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無意識の「思い込み」を自覚することで「引き出し」を増やす

前回は人を動かすためには多くの「引き出し」が重要であり、そのためには自分が無意識のうちに捉われているものを自覚し、場合によってはそれを捨てる必要があるという話をしました。

そこで、今回はどうすれば自分が無意識のうちに執着しているものを自覚できるかについて掘り下げてみたいと思います。

ここからは具体的な事例で考えてみたいと思います。

例えば、新しく赴任した部署で会社で決まった方針についてどうしても従おうとせず、あなたに反発してくる部下がいたとします。
前提として、会社の方針は厳しい環境下で生き残るうえで不可欠なものであり、決して理不尽なものではなく、ほとんどの社員も賛同していますが、この部下だけは頑としてやろうとしません。

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あなたはこの部下のことを知らないので、まずはこの部下の言い分を真摯に受け止め、根気強く「なぜこの方針が大切なのか」、「全員が実践することでどんなメリットがあるのか」を説明することにしました。
しかし、それでもこの部下は行動を変えようとしません。

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そうなるとこの部下に行動を変えていただくためには、別の「引き出し」を試すしかありません。そこで、次の1~4までの選択肢があるとします。(他にも考えられますが、便宜上4つにします)

1.「あなたが納得できないのは私の落ち度です、本当に申し訳ない」

2.「あなたの言い分は関係ない、方針に逆らうことは私が許さない」

3.「わかりました、もうあなたの好きにして結構ですよ」

4.「この話は終わりです(以後相手にしない)」

さて、この1~4の「引き出し」を見たとき、どう感じましたか?

もし、1~4の中で、「これはありえない」や「こんな言葉は言いたくない」という選択肢があった場合、そこには何かしらの思い込みが潜んでいる可能性があります。

実は1~4には正解・不正解はなく、どれもこの部下の行動を変える可能性があるものです。というのも、この部下が反抗する理由は様々な可能性があり、理由によって効果のある言葉はまったく異なってきます。

(理由①)今までの上司に対して強い不満を持っており、今回の件とは関係なく怒りをぶつけてきた
⇒1のように、低姿勢になったほうが相手も歩み寄ってくれるかもしれない

(理由②)上司を見下しており、強く出れば自分のわがままを通せると思っている
⇒2のように、上司として毅然とした態度に出たほうが相手も態度を変えるかもしれない

(理由③)本当は方針に納得しているのに、ただ素直に従いたくなかった(天邪鬼のような性格)
⇒3のように、あえて逆のことを言ったほうが相手も実行するかもしれない

(理由④)方針などは実はどうでもよくて、ただ自分の存在をアピールしたかった(駄々っ子のような性格)
⇒4のように、駄々をこねても無駄ということを示したほうが相手も諦めるかもしれない

さて、話を元に戻しますと、1~4の中で「これはありえない」を思った選択肢があった場合、その「引き出し」は使えないということになります。しかし、それは客観的に見て間違っている選択肢というわけではなく、あくまで自分が主観で「ありえない」と思い込んでいるだけです。

一例を挙げるとこんな感じです。

1の選択肢がありえない
⇒「部下に頭をさげてしまうと上司としての威厳がなくなる」と思っている

2の選択肢がありえない
⇒「無理強いをすると余計に嫌われる」と思っている

3の選択肢がありえない
⇒「部下を甘やかす上司になってしまう」と思っている

4の選択肢がありえない
⇒「部下を動かせない無能な上司になってしまう」と思っている

どれも突き詰めると、自分の中での不安(〇〇を失いたくない)や恐れ(●●を避けたい)が根底にあることがわかります。

本来の目的に立ち返ると、ゴールはこの部下が「方針に沿って行動する(行動を変える)」ことになりますので、別に自分がどう思われようと相手が行動を変えてくれればそれでよいはずです。

しかし、自分の中での不安や恐れを自覚することができないと、無意識のうちに「この選択肢はありえない」と思い込んでしまい、自分の「引き出し」を狭めてしまいます。

不安や恐れを自覚するためには

不安や恐れに捉われてしまうと、頭では「よくない」とわかっていてもつい不適切な行動を取ってしまうことがあります。

そこで、過去の自分の行動について後悔した経験を思い出すという方法があります。

具体的には以下のような経験を思い出すとよいでしょう。

・あのとき、〇〇をやっておけばよかった
・あのとき、▲▲をしなければよかった

そのときの自分は何を守りたかったのか、何を避けたかったのか考えることで、無意識のうちに不安に感じていることや恐れていることを自覚することができます。

・あのとき、〇〇をやっておけばよかったのにやらなかったのは、何を失いたくないと思ったからか?
・あのとき、▲▲をしなければよかったのにやってしまったのは、何を恐れていたからか?

ここでのポイントは自分を主語に考えることです。「お客さま」や「会社」を主語にしてしまうと、自分自分の不安や恐れにたどり着きません。

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自分の不安や恐れを自覚できるようになることで、今までなら取れなかった選択が取れるようになります。その結果として、人を動かすうえで新しい「引き出し」が増えることになります。

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ここまでの話はあくまでひとつの考え方ですが、人をどうしてもうまく動かせない、いつも他人に対して同じ失敗を繰り返してしまう、といった場合は活用できるかもしれません。

ご参考になれば大変幸いです。

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