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書籍「クリエイティビティ」のまとめ

書籍:「クリエイティビティ」の中のまとめをさらに要約

クリエイティビティという本は、「フロー体験」という言葉を生み出したことで有名なチクセントミハイ博士が書いた、人の「創造性」についての本です。自分の創造性をどうやったら開花させるられるか?どうやったら社会の荒波から守れるか?、また他者が創造性を発揮する支援にはどんなことができうるか?そんな問いを考えながら、この本を読んでみました。今回は、この本のまとめが書かれている章から、さらに自分なりに要約して、全11の項目にまとめ、この本の骨子が分かるようにしましたので、お楽しみください。


1.世間の常識はまちがっている?

本書の重要なメッセージ

個人の能力単体より個人がどのような環境にいるか?は思ったより大事。
突然のひらめきではなく長年の継続的なトライの末に創造的な成果が得られる。

世間の常識

A 創造的な成果は1人の人間の思考から生まれる
B 人の創造性を上げるには、そういう誘導を加えるべし(能力開発)
C Creativity は突然のひらめきで生まれる

↓ 実際は、、、
本書の主張

A 創造的な成果は社会的な相互作用から生まれる。(集合的なもの)
B 人の創造性を上げるには、周囲の環境を変えた方が良い。
C 長年の努力の結果、Creativeなものが生まれる。


2.創造性を語ることの重要性


 ①「人間らしさ」の大半は創造性によって生み出されている。

チンパンジーと98%同じ遺伝子。チンパンジーと人類の違いは、言語、価値観、芸術、科学、技術など。これらはすべて人間の「創造性」によって生まれている。創造性について語ることは、何が人を人たらしめているか?を語るに等しい。

 ② Creativeなモードのとき、充実した生を実感できる。
消費的/享楽的な趣味で得られる人生の一瞬の豊かさを、Creativeなモードなら、長期的・持続的に得られる。


3.創造のプロセスの具体的なイメージ

科学者・芸術家・実業家などの中でも極めて優れた成果を挙げた人91名を調査した。本書では小さな創造性・日常での創造性を理解するためにも、歴史に刻まれるような大きな「創造性」の理解を目指した。そうした調査の中で得た、創造的な成果を挙げるまでに、人はどのような人生を送るか?についての簡単な流れの説明がある。

Step①長年の努力、疑念、困惑
科学者なら理論を証明することや芸術家・実業家なら名声を博することへの”意図”をどこかで放棄する。 =自分が行う行為そのものへの充足感を感じる結果、ある領域での学習にしがみ続けられる。
そして環境変化によって自分に有利な環境の変化が来たとき、長く続けている人はその果実を受けとれる。

Step②新たな”知”が突然に表れる。 (高揚状態)

Step③成功 (社会的にその成果が認められれば、その創造的な成果が”成功”として認められる。)

つまり、大抵の創造的な人は、成果への願望を手放し、自分が好きでその行為をひたすら行い続けている状態となっている。そして長く続けるからこそ、成果も積みあがるし、自分の領域での環境の変化が自分に有利に働く瞬間が来る。


4.創造性を学ぶことが、人類の未来を左右する。

人類の力が地球規模に及ぶようになってきた。
人類は徐々に進化の頂点となる存在へと昇りつめ、地球への影響力が高い存在となってきた。
2つの道:慈悲の道 と 激しい怒りの道 の間の不安定なバランスの中に 宇宙 はある。この地球が、すばらしい楽園になるか?それとも広がる砂漠(地球の崩壊)になるか?は人類がどちらの道を歩むかによる。

→古代の神々、シヴァやエホバは、慈悲と怒りの両面をもった存在として描かれてきた。

この新しいフェーズの行く末は、予見はできないが人間の「創造性」に密接に結びつけていることは分かる。 (とくに昨今の) 人間社会は「創造」をやめない巨大な人物像として表現できるほど、大量の「創造」行為を繰り返している。
その絶え間無い創造の先に待つのは、楽園か、荒廃か。
Creativityのプロセスの解明によって、創造の”質”を選択することができ、慈悲の道か怒りの道か、人類の選択に重大な意味を与えうる。


