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人手不足に悩む職場で、人に定着していただくには②

人はどういうときに辞めたくなるのか

今回は人が「辞めたい」と思ってしまう要因について考えてみたいと思います。

その職場を辞める理由は人それぞれであり、辞める人が本当の退職理由を正直に教えてくれることはほとんどないので断定はできませんが、よく言われるのは以下のような要因かと思います。

・上司との関係がうまくいかない
・休みが取れない、仕事がきつい
・職場の人間関係が悪い
・労働環境が悪い
・待遇が悪い、割に合わない
・仕事が面白くない
・職場の暗黙の文化が合わない ...など

ところが、上記の要因を実際に改善しようとすると現実的にかなりハードルが高く、結局は何も改善されないことがよく見受けられます。

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そうなると、「ウチの職場は元々仕事がキツイし、クセのある人も多い」というような職場は「新しく入った人がすぐ辞めるのは仕方ない」と諦めがちです。

では本当にどうすることもできないのか、できることはないのか考えてみたいと思います。

そこで、退職につながる職場の要因を更に3つに分けてみます。

1.(物理的に)変えられない要因

(例)
・「上司や同僚の性格が嫌」といわれても、相手の性格そのものは変えられない
・「接客の仕事で人と接するのは嫌」といわれても、仕事内容は変えられない

2.変えることはできるが、コスト(金銭的、時間的)がかかる要因

(例)
・「職場が暑すぎて嫌」というなら、費用をかけてエアコンをつけることはできる
・「トイレが汚いから嫌」というなら、費用をかけてトイレを改修することはできる

3.変えることはでき、コストもかからない要因

(例)
・「仕事は面白くない」という場合、仕事の意義を教えてあげることはできる
・「同僚とうまく話せない」という場合、コミュニケーションの接点をつくってあげることはできる

こうしてみると、「1」は確かにどうしようもなく、「2」も難しい場合は多いのですが、「3」はむしろ容易に対応できるのではないかと思います。

そこで、職場で急な退職が続くようなことがあった場合は「3」のように「できるけどやっていないこと」を探してみるとよいでしょう。

具体的な事例を挙げてみたいと思います。

ケース1:人間関係のトラブルが起きやすい職場

この職場では正社員だけではなく、派遣社員やアルバイトのスタッフも働いていた。しかも、慢性的な人不足により、基本的には「来るもの拒まず」の姿勢で採用してきたため、若者からシニアまで幅広い層の人が在籍していた。
ところが、職場内に様々な派閥が出来てしまい、古株は新人に対して過剰に厳しく当たり、若者はシニアを敵視するという問題が起きていた。
そのため、せっかく採用した人が長続きせず、入って1年以内の離職率も高かった。

さて、この職場で何ができて何ができないかと整理してみると、以下のようになります。
1.様々な人はいるが、それぞれの性格、互いの相性は変えられない
2.シフトを別々にすることもできるが、効率がよくない(無駄なコストがかかる)
3.職場内で対立するようなことがあっても、リーダーが中立的な立場で間に入ることはできる

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このことから、人間関係が悪い職場でも次のようなことなら普段からできるはずです。
・他の人に対して不満があればまずはリーダーが聞いてあげる
・互いの意見がぶつかるときはリーダーが仲裁に入る
・職場としての共通のポリシー(これだけはみんな守ろう)をリーダーが示す

もし職場のリーダーは上記のことを一切行わず、人間関係のトラブルを当人同士の問題として放置してしまうと、いくら人を選んで採用してもトラブルは解消されません。
一方で職場のリーダーがきちんとスタッフの間に入り、中立的な立場でコミュニケーションをつなぐ役割を果たせば、相性が悪い人同士でも仕事で連携することはできます。(プライベートで仲良くなる必要はない)

ケース2:顧客からの理不尽な扱い受ける職場

この職場では顧客向けのメンテナンスサービスを担っているため、自分たちの責任ではない苦情に対応する必要があり、場合によっては顧客から理不尽な叱責を受けることがある。
そのため、新しく採用したスタッフは精神的なストレスを抱えてしまい、退職してしまう事態が続いていた。

同じようにこの職場で何ができて何ができないかと整理してみると、以下のようになります。
1.「顧客の苦情を聞く」という仕事内容そのものは変えられない
2.福利厚生を手厚くすることでスタッフのストレスを発散させることはできるが、コストはかかる
3.スタッフの悩みを聴いてあげる、スタッフが気づいていない仕事の面白さを教えることはできる

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このことから、ケース2のような職場でもやはりできることはあります。
職場のリーダーが理不尽な扱いを受けたスタッフの話をちゃんと聴いてあげる、ということができればストレスの軽減につながる可能性はありますが、もし「この仕事は元々そういうものだ」「お客様の苦情ぐらい我慢しなさい」なんて言ってしまうと、スタッフは辞めたくなってしまいます。

以上2つの事例から言えるのは、人が辞めたくなる最大の要因は「すぐにできることをやらない」という点にあると考えられます。

職場の人間関係、仕事内容、待遇といった「簡単に変えられないもの」も確かに辞めたくなる要因ですが、働く方もそれほど期待していないことが多いため、これが致命的な影響を及ぼすことは少ないと思います。

それよりも、本来はできるはずのことを疎かにしてしまうと、働く方も「何でそれぐらいのことも対応してくれないのか?」と疑問に感じ、職場への不信感につながります。

というわけで、以下のようなことが職場でできているかどうか確認してみてもよいかもしれません。

・働く人に対して感謝の気持ちを示す(ありがとうの一言)
・定期的に話を聴く場を設ける(1~2分ぐらいでもよい)
・仕事の意義を教えてあげる(この仕事は誰の役に立っているのか)
・新人を古株に紹介する場を設ける(この人はこんな人ですと紹介する)

あっけないぐらい単純で小さなことかもしれませんが、実はその小さなことを徹底することが人に「辞めたい」と思わせないうえで大変重要だと思います。

今回はここまでにして、次回は「どうすれば働き続けたいと思ってもらえるのか」について考えてみたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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