見出し画像

僕のあだ名が「ビブリオ」だった頃の話。

【#122】20211027


人生は物語。
どうも横山黎です。


作家を目指す大学生が思ったこと、考えたことを物語っていきます。是非、最後まで読んでいってください。


毎月30日は、僕のすっっごく個人的な日記を書いています。
今月は、僕の高校時代のことを振り返りながら、つらつらと書いていきます。興味のある方だけ、読んでいただければと思います。


今日は「僕のあだ名が『ビブリオ』だった頃の話」というテーマで話していこうと思います。



☆僕はあの頃「ビブリオ」と呼ばれていた。


よく、ニックネームなんですか?とか、何て呼べばいいですか?とか、初対面の人から聞かれることがあります。普通に面白みのない呼び名を提案していたんですが、そういえば、僕には奇妙なニックネームで呼ばれていたことがあったことを、ふと思い出しました。


その名も「ビブリオ」。

その心は、僕が高校二年生のとき、全国書評合戦ビブリオバトル高校生大会の東京都代表として全国大会に出場したからです。


300校くらいの学校が参加した東京都予選の頂点に輝いたことは、今でも忘れられない思い出です。翌日の新聞なんかに載っちゃったりして、ウハウハしていました(笑)


運が良かったことも勝因の一つだとは思いますが、それはさておき、あのときは一応、戦略的に勝ちに行ったので、それについて共有していこうと思います。


実は以前に「ビブリオバトルの勝ち方」という記事を書きましたが、今回はそれの補足説明をする回でもあります。結構長くなっちゃいますが、お付き合いください。





☆初めての予選で負けて学んだこと


僕は初めて出場して、なんやかんやうまくいって、東京都代表になれたわけではありません。実は、高校一年のときにも出場していました。

僕が相棒にした本は、ダニエル・キイスさんの「アルジャーノンに花束を」。知的障がいの主人公が、手術を受けて、超優秀になっちゃうんだけど、徐々におかしくなっていっちゃうっていう物語です。誰もが知る不朽の名作を手に、推敲を重ねた原稿を何度も読み込んで、暗記して、本番に臨みました。


結果は、一回戦敗退。

たしか、一票差で負けたはずです。


自分はちゃんと原稿をつくって、練習を重ねて、できるだけのことはやったはずだ!
そう思っていたので、大会が終わってから、不貞腐れていたと思います。

しかし、何もかも僕が間違えていました。



ビブリオバトルは、「一番読みたくなった本に一票を入れる」ゲームです。
つまり、オーディエンスに「読みたい!」って思わせることが最優先で、「原稿をつくる」「原稿を暗記する」「良いプレゼンをする」ことは、二の次、三の次なんです。

それを踏まえた上で、『アルジャーノンに花束を』を選出したことについて再考してみました。


ドラマ化も映画化もされましたし、読書好きなら誰もが知るような不朽の名作、殿堂入りの一冊です。オーディエンスの中には、既に話の内容を知っていたという方も多かったんじゃないか、僕はそう振り返りました。読んだことはなかったけど、あらすじくらいは知ってる人も含めれば、かなり高い割合だったと思います。


だから、そんな本を選んじゃだめだったんです。
だって、「オーディエンスが既に読んだことのある本」を「読みたい!」と思わせることはハードルが高いからです。もはや無理ゲーです。どんなに頑張っても、「いや、読んだことあるし」で一蹴されちゃいます。


つまり、ビブリオで勝ちたいなら、「オーディエンスが読んだことのない本」を選ぶ必要があるわけです。


さらにさらに。


これは、担当してくださった教師がおっしゃっていたんですが、「ビブリオバトルは本選びで八割決まる」ってことです。もっとかみくだくと、「本そのものに魅力があれば、勝負を有利に進めやすい」ということです。


