオーロラが発生するのではないのです。寒い地方である、極地方だと見えやすいということなんですね。その辺りも説明していきますね。

では、オーロラはどのような現象なのでしょうか?
オーロラとは、太陽が関係しています。太陽から放出される電気を帯びた粒子(太陽風:プラズマ)の流れが地球の地磁気による磁場で加速され、極地の大気圏に突入した時に光が出るんです。太陽風が突入する場所はオーロラベルトとも言われていて、毎日のようにオーロラがみられる場所(アラスカなど)もあるようですよ。

カメラポケット https://camerapocket.com/

オーロラはどうして鮮やかな色をしているのでしょうか?

主に、緑や青が多く、時には赤色が見られます。色は大気元素に宇宙からの電子が衝突して光る現象です。
地球大気で一番多いのは?窒素が約80%酸素が約20%なんですね。(その次がアルゴン0.9%、ちなみに二酸化炭素はたったの0.003%)
電離した窒素分子は緑色酸素原子は青色になります。

日本でもオーロラが昨年2023年に12月1日に北海道で見られたようですね。

https://news.yahoo.co.jp/articles/eba26ffd2b0f3f2a3cc821a28a62ea4616b782e8


実はオーロラが見られた12月1日の前に太陽活動が非常に活発になったことがわかっています。太陽フレア(太陽表面の爆発現象)が発生したんですね。そうすると太陽風がより強いものが発生し地球に届きます。

宇宙天気予報 こちらは12月25日の太陽

強い太陽風が地球まで届くとオーロラベルトが低緯度まで広がり、地球磁場の激しい乱れが続いた結果、低緯度の日本までオーロラが見えるようになります。

赤い色のオーロラはオーロラの高度が高い場所で見られます。オーロラカーテンの上部の高い部分ですね。(タイトル写真の赤い🟥部分)
上空は低いエネルギーでも光ることができるので赤く見えます。(正確には、酸素原子が励起されて光っているのですが、空気が薄く低いエネルギーでも光ることができるので、波長の低い赤色が発生するのです)
低緯度での日本でオーロラが赤く見えるのは、夕焼けや朝焼けが赤いのと一緒で斜めから見た時に空気の厚みがあるため、エネルギーの低い赤い光がより届くので赤くなるんです。(エネルギーが高い青い光はすぐに散乱されて届きません。空が青いのはそのためです)

過去を遡ると京都でもオーロラが見えたという記録が残っています。京都市伏見区の東丸(あずままろ)神社に所蔵されている東羽倉(ひがしはぐら)家の日記古典籍『星解』では、1770年9月17日の日記に山から放射状に吹き出すような形のオーロラの絵が描かれています。これは京都上空の磁力線に沿ってオーロラが発生したようすを表しているようですよ。
京都という滅多に起こらない場所でオーロラが見られたので、
当時の人は火事が発生した、天変地異が起こるのではないか?大旱魃が起こったからではないか?とオーロラを良くない現象と結びつけて眺めていたようです。

太陽の黒点の増減で太陽風の強さが変わってきます。太陽の表面で爆発が次々に発生し、黒点のある場所でコロナが発生します。その温度は太陽表面(6000度)より温度が低い場所(4500度)です。磁場が強いので、太陽の熱や光が妨げられ、温度が低くなります。
太陽黒点の増減は、太陽表面での活動の強弱を表しています。約11年を周期として増減を繰り返していて、黒点数は、多い時(極大期)には100~200に達しますが、少ない時(極小期)はゼロに近くなります。
次の極大時期は米海洋大気局(NOAA)の宇宙天気予報センター(SWPC)によると、今年2024年1〜10月と予想されています。もう活動機に入りつつありますね。今年はオーロラが各地で見られるかもしれません。

太陽の黒点

オーロラは見た方はわかると思うのですが、非常に神秘的な美しさを感じます。宇宙と繋がっている感覚もあるようですね。
(ポットキャストの放送では、オーロラを実際に見たディレクターの足立さんがその感動を語っていらっしゃいますので、ぜひお聞きください😉)

