ことばの杖 李良枝エッセイ集

2022年5月発行 新泉社
イヤンジ 1955-1992 
武田泰淳 太宰治 光州事件(ソウル留学時) 丸正事件
カヤグム(伽耶琴)

・愛とは、人、自然、すべての対象について、それらの欠点でさえも美徳と感じられる心をさすのだ、と多くの偉大な先達たちが、表現こそ異なれ、ひとしなみに語り伝えてきたように思う。(p72 愛を知り生の意味を確かめる)

・「私は外国で、言葉が通じないところで長いこと暮らしました。何が何だかわからなくて、林の中で動物と出会ったときのように、ただ目だけを見て、この人は自分に敵意を持っているかどうか、そういう匂いだけで生きてきた。生物としての勘というのは、私の中で非常に重要なものなのです。(p86 大庭みな子の言葉)

・先生と言われるのは、あまり好かないわ。(大庭)(p94)

李:踊りとは、言葉が作られる前に人間があみだした意思伝達の手段とか、言葉以前の人間の動きとか、そういうことを聞くたびに、それは違う、と思うのです。それをどう言ったらいいのか分かりませんが、踊りに関して言えば、私は踊りそのものが言葉だと思っているのです。言葉ではない言葉だと思うのです。
大庭:そうですね。言葉ではない言葉。文学も文章ではない、言語になる以前のものです。(略)踊りであろうと、音楽であろうと同じことで、私はそこの部分にしか興味がないのです。(p78-79)

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