だったら、高校二年でリベンジするときは、本からこだわり抜くところから始めようと考えていました。


☆東京で1番になれた日


まず、七月くらいに校内選考がありました。僕の高校では、一、二年生含めて、10人以上の参加者がいたので、そこから5人選ぶ必要がありました。なんとか、その5人に入ることができたんですが、僕にはちょっと迷いがありました。


校内選考を通過したときに紹介した本は、益田ミリさんの『言えないコトバ』。日常会話に潜む言葉の不思議や疑問をイラスト付きでまとめためちゃくちゃ面白い本で、是非読んでほしいんですけど、大きな手応えは感じることができていなかったんですね。


その証拠に、校内選考を1位通過しなかったわけだし。

本に圧倒的な魅力が備わっていなければ、途中で敗れてしまう、そんな風に感じていました。公式戦に向けて、本を変えて挑もうか本気で悩んでいた頃、僕の親友から一冊の本を紹介されます。



それが、氏田雄介さんの「54字の物語」という本でした。



なんと、この本に収録されている作品、全て、54字でできているんです!


今となっては、シリーズ化されて、結構話題になったのでご存知の方も多いのではないでしょうか。僕が紹介したのは、54字の物語の一冊目が出版されて一年が経っていない頃で、一部の界隈では話題になっていたって感じだったと思います。


僕は、この本と出逢った瞬間、「これだ!」って思いました。いわゆる一目惚れっていうやつです。だって、54字でできているなんてきいたら、読みたくなるに決まってるじゃないですか!


54字ってわかります?すっごい短いんですよ?Twitterの投稿は140字ですから、その半分以下。そんな字数制限が課せられて、どんな物語が綴れるんだ!?って気になるじゃないですか。



まあ、そんなかんじで、人がうだうだ喋らずとも、その本自体にすごく魅力のある本を選べば、ビブリオに勝ったも同然なのです。素材が良いので、あとは最低限の調理をするだけってことです。

運命的な出逢いを果たし、僕は原稿を作り込みました。最高の素材を最高の料理にして、お客さんに届けるために、何度も書き直し、何度も練習をしました。


いざ本番。校内選考で敗れた仲間たちだけでなく、高校一年のときに担任だった僕の恩師も観戦に来てくれました。やれるだけのことはやったので、あとは自分を信じるだけです。

そんな風にして、ビブリオバトルに臨んだわけですが、明らかな手応えがありました。「あれ、これいけるね~」ってやりながら思っていました。何度も練習を重ねていますから、五分ぴったりで終わらせられたり、よどみなくすらすらと語れたり、いろいろ手ごたえを感じる場面はありましたが、ビブリオバトルにおいて、一番それを感じるのは、発表後の質問タイム

バトラーの発表を聞いて、疑問に思ったことや気になったことを、他のバトラー含めオーディエンスから募る時間があるんですが、そのときにこそ、手応えを感じる瞬間があると僕は思います。



良い発表には、たくさんの質問が生まれます。
良い本にも、たくさんの質問が生まれます。



良い発表や良い本には、自然と興味が沸くので、もっと知りたいと思えるわけです。それが、「読みたい」という欲求に直結していることは言うまでもありませんよね。


僕のいるグループで一番質問が来たのは、僕の本でした。
実は、先ほども言った通り、校内選考で負けてしまった人たちも応援に駆けつけてくれているので、彼らに「もし質問が出なかったら、この質問お願いしていい?」みたいな感じで、サクラを仕込んでいたんですが、そのサクラの役目がなくなるくらい、様々な質問が飛んできたんですね。


結果、僕は、晴れて東京都代表という栄誉ある地位を勝ち取ることができました。


東京都大会の決勝で、名前を呼ばれたときの興奮はすぐに思い出せます。これまでやってきたことが間違いじゃなかったと報われた瞬間でした。



☆その年のチャンピオンから学んだこと


見事一位通過を果たし、東京都代表となった僕は、新聞の取材を受けたり、あちらこちらで写真を撮られたり、校舎に僕の名前が刻まれた横断幕が垂らされたり、大きん反響を受けました。ついにはクラスメイトから「ビブリオ」と呼ばれることになりました。


