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推ししか勝たん!(まちの不思議 おもしろ探究日記 #3)

(本記事は、雑誌『社会教育』に掲載された連載記事を転載しています。)

「私には推し議員がいて、推し活をしています。」
と言うと、大抵キョトンとされる。
議員を推すということがまずよくわからないし、推し活となると、さらにわけがわからないらしい。

私の中では推しは推しでしかないのだけど、「推し議員ってどういうことですか?推し活とは具体的にどういうことをやるんですか?」と、真面目に聞かれれば聞かれるほど、ちゃんと説明することが難しいなぁと思ってしまう。

アイドルの推し活を考えると、少しイメージがわきやすいかもしれない。
好きなアイドルのライブに行って、グッズを買い、グッズを作り、その魅力をSNSで発信し、同じように推している人とつながって仲良くなり、仲間で集まって推しトークをしたりする。

アイドルに会いたい。
その表現に触れたい。
応援したい。
そして、応援することで自分が励まされる。
その人にふさわしい自分でありたい。
応援している自分が好き。

そんな風に、推し活をしている多くの人が、推し活によって癒されたり元気が湧いたりしていて、それが生き甲斐につながっていたりもする。
それこそが推しであり、推し活であり、それを国会議員でやっているのが、推し議員の推し活である。

「推し議員」に出会ってしまった!

二年前、国会を楽しんでいる友人に勧められて、国会の文部科学委員会(文教科学委員会)のインターネット中継を見てみた。
テレビ中継が行われている予算委員会や本会議もいいけど、より具体的な事案を扱っている委員会もおもしろいんだと聞き、それならばと、自分の関心領域に近い文科省の事案を扱う文科委員会を見てみることにした。

そこで、私は推し議員に出会ってしまった。

質問で扱っている内容はもちろん、その質問の仕方、言葉の選び方、相手との交渉の進め方など、国会議員としての仕事へのスタンスに感銘を受け、惚れ込んでしまったのである。
そこから、その議員さんが取り組んでいる政策や活動を調べていき、調べれば調べるほどに、どんどんと共感がわいてきて、そこに自分の在りたい在り方に近いものも感じるようになった。

その人個人の在り方そのものに興味を持ち、この人の活動をもっと知りたい、そして周りの人にも知ってほしいという感覚は、政治家を主体とした支援とか応援といった言葉ではなく、自分を主語とした「推し」という言葉で呼ぶのがふさわしいように感じて、その議員さんの事を「推し議員」と呼ぶようになった。

「推し」から学びが広がる

推し活と称して、国会中継を見たり、本人や仲間が発信しているYouTubeを見たり、いろんな記事を読んだりしていくと、その議員さんが国会の中でどういった立ち位置にいるのか、所属している政党がどういう背景をもち、現在の政局でどんな位置づけにいるのか、そして、どんな人のどんな声を受けて、どんな取り組みをやろうとしているのかといったことも、少しずつわかるようになった。そして、政策の背景にあるいろんな人の思いも見えるようになり、そこにある人間ドラマにも心惹かれるようになっていった。

それは、アイドルを推していると、そのグループ内でのメンバーの関係性や、ライバル関係にあるグループに詳しくなっていき、そこにある青春物語に心を寄せるようになっていくというのにとても似ていて、政治家に人として注目をしていくと、政策や政局の解像度がどんどん上がっていくということを実感した。

そういったおもしろさをSNS等で発信していく中で、同じ議員さんを同じように推している推し仲間と出会うようになり、思いを共有する場として、オンラインでファンミーティングをやってみた。また、応援グッズとしてうちわをつくってみたり、テーマカラーの服を着て、みんなで会いに行ったりしていたら、私や仲間の周りにいる友人たちも、なんだか楽しそう!と参加してくれるようになった。そして、その輪はどんどんと広がっていき、その友人たちも少しずつ政治に詳しくなっていった。

うちわを持って街頭演説に行く友人たち

政治に関わるといった時に、自分が進めてほしい政策を進めてくれるから、その政治家を応援する、ということはある。しかし、それだとその政策以外の学びには広がりにくい。
一方で、政治家の人となりに興味を持ち、この人はどんな背景を持っていて、どんな思いを受けて当選して、どんな活動をしてきているのか。なぜその党に所属し、その委員会に所属し、その質問をしているのか。といった視点で見ていくと、どんどんと学びが広がり、仲間の輪も広がっていく。

「推し」から学びが広がるのである。

政治こそ「推し活」で楽しもう

基本的に推し活というのは、自分がやりたくてやっていることなので、強制感を持つ必要はない。興味を持ったからといって、全ての国会質疑を見ないといけないこともないし、常に応援をしていないといけないこともない。
自分の状況に合わせて、推し活をお休みしたり、後から情報を後追いしたりしてもいいのである。自分がやりたい時にやれる分だけ推し活をして、それによって自分が元気をもらい、励まされるということが、何より大切なのである。

こういった活動をしていると、政治もこんな風に楽しんでいいんですね!と驚かれることも多い。
でも、政治こそ楽しんでいいと思うし、むしろ、私たちの生活に関わるエンタメコンテンツであるようにも思う。

政治家を推したっていいし、それぞれの関わり方で関わったっていいはずなのに、それはダメだと言われる気がしてしまう。
これはなぜなんだろう。

この不思議については、今後また探究していきたいと思っている。

ファンミーティング(決起集会)で、お揃いのワンピースを着て推し議員と記念撮影


▼ 雑誌『社会教育』


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