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「REICOの読書日記」No88

4C速読法  65 「ディープラーニング革命」
テレンス・J・セイノフスキー著 監訳:銅谷賢治 2019年


①1.ディープラーニングは機械学習の一分野であり、そのルーツは数学、コンピューター科学、神経科学にある。ディープニューラルネットワークと呼ばれる脳の神経細胞のなす回路を模したネットワークが、赤ちゃんが周囲の世界から学習するのと同じようにデータから学習する。何も知らない状態から始まって、新たな環境の中で目的を満たすために必要な技を徐々に獲得する。このディープラーニングの起源は、1950年代に誕生した人工知能 (AI) にまでさかのぼる。当時、 AI を作る方法については、二つの考え方が競い合っていた。一つは、論理とコンピュータープログラムに基づくもので、数十年にわたり支配的な考え方だった。もう一つがデータから直接学習するという考え方であり、こちらは成熟するまでにずっと長い時間がかかった。ーーーーー
 今日では、コンピューターの処理能力は強大になり、膨大なビッグデータを利用できるようになっている。学習アルゴリズムを用いた問題の解決が、より速く正確で、より効率的になった。しかも、同じ学習アルゴリズムが多種多様な問題の解決に用いられる。つまり問題ごとに違うプログラムを書くよりもずっと少ない労力で済む解決策なのだ。

2.米国は人工知能分野における指導的立場を失いつつある。この本が読まれる頃にはアメリカは他の国に追い抜かれているかもしれない。ーーーーー
 中国では何千人もの機械学習技術者が養成されており同国のブレイン・プロジェクト(中国脳計画)を支える両翼の一つがニューロモーフィックコンピューティングだ。2017年柯潔(かけつ)がアルファ碁に敗れたことは、1957年にアメリカが人工衛星スプートニクの打ち上げで受けたのと同様の衝撃をもって受け止められ、北京は新たに巨額の資金を投入して AI イニシアティブを立ち上げ、意欲的なプロジェクト、スタートアップ、学術研究を支えており、その目標は2030年までにこの分野で世界の覇権を握ることだ。膨大な医療データや個人情報が収集され、西欧の民主主義諸国よりもプライバシーに関する意識がはるかに低い中国は、個人情報を他からのアクセスできないように囲っている西欧諸国を尻目に、この分野で躍進するポテンシャルがある。また中国は農業や製造業もデータ収集の対象としている。最も多くのデータを持つ者が勝者である。つまり中国に有利な状況なのだ。

3.知能は、多くの種においてそれぞれの生存環境での生き残りをかけて、そこで直面した問題を解決するために進化した。ー--
 人間の場合は、視覚によって周囲の世界を知覚できるので、視覚的信号を読み取る読み取るための視覚的知能を発達させた。ー--
 コウモリは「エコロケーション(反響定位)」(音響信号を発して、周囲の状態を探り、その反響音を解析する)によって外界を認識している。
 ある学者は、人間はエコロケーションを直接に経験できないので、コウモリの世界がどのようなものであるかは想像もできないと結論した。しかし私たちはそのような経験がなくても、レーダーやソナーなど、目に見えない世界を能動的に探るテクノロジーの発明を続けたし、視覚障害者は音の反射への感受性を高めて環境の中を移動している。私たちはコウモリであるとはどのようなことかわからないかもしれないが、コウモリのような知能を開発して、それを自動運転車に応用して、レーザーや光レーダーを走行に役立てることができる。
 私たち人間は、自然の中でもトップレベルの学習者で、一生のうちに学べる内容を増やすために、「教育」というテクノロジーを作り上げた。人間の発明の中でも比較的最近のものである読み書きをマスターするには何年もかかるが、これらの発明を使って、本が書かれ、印刷され、それが読まれることで口伝よりもより多くの知識を蓄積し、次世代に受け継ぐことが可能となった。現在文明を可能にしたのは、話し言葉でなく、読み・書き・学習なのだ。

③正直のところ大部分はよくわからなかったが、 ディープラーニングについて、人間の脳の仕組みが元になっているということが少しわかって、人工知能の分野において、中国の躍進は脅威だと感じた。
 そして、人間が人間であるには、やはり「学習」が大切なんだなと思ったので、いくつになっても学習を続けていきたいと思った。
 (それにしても、この本が書かれてからすでに3年が経っているが 、AI はどこまで進化したのだろうか。)

➃「2011年、大規模公開オンライン講座 MOOCが飛躍的に拡大し、『ニューヨークタイムズ紙』がスタンフォード大学の人工知能に関するオンライン講義の人気の高さを取り上げて知名度が上がった。MOOCを受講した学生数の多さと、インターネットを介することによる前例のない広がりが世界の注目を集めた。まるで一夜にしていくつもの新しい企業が設立され、世界最高の教育者によるオンライン事業の開発と無料配信とが行われるようになった。インターネット接続さえあれば、いつでも、どこからでも、オンデマンドで受講できる。講座には講義だけでなく、練習問題や試験、受講生が質問できるフォーラム、授業助手も含まれており、受講者が地元で集まって事業内容についてざっくばらんに議論できるような「オフ会」も自発的に生じた。MOOCの受講者数は急激に増えて、2015年には約1700万人から3500万人へと倍増した。」

「Learning How to learn 」(学び方を学ぶ)の講座は、筆者がバーバラ・オークリーを招いて高校生や教師向けにしてもらった講義を基礎に組み立てられたMOOCの講座である。この講座は、「脳がどのように学習するのか」という筆者等の知識に基づいて、より良い学習者となるために必要なツールを与える講義である。

「『学び方を学ぶ』では、よりよい学習者になる方法、試験への不安の対処方法、先送りを回避する方法についての実践的なアドバイスが得られ、さらに脳がどのように学習するのかも学べる。この無料の一か月のコースは、5分から10分のビデオ、練習問題やテストが含まれており、20ヶ国語以上に翻訳されている。」


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