僕は新しい「自分らしさ」が増えたことを素直に喜びました。



しかし、行くところまでは行ってやる!とさらなる高見を目指し、僕は全国大会も勝ちきるために、原稿の推敲と、プレゼンの質の向上に努めました。担当の教師と何度も準備を重ね、他のクラスの子にも聴いてもらったり、やれるだけのことはやりました。



そんな風にして、本番を迎えたわけですが、やはり日本全国となると強者揃いで、僕はあっけなく一回戦敗退という散々な結果となりました。

もちろん自分が100%のパフォーマンスをすることが叶わなかったことも理由の一つです。何故か、本番当日だけ、心なしか早口になってしまい、変に時間を余らせてしまったんですよね。したがって、終わり方が残念な形になりました。最近のなかでは一番出来の悪いプレゼンだったとその当時思いました。全国大会という舞台に、少なからず緊張していたのかもしれません。



一回戦敗退となりましたが、ビブリオバトルはその後も続くので、僕はオーディエンスとして学びながら楽しませてもらいました。


もうね、決勝大会は本当にレベルが高かったです!
本選びももちろん素晴らしかったし、語り方、伝え方も抜群に上手な方たちばかりでした。

そんな激戦を勝ち切ったのは、スポーツ系の男子。紹介した本は、深川黎一さんの「最後のトリック」という本。「読者が犯人」という奇抜なトリックが売りのミステリーで、僕は書名を耳にした瞬間に「やられたな」って思っちゃいました。


読者が犯人ってどゆこと?って気になって、ついつい読みたくなっちゃいますよね?まさにビブリオバトルに向いている本だと思います。


それに加え!

そのプレゼンターは圧倒的エンターテイナーで、オーディエンスの反応に触れたり、場の空気を大切にした最高の発表を繰り広げました。圧巻でした。多分、原稿を作っていなかったんじゃないかなと思います。そのときに心から湧き出る思いを、そのまま口にしていた感じでした。


そこで僕は気付いたんですね。


これが本当のビブリオバトルじゃん。


僕はがちがちに原稿を作り上げて、プレゼンを仕上げていきました。もちろんそれが悪いことではありませんが、本来ビブリオバトルとはもっとカジュアルなもの。楽しみながら、おすすめの本を紹介し合うイベント。

チャンプ本を紹介した彼からは、勝ちたい!という欲求よりも、読ませたい!おすすめしたい!という情熱が伝わってきたんです。

この人、本当におすすめしたいんだなあってことが十二分に伝わってきた発表でした。

好きな本をおすすめするのに、原稿なんていらないんですよね。溢れるほどの思いをそのままぶつければいいんですよね。口下手でも言葉足らずでも、愛情は伝わるものです。

僕は勝ちにこだわりすぎて、楽しむことを後回しにしていた気がします。それが、大会を通して一番反省したことでした。




最後に、これまでのことをまとめますね。
僕が二年間のビブリオバトルへの挑戦で学んだことは、

1、ビブリオ向きの本で挑んだ方が良い。
2、良い発表には質問が多く生まれる。
3、楽しむことを最優先。



いろんなことを教えてくれるビブリオバトル。
公式戦に参加するのも良し。
読書好きの友達と企画するのも良し。
是非、みなさんも楽しんでみてください。


☆お知らせ


最後にお知らせします。

僕が書いた小説『メッセージ』についてです。一言でいえばダイイングメッセージの話なんですが、以前から僕は、

「なんで死の間際に犯人の名前を書くんだろう?」
「もっと伝えるべきメッセージがあるよね?」

という疑問を持っていました。この作品はそんな疑問と真正面から向き合ったものです。僕がどんな答えを出したのか、興味を持たれた方は、下の記事からチャックしてみてください。



最後まで読んで下さりありがとうございました。
横山黎でした。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?