5.創造のプロセスの簡単な結論

著者は30年にわたる Creativeな人々を調査してきた。そして Creativeなプロセスを解明しようとした。

Creativeかどうか?を1個人の主観で判断していたら、全員創造的な人間になりうる。その中で、本当に突出してCreativeなものはやはり創造的な成果に対する「観測者」がいて始めて判断される。=つまり1人の人間だけを取り出してCreativityを評価・判断することはできないという立場をチクセントミハイはとる。

創造のプロセスの図解(主に右の図)

Creativeなアイデア・成果、発見 outcome


個人が生んだ斬新な成果を、
「フィールド」とチクセントミハイが称する専門家集団が評価する。
そして、1個人が生んだ斬新な成果が、「ドメイン(領域)」とチクセントミハイが名付ける【専門領域の知識体系】に新しい変化として導入され定着する。

〇他の専門家からの批評や支援
〇数百年レベルの知へのアクセス
○最新設備へのアクセス
これら環境要因が創造的な成果へ寄与したことは偶然とは思えない。(これら無しになしとげられた成功をイメージできない)。 これらは【創造のプロセス】の重要な構成要素。

→本書では、個人のみならず・ドメイン(専門領域の知識体系)やフィールド(専門家集団)に対しても等しく注意を向けている。

→アインシュタインやエジソンですら、ドメインやフィールドとは無縁じゃなかった。それ以前の知識の蓄積や社会的ネットワーク無しに彼らの新しい発見はありえなかったし、それを広げた人々・社会の仕組みが無ければ、文化的進化に寄与したとして評価されることはなかった。=1個人を「ヒーロー」として単純化しない方が良い。


6.人類の創造性の進化は、生物学的な「進化」に似ている。

○ Creantityの進化=生物学的(遺伝的)進化と類似形である「文化的進化」

文化的進化において、アイデアや発明(遺伝情報)は自動的に遺伝として生得的にはうけつかれがれない。 →これらの情報・知識・技術は生きている間に「ミーム」として人に学習され、その学習を次の世代にも伝達することで、文化は生存し、うけつがれていく。

*ミームとは?・・・習性・技能・物語と言った情報のまとまり。リチャード・ドーキンスがつくった概念で、その情報のまとまりが”複製”されていくことを特徴とする。
人々はミームを保存することで人類の文化的進化を進めてきた。ドーキンスは、Gene(ジーン)=遺伝子と語感的に近しいワードにしたくて、Meme(ミーム)という言葉をつくった。(mim は「模倣」、eme は「…素」を意味する。memory「記憶」やフランス語の même [mɛːm]「同じ」と結びつけて考えることもできるとドーキンスは述べる。「模倣される記憶」とも言って良いかもしれない。)

→ストットの感想:教育の意義がここにありそう。ミーム継承はやはり大きな意味をもつ。教育の果たすミームへの影響には莫大なものがありそうだ。また、ミームという概念のことを考えると、質の高い【共通言語】を生み出し人々と共有することは、とても大きな意味を持ちうるのでは無いか?と考えさせられる。(その場所の文化圏だけでも”ミーム”を変えるから)。

われわれは共通の思考的土台となる【共通言語】という思考的プロダクトを過小評価しているかもしれない。

Creative な人の成果(Outcome) →ミームを変えることにその特徴がある!とチクセントミハイは考える。
さらに、そのミームへの変更を十分な数の正当な専門家が認めていくと、「文化」として正式に定着していく。


7.本書のCreativity = ドメインに変化をもたらすプロセス

必要な行動

〇ミーム習得:ドメインへの変化は自動的に起こるというよりも、個人(or集団)がそれなりの代価を払わなければおきない。伝統(ここまでの常識)を変えるには、膨大な情報量のミームを一度学習し、習得しなければならない。