昔からオーロラはその美しさを超えて恐ろしさと繋がってきました。
闇夜に浮かぶオーロラの光は、天空からの「よくない知らせ」のメッセージと捉えられることもありました。
北欧では死者と正者の世界がオーロラの端で結ばれていると信じている人が今もいるそうです。
中国では日本と同じように非常に稀に赤いオーロラが見られ、天に住む赤い龍の姿と例えられます。また、特に赤いオーロラは血を連想させるので、戦争の前触れ、大災害の予兆、神の怒りの印であると思われていたそうです。

美しいオーロラは地球の地磁気を通して太陽の活動である太陽風が美しい姿として現れる。オーロラの美しさは地球に住む私たちへの宇宙からのメッセージとしてこれからも眺めていきたいですね。

参考:「オーロラの科学」 上出洋介著 誠文堂新光社

防災まめ知識〜太陽風(磁気嵐)による災害〜

「磁気嵐」というのは、非常に強い太陽風に地球の地磁気が影響を受けることで発生します。その太陽フレアの爆発に伴い、電波やX線の他、電子や陽子など素粒子が飛び出し、衝撃波として地球に接近し、突然の磁気嵐を起こします。その後、上空の電離層(電離層とは:地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が、紫外線やエックス線などにより電離した領域。電波を反射する。)に影響を与えると、人間が発信している電波がうまく通過できなくなり、世界中で電波障害が発生します。
これまで地球に最大の影響を与えた「磁気嵐」として、1859年のキャリントンイベントが知られています。この時日本は江戸時代ですね。イギリスの天文学者であるキャリントンさんが観測した史上最大の太陽フレアがこの時発生しました。
この強力な太陽フレアによって、ハワイやカリブ海沿岸など、世界中でオーロラが観測されたそうです。アメリカ北東部ではオーロラの明かりで新聞が読めたそうです。
その際、人間活動にどんな影響を与えたのでしょうか?ヨーロッパやアメリカ全土の電報システムが全て停止したそうです。電信用の鉄塔は火花を発し、電報の用紙は自然発火したそうです。
電報システムは、当時の最新テクノロジーですね。初期の電報システムは「ツー・トン・トン」のモールス信号で情報伝達する仕組みで、1850年代には、地球の全周4万㎞に匹敵する電報システム網が北アメリカ、ヨーロッパを中心に完成していました。1921年と1960年にも小規模な太陽嵐が発生し世界中で電波障害が発生したそうです。

では、私たちの住む現代に同じようなキャリントンイベントのような大規模な太陽風が発生したら地球はどうなるでしょうか?
最悪の想定としては、以下の現象が起こると想定されています。
・通信・放送が2週間断続的に途絶し、 社会経済に混乱。衛星測位の障害(GPSなど)携帯電話も⼀部で サービス停⽌
・多くの衛星に障害が発⽣。衛星を⽤いた サービスが停⽌。
• 短波通信の障害による航空機や船舶は世界的に運航⾒合わせが発⽣。運⾏スケジュールや計画 に⼤幅な乱れ。
・宇宙飛行士の被曝
・広い範囲で大規模な停電が発⽣

私たちの生活に大きな影響を与えそうですね。では、どうすればいいのでしょうか?
「宇宙天気予報」って知っていますか?

国立研究開発法人情報通信研究機構が「宇宙天気予報」のサイトを公開しています。何がわかるかというと、太陽フレアの強さ、地磁気の攪乱の影響、
太陽の黒点の数やフレアの状況のリアルタイムデータと24時間以内の予想です。

既に企業等でこの宇宙天気予報は活用されているそうですよ。
アメリカなど全世界で、この宇宙天気は地震台風などと同じように自然災害の一つとして捉えています。
デジタル機器が溢れている私たちの生活では災害になり得ますよね。
大きな太陽風が発生しても、地磁気や大気に守られて、人体には影響がないことはわかっていますが、将来は天気予報と同じように当たり前のようにTVなどで見られるようになるかもしれませんね。

参考:
宇宙天気予報(Youtube NICTchannel)
https://www.youtube.com/watch?v=PqbNGIXqc9M
・宇宙天気の警報基準に関するWG報告:最悪のシナリオ(宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会)https://www.soumu.go.jp/main_content/000811921.pdf

⭐️Podcast本編はこちら↓宜しければお聴きください♪
神田沙織 がりれでぃ スピンオフ
ナチュラル・サイエンス・ラボ
しぜんのかがく



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