見出し画像

「選挙×   」でまちづくり(まちの不思議 おもしろ探究日記 #20)

(本記事は雑誌『社会教育』2024年2月号に掲載された記事を転載しています)

少し前の事になるが、国分寺市立第四中学校で、国分寺の投票率を一位にプロジェクトが、出張授業をさせてもらった。
私たちの活動を紹介したテレビ放送を見た地元の学校の先生が、「SDGs講座」という外部講師を呼んで行う授業の中でお声がけしてくださり、SDGsの目標⑪「住み続けられるまちづくりを」のテーマで、活動の話をさせてもらうことになった。
私たちのプロジェクトは、選挙や政治を扱っているため、主権者教育の活動と認識されることが多いのだが、やっているメンバーとしては、「まちづくり」の感覚も強いため、今回はとても嬉しいお声がけであった。

好きなことからまちにつながる

講座に参加をしてくれたのは、様々なSDGsのテーマの中から、このテーマを選んできてくれた1~3年生が約50名。学年を超えて組まれたグループで事前学習を行い、プロジェクトの事も調べてくれていた。

まずは、発起人の一人である鈴木さんが、「コーヒー」が好きだ、という話から始まった。小学校の卒業文集にコーヒーの事を書き、中学校の職場体験ではカフェに行き、大学ではコーヒーの原産地について研究をしながらカフェで働き、今は喫茶店を開業準備中である。
そうやって暮らす中で、まちや社会とつながり、選挙のおもしろさに出会い、プロジェクトを始めることになった。
そして、「選挙」と「コーヒー」を掛け合わせて、コーヒーを飲みながら気軽に政治の話ができる「選挙屋台」をやることになったのである。

他にも、プロジェクトのメンバーの好きなことや得意なことと選挙を掛け合わせて、「選挙×人に会う」ということから候補者インタビューが生まれ、「選挙×オタク気質」からは候補者データベース、「選挙×イラスト」からは、野菜を擬人化したキャラクターによる野菜選挙など、一人ひとりの好きなことからつながり、活動が次々に生み出されている話をした。

公開作戦会議in中学校

それを受けて、講座の後半では、「自分の好きなことや得意なことと掛け合わせて、選挙を盛り上げてみる企画を考えてみよう」と、中学生の子たち自身で考えてもらう「公開作戦会議」を行った。
「公開作戦会議」は、私たちが選挙のたびにやっていることで、毎回たくさんのアイディアが生み出されて活動が決まっていく。そのおもしろさを体験してほしいということと、中学生の子たちのアイディアを、実際の選挙でもやってみたいと思っていた。

まずは、「選挙×   」と書かれたワークシートに自分の好きなことや得意なことを書いてもらい、どうやったら選挙と掛け合わせていけそうか、おもしろい企画にできそうか、グループごとに話し合ってもらった。
大学生や社会人のプロジェクトメンバーもサポートに入り、いろんな視点を交えながらアイディアを考え、各グループで一番おもしろい企画案を発表してもらうことにした。

選挙ラン/政策ピザ/ジュース選挙

最初に出てきたのは、「選挙×走る」だった。
走るのが好きだという子がいて、選挙期間中にまちの中を走りながら、まちの変化や課題を発見していくというアイディアである。あまりにおもしろく本質的なアイディアに、私はマイクを持ちながら大興奮してしまった。
「選挙ラン!めっちゃいいね!まちのこともわかるし、体を動かして楽しい!これ、次の選挙でぜひやろう!」

「選挙×ピザ」というアイディアも出てきた。
ピザがどうなるのだろうかと思っていたら、候補者がピザのメニューで政策を表現する!というものであった。シンプルな政策はチーズ一点盛りのピザ。総合的な政策はミックスピザ。それらに政策の名前を付けると、注文するたびに口にするから覚えられて一石二鳥だ、と。
「政策ピザ」という、考えたこともないアイディアに「めちゃいいね!」とまた興奮してしまった。

さらに、「選挙×自動販売機」「選挙×ジュース」というアイディアが、いくつかのグループから出た。
中学生にとって、ジュースはとても身近で魅力的なコンテンツなのである。
「次の模擬選挙の題材はジュースにしよう!」と、これまた大いに盛り上がった。

他にも「選挙×V-tuber」で地域のゆるキャラを活用するとか、「選挙×人気アニメ」「選挙×ネコ」「選挙×ゲーム」「選挙×スポーツ」といったアイディアが次から次へと出てきた。
中学生の子たちの豊かな発想に唸りながら、どうやったら実際の選挙につなげられるのかと、メンバーも一緒に楽しく考え、まさに「公開作戦会議」として、一緒にまちのことを考えて活動をつくっていく時間であった。

否定せずに一緒に考えてくれた

終わった後に、感想をいただいた。
「まちづくりというと難しいけど、自分の身近なこととつなげていく事が大事なんだと思った。」「選挙は大人がやることで関係ないと思っていたが、意外と身近なんだと思った。」「私たちのまちをみんなで盛り上げようという気持ちが大事なんだと思った。」「好きなことを共有するとアイディアがどんどん出てくる。可能性は無限大だと思った!」
と、とても嬉しい感想ばかりだった。

他にも、「自分の拙い意見でもしっかり聞いてくれて、現実的に考えてくれたのが嬉しかった」「意見を否定せずに一緒に考えてくれたのでやりやすかった」という感想もとても多くいただいた。
まちの中の活動は、好きなことややりたいことを自由に表現でき、年齢や立場を超えて、対等な立場でみんなでつくっていくことができる。そこでは、中学生の子たちも当たり前にその一員である。

否定されることなく一緒に考えていく、ということ。
次の選挙の際には、中学生の子たちのアイディアを一緒に形にしていけたら嬉しいし、活動の様子を見ていてくれたらいいなと思う。
そして、それこそが、SDGsにもある「誰もが参加できるまちづくり」の第一歩になるのではないだろうか。


▼ 雑誌『社会教育』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?