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門前の小僧
僕は昔ながらの職人さんが好きだ。オートメーションもAIも関係ない仏頂面の苦々しいオッサンのゴツゴツした手先からまるで似つかわしくない繊細な工芸品が産まれてくるのを見ると興奮する性癖すら持っている。
でも、そんなことを自分の仕事に引き摺り込むことはしない。夢を売る商売であるからして無愛想とか捻り鉢巻とか御法度。おもてなしの心はディズニーランドのキャストさん達をお手本にして「はいもう一瞬で楽しくなっちゃいましたー!」とアゲアゲになって貰えるスイッチを頭の中で毎回Onにする。
本来の自分の性格とはかなりのギャップがあるので直前まで体力を温存してスイッチを入れずに居る。勘の良い方はソッとしておいてくれるが構ってちゃんな方はそうはいかない。どんなにこちらが仏頂面をしていようがお構いなしに視界の中に入ってきて挨拶してくる。以前はこれが苦で仕方なかったが最近は別に何とも思わなくなった。
「営業時間内になったら過剰にサービスしますのでそれまで大人しくお待ちください」
遊園地の門が開いたらそこからはカオス級のエンターテイメント。多重人格と後ろ指刺されようがそんなの関係ねぇ。全身全霊で楽しませて腕が千切れるぐらいバイバイして仕事終了。
ただ、そんな非日常の中に特別なエッセンスは忍ばせることで自分の自尊心は守っている。
「節度と観て学べの姿勢」
エンターテイメントだから何をしても許されるのではなく、常識や規則を普段以上に遵守しなければならない節度を大の大人に今一度説く。
大盤振る舞いのサービスとは裏腹に絶対に説明不可能な要素については自分で気付いた人のみが一体アレはどうなっているのだろう?と困り果てながら試行錯誤しなければならない。或いは分からないなりにも何度も何度もやっているうちに自然に身につく。
正に「門前の小僧、習わぬ経を読む」なのである。
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