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ショットリスト

**あくまでも私見に過ぎないので、他の意見をお持ちの方もいらっしゃると思います。こんな考え方もあるんだな程度に思ってもらえれば幸いです**

「死霊のはらわた2」を幼稚園に入る前に観て感動し、映像の道を志すことになった津野です。好きな監督は「ゼイリブ」などのジョン・カーペンター監督です。


映像の仕事をやっていると、たまに「ショットリスト」とか「カットリスト」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

僕がはじめて「ショットリスト」という言葉を聞いたのは、ニューヨークの映画学校に通っている頃でした。

「何をどう撮りたいのか?」→「何をどう撮ると成立するのか?」→「何をどう撮らないと成立しないのか?」ということを考えたときに、ショットリストの重要性が出てくるのだと教えられました。これは、日本の映画学校でも基礎で習うことなんだろうと思いますが、こうやってわざわざ書いているのは、いつも仕事をしていて周りの人があまりにもショットリストを使っていないからです。ある時、カメラマンの方に、「ショットリストまで作ってくれて助かりますわ」的なことを言われたのですが、これはイメージの共有のためだけではなく、第一に自分のために作っています。

「絵コンテがあればええやん」と思う方もいらっしゃると思うのですが、少なくとも僕の中で絵コンテというものは、その映像の「流れ」を絵で共有するためのものです。絵コンテを見たときに、ある程度の撮り方など、詳細が描れていることもありますが、「ここで切り返しの画」、「ここでクローズアップ」、「ここは手持ち」、「ここはハイスピード(スロー)」など、細かいところまで絵コンテに落とし込んでいると、特に映画みたいな長尺のものだと大変な分量になってしまいます。また、「絵では自然に繋がっていたのに、映像化してみると繋がらない」なんてことも多々あります。

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↑当時学校では、こんな感じのショットリストを作らされていました。そのカットは「ワイドショットなのか」「手持ちなのか」「どこからどこまでのお芝居をカバーするのか」などなど、詳細も書き込まれています。

なぜ、そんなに大事なのか?

その重要性は、撮影した素材を編集するときに痛感ます。「あーここでクローズアップ撮っておけば良かったな」とか「ここでパンしてしまってるからこっち繋がらなくない?」とか「このショット必要なくない?」とか「そもそもあのショット撮り忘れてない?」とか。。

僕は、映像の仕事を「編集」という分野から始めた人間なので、特に強く思うのかもしれません。優秀な助監督さんやスクリプターの方が現場にいれば、そもそもショットリストなんてなくても現場は成立するとは思います。

でも、監督自身が撮影前に、『頭の中で確実に正確に何をどう撮りたいのか』がハッキリしている場合(ハッキリさせておくのが仕事ですが)は、ショットリストを用意しておく方が良いと思っています。

「現場でカメラマンと相談しながら撮ろう」「だいたいで撮って編集でなんとかしよう」という人もいます。編集でなんとかなってしまうのは、事実ではありますが、やっぱり自分のやりたいことを現場の段階で確実に実現していく方が正攻法だし、それがディレクターとしての責任だと思っています。あと、編集段階で悩まなくて済みますし、現場でテンパりません。現場でテンパると大変です。「あれ。。次はどう撮ればいいんだっけ?」「ここって、ワイドショット必要なのかな?必要ならまた家具の位置を戻さないと。。そんな時間あるのかな。。」みたいな。

脚本、絵コンテも完成し、最後に自分自身への確認も含めショットリストを作成して撮影に挑むと安心感が違います。カメラマンや照明さんと共有するのももちろん大事ですが、時間に余裕のない場合、最悪自分だけでも、編集後の完成映像を想像して、それをショットリストに落とし込んでおくことを、個人的にはオススメします。