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桃栗三年柿八年待った末の果物達の運命は、意外と残酷だった。

さるかに合戦で投げられた柿を労るはずが
より残酷な焼き柿にしてしまった日

桃栗三年柿八年。
誰しもが1度は聞いたことがあることでしょう。

『人は簡単には一人前になれんゾ‼️長い年月をかけて精進セヨ‼️』

桃と栗の木が身を結ぶまでには3年、柿であれば最低でも8年かかる。そんな植物界の宿命を引き合いに出すことで人間に世間の厳しさを知らしめようとしております。

ですが、よく考えてみて欲しいのです。
1人前になった植物達の運命とやらを。
1人前になったとて、植物を待ち構えている現実がぞれ以前の『修行期間』に当たる部分と比べてたやすいものか。そもそも楽しいものなのか。ということに。

とりあえず、ことわざの通り、桃と栗と柿を庭に植えるとしましょう。植えた事実すら忘れそうになって8年が経過した頃、ようやく全員の実が顔を出します。

植えてからの数え年は、全員8歳。
ですが、実がなってからの年齢は

桃5歳。
栗5歳。
柿0歳。

幼稚園児と新生児。いや、幼稚園実と新生実ですね。ことわざを作ったどこぞの誰かはこの時を1人前としました。そして彼らが迎える運命はというと。

まずは桃。

木から離れた幼稚園実は、なぜか川に流されます。川といっても青梅の清流じゃあ、ありません。おばあさんが洗濯をしに来るような。少々家庭用排水感がある川です。

そして、爺さんのお土産にというお婆さんの自己中な理由によって川から掬い上げられ。綺麗になったかも分からぬ洗濯物と共にたらいに入れられます。

たらいタイムを終えて、やっと自宅に帰った矢先に知らされた、自分の実の中に何故か男児が眠っていたという現実。

1人前デビューとあって、自分が主人公の物語ができると思いきや。自分の中に勝手に住まわれていた男児に主役の座を奪われる。しかも名前だけ勝手に拝借される。

引用:いらすとや

恐ろしい。あまりにも恐ろしいです。

学校の先生として1人前デビューをしたその日。
何故か教育実習生が来て、授業の座を奪われる。
しかも、勝手に担任を名乗られる。例えるならばそんな感じです。

お次は栗。

少しだけ日本昔ばなしに登場します。
超怪力男児:金太郎と動物による物語です。
金太郎は何故か言葉を発する動物によって、

『栗拾い』

を持ちかけられました。自分たちが食べたいものを、金太郎を誘うことで簡単にありつこうとする動物たちの傲慢さが伺えます。とりあえず、金太郎とその他ご一行は栗拾いに出かけます。

しかし、崖にかかっていた橋が何故か消滅。
怪力男が木を切り倒すことで無事栗にありつけるという類の話です。ここまではほっこりエピです。

引用:いらすとや

幼稚園実の栗的にも、結構ありがたいゆるめな1人前デビューでしょう。飲食バイト初日に、コップの水拭きだけするような感じです。ですが問題はその後。猛獣:熊の登場によって平和な栗拾いはさっさと撤収。もはや栗の登場シーンは無くなります。

つまり。バイトという社会に向けた1人前デビューをコップの水拭きからゆっくり始めたと思いきや。

『明日から来なくていいよ』

そう告げられるようなものです。
恐ろしい。恐ろしすぎますって。

そして最後は柿。

桃や栗よりも時間をかけて育ってきました。
桃と栗が幼稚園実でも、柿はもはや新生児ならぬ新生実です。

そんな栗が登場するのは猿とカニが醜い合戦を繰り広げるあの物語。

引用:いらすとや

猿がカニに柿の種とおにぎりの交換を申し出るところから始まります。新生実どころか、種子の段階から登場します。おやおや、1人前じゃなくてもすんなり世間にデビューしてるイージーモードじゃ〜ん。

そう思ったのも束の間。柿は、猿がカニに投げつける実として活用されます。カニだって痛いけれど、柿だって相当痛かったはず。しかも“あおくてかたいかき”投げたというものですから、新生実の中でもまだまだ未熟者。

あまりに苦い1人前デビューです。

例えるならば、プロレスのデビュー戦でリングの外どころか会場の外までぶん投げられる。そんなイメージです。

恐ろしい。あまりにも恐ろしいです。

主役の座を奪われる桃。
あまりにも出番のない栗。
投げつける対象となる柿。

8年経ったところで迎えた現実といえば
あまりにも恐ろしい1人前デビューです。

桃栗三年柿八年。
人生は時間をかけて1人前になるのだぞ。
本当にそうでしょうか?
人生ハードモード過ぎやしませんか?

そんな情けが芽生えたれいちゃん。
先日和歌山のひらたね柿を、いただきました。

種はありません。かと言って柿太郎もいません。
1個ではありません。8個いただいたのですぐに出番が終わることもないでしょう。
投げつけることもしません。果物を愛するれいちゃんですから。

しかし。

そのまま食べればいいものを、
さらに美味しいものを食べたい、そんな私利私欲のために動くれいちゃんの手中に収まってしまった柿。

あぁ無情。

焼きました。焼く、です。
切り込みを入れてオーブンで焼きました。

投げるよりも数倍残酷かもしれません。ですが、オーブンから焦燥感漂う顔つきで出てきた柿はなんともいえずトロントロンで甘かったです。ごめんね。

だけれど、美味しい形となって
れいちゃんの心とお腹を満たしてくれた柿は
もう十分一人前なのでした。

#何様
#だよ

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