○限られた注意というリソースを有効に活用する:注意(Attention)は、ただでさえ非常に限られた資源な上に、生活、仕事に使われる時間をさし引いた人生のわずかな時間の中で、さらに記号体系の領域(ex, 物理学や音楽)に費やせるほどの集中力をもたらす量となると、ほんの少ししか残らない。注意は非常に貴重な資源である。
→この最終的にドメインでの学習に使える、剰余の注意(Atention)(心理的エネルギー)を意識的に使うことが重要になる。

〇創造性を尊重する場所にいる:創造性を尊重する場所は重要だ。 柔軟で新しいこと、実験学習、異文化の交流を促す場は創造性の爆心地となる。古代ギリシャ、15世紀のフィレンツェ、十九世紀のパリ) =新しいアイデアに寛容な場(新しいアイデアが、コミュニケーションの努力することなく他者に理解される場)で創造性は生まれる可能性が高い。(筆者はここでも個人の創造性を環境との相互作用的にとらえている。)


8.複雑化する現代

→・文化的進化の(ある意味必然の)結果として、各ドメインがますます複雑化し、スーパージェネラリスト(レオナルドダヴィンチのようなあらゆるドメインに詳しい人)になることが難しくなってしまった。 各領域で、各専門家がその場におけるリーダーポジションを引き継いでゆく。

・ただしこれは文化の分裂状態に容易に陥る。 普通に進めば分裂状態になる。しかし、意識的に”スーパージェネラリスト学”でも生み出せれば、反転させられることはあるかもしれない。 ・一個人の単位で見ると、1つのドメインの専門家として最前線をキャッチアップし続ける深みをもった存在になることはほとんどマストな条件と言えるが、越境的な学習をする人が新しい発見をもたらすことも事実(→創造性がもつ1つの一般的な特徴)


9.Creativeな人への偏見と、実体

・Creativeな人は傲慢・自己中心的・無慈悲・風変わりと見られてしまう。 しかしそれは、そういう「見られ方」が世間的に成されているだけ。
Creativeな人が持つ最も避けがたい矛盾。以下の偏見を持たれること。

偏見は、、、

・1つのことにひたむき、専門に特化している
・利己的

実際の傾向は、、、

・隣接領域を多数学ぶことを好む
・原則としては、思いやりのある感受性豊かな人                  

・創造的な人は1つの領域に注意(Attention)を大量に向けて学習する必要を痛感しているため、その行動の結果”利己的”に見られる可能性がある。創造的な人が勘違いされていることは不遇だ。


10.創造性について積極的に学ぶメリット

創造性を学ぶことで、
①文化がより無かになり、間接的に社会がよくなる
②私たち個人個人がより Creativeになれる。

創造性を学ぶことは「無用な贅沢」か?

反論① 切実な社会問題に対する実行可能な解決策は、創造性を発揮する。(大な注意を向け続けて学習していく) ことで見つかる

反論 ② 問題に目を向けるだけでなく、より豊かで充実した人生という「積極的な未来像」も良い人生を送るために必要。=これは病理分析の心理学の逆側に位置する研究。「健全でイキイキとした人間像」


11.人間の性質から考えて、創造性は意図的に奨励した方が良い

自己保存・生存を求める保守本能 ↔  新しいものを楽しむ革新好きの探求本能(創造性はこちらに属する)

保守本能は外部からの奨励は無くとも発動する。
探求本能は、外部からの奨励が無いと発動しない。外部からの奨励(=好奇心を刺激する機会の提供など)が必要。
外部からの奨励が無いと、保守本能ばかりが発動して、探求本能は衰えていく
→リスクを負うことや、探求すること を妨げる障害物が多いため、探求本能が衰えやすい社会になっている。
つまり「創造性」は、私たちが積極的に注意を向けるべき、考える優先度の高い事柄である。

しかし… 我々の今日の世界では、独創性・創造性は奨励されていない。実利や短期的な成果を求めることが奨励されている。
科学・・・実用的な研究重視
芸術・・・マーケットでの証明
経済・・新規性ではなく効率化
教育・・・基礎科目に集中し、「有能であること」を求める。

最後までお読みいただきありがとうございます。もし何か響くものがあったり応援したいと思っていただけたらサポートいただけると嬉しいです!