水たまりで息をしているのは誰か

久しぶりに短編を読みました。タイトルに惹かれて手に取った作品。帯は「夫が風呂に入らなくなった」気になる~


あらすじ
主人公の都会育ちの夫はある日突然風呂に入らなくなり、悪臭を放ち会社に居られなくなり仕事を辞める。カルキ臭い水道水に触れられないという理由。やがて自然の川で水を浴びるためだけに主人公の育った田舎に移住する。夫婦とはいえ内面に踏み込めない主人公。



傍から見たら常軌を逸しているのは夫の方。だけど薬剤を大量に投入しなければ飲めない水に平気で触れて飲んでいる主人公の感覚の方が狂っているのでしょうか。夫は実は狂った世界の中で正気を取り戻してしまっただけ?それを淡々と受け入れてしまっている主人公も、異様な日常のなかで正気を失わずに生きているだけなのでしょうか。

水の感覚や知っている匂いが蘇るような文章で、さらりとぬるっとしている感じ。水道水よりも川の水、雨。

ここからは私の感覚ですが、ポットで沸かしたお湯より鉄瓶で沸かしたお湯。炊飯器で炊いたお米よりも火と鍋で炊いたお米。というのがこの夫の感覚に近いのかなと感じました。私も水道水はほとんど飲まないので、狂気の入り口は通り過ぎているのかもしれません。

水を沸かして飲むのが当たり前だった井戸水、沸かさずに飲める水道水。そして水道水をそのまま飲まない時代。ミネラルウォーターをはじめ浄水器や水素水など。

狂気は世間に満ちてしまえば常識で、常識から外れればまた狂気だと。

激しい雨が上がって本来存在するべき川から出た水たまりにいる魚のような暮らし。当たり前の暮らしはいつでもちょっとしたことで裏返る可能性がありますね。


私もうつになり、お風呂に入るのが億劫になったことがあります。数日おきにはお風呂に入っていたので迷惑がかかるほどでは無かったと思いますが。。(私の場合仕事はやめていたし、会う人もいなかった)


私の場合はカルキがイヤというより服を脱ぐことや髪を乾かすことがものすごく面倒な感じがしました。感覚が過敏になっていたと言われればそうかもしれません。何にもしたくないんです。エネルギーが足りない感じ。

私はお風呂に浸かること自体は好きだったので、調子が上がってくるとよく一人で銭湯に行っていました。温かいお湯や温泉に浸かっていると色々なものが少しはほぐれるような気がしたからです。

水たまりで息をする感覚を持っている人はどれくらいいるのでしょう。もしかするとそんな人が身近にいる場合の方が多いかもしれません。


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この本を読んだ夜、寒いのもあってお風呂に入るのが面倒で重い腰をあげて浴びたシャワーがカルキ臭く感じて笑ってしまいました。


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