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【読書感想】凍りのくじら/辻村深月

[ネタバレを含みます]

いろいろな伏線を散りばめておいて、最後に一気に回収する。辻村さんらしい作品でした。

辻村さんはサイコパスを描くのが本当にうまくて、理帆子の元カレの若尾がストーカーになっていく様子が怖かった。若尾は「鍵のない夢を見る」の雄大とタイプが似ている。辻村さんは私生活でそういう男性と付き合ったことがあるのだろうか…と考えてしまった。

まわりの人にSF(すこし・なんとか)と名づけて、自分から距離を置いてしまう理帆子。そして自分のことは「すこし・不在」だという。父も母も失って本当の孤独になった理帆子はやはり怖かった。ラストは、別所あきら(本当は父だった)のライトに照らされ、理帆子はどこにでも生きていけると励まされる。そして、郁也と一緒にいたいと訴え、まわりの人々のことを本当は好きだったことに気づく。

辻村さんの小説は難しく、私はたぶん辻村さんが表現した全てのことを掴みきれていないと思う。だけど、小説でここまでのドラマティックな表現をできるのは素晴らしいなといつも思う。


◆読了日

2022年9月13日

◆読んだキッカケ

子供たちは夜と遊ぶ、ぼくのメジャースプーンを読んだので、いつか読もうと思っていたから。

◆あらすじ

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。

◆おすすめポイント

人との距離の取り方がわからなくなって、自分の居場所がないように感じてしまう。思春期に経験しがちな心情が多彩に表現された作品。ドラえもんの道具がたくさん出てくるのが面白かった。

◆おすすめ度

3/5


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