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ドローインを深ぼる!!

□はじめに

 よく臨床で用いられるエクササイズで”ドローイン”があります.
 皆さんも臨床でよく処方しませんか?
 ドローインは低負荷でかつ運動機能の改善のためのエクササイズの第一歩として有効であると思います!
 しかし,中には実際にドローインの効果であったり,やり方をそれっぽくは理解しているけど,「有名な講師がやっていたから」「よく教科書で見るから」実践している人が多い気がします.
 そんな方に向けて,今回はドローインの目的,効果,やり方などに分けて紹介していきたいと思います!

□ドローインとは?

 ドローインとは,「腹部の引き込みを意識して,腹横筋を単独収縮させる運動」として理解されていると思います.
 ドローインは,臥位レベルで実施でき,比較的低負荷で実施できるので高齢者にも適応できるエクササイズになります.
 また,ドローインは脊柱を安定化させる方法として知られています.

 ドローイン(draw-in)は英文献などではhollowing(ホローイン)と表記されていることがあります.直訳すると「引き込む」になります. 
 
 そのため、腹腔の体積は減少します.すると腹圧が高まり,体幹部が安定するとされています.

ドローイン

この辺りは皆さんも漠然と理解しているところかな?と思います!
でも実際のところ効果はどうなんでしょうか?

□ドローインの効果は?

 ドローインの効果はたくさん研究されています.
 今回はその中から特に臨床にも活きるようなものをピックアップして紹介していきます!
 まず,先ほども説明した通り,ドローインは体幹部を安定化させるエクササイズとして有名です!
 体幹と言っても,腹横筋や内腹斜筋,外腹斜筋,腹直筋などがありますが,特に腹横筋内腹斜筋の筋力強化に有効であるとされています.1)
 また,ドローインも最大まで実施することでより内腹斜筋の活動が高まります.2)
 しかし,ドローインの効果を数値化することは難しいため,臨床では効果検証をして,効果を確認する必要があります.

 例えば,腰痛のある患者で,脊柱起立筋が過活動になっており,体幹深部筋(腹横筋,内腹斜筋)の機能不全が原因だとアセスメント立てた患者さんにドローインを実施します.実施後,疼痛が減弱したり,寛解した場合は,ドローインによって腹横筋や内腹斜筋が促通され疼痛改善に寄与したと考えられます.
 このように,ドローインによる効果は数値化できないため,どうしても再評価が必要になります.また,他にもドローインを実施後,臀筋の出力が変化することもよくあります.

 ただ目的が,長期的な効果を求めるためにドローインを実施する際は即時効果を重視しないので考え方が変わります.
 
 しかし,「ドローインって長期効果あるの??」と思う方もいるかもしれません.
 ある研究で,9名の腰痛患者に毎日2回,4週間ドローインエクササイズを実施してもらい,上肢の主動作筋である三角筋に対する体幹筋の活性化の開始タイミングをみ時に,体幹部の活性化が見られました.さらにその効果は6ヶ月立っても維持されていたと報告されています.3)

つまり,ドローインの効果はある程度継続することで長期的な効果も得られ,機能改善に有効であることがわかります.
仮に,リハビリを卒業になった患者さんにもドローインを継続するように促すことで予防ができるかもしれないですね!!!

□意外と大事なドローインのキューイング!

 ドローインを実施する時によく聞かれる質問として,
 「どうしても腹直筋に力が入りやすい患者さんがいるのですが,どうすれば腹直筋の活動を抑制できますか?」
 この時のポイントはポイントは口頭指示の仕方です! 
 「腹部を凹ませるようにしましょう!」と指示を出すとどうしても力んでお腹をへこませようとしてしまい,結果的にアウター優位の筋活動になってしまいます.
 こういっときは口頭指示を少し工夫するだけで改善が図れることがあります!
 
 そもそも口頭指示の出し方として,Internal focusとExternal focusがよく挙げられます.
 Internal focusとは・・・自己の身体へ注意を向けさせること
 External focusとは・・・身体外へ注意を向けさせること
を指します.

 ドローインを処方する際のよくあるキューイングの仕方として,
「息を吐きながらお腹をへこませるようにしてください!」とすることがあると思います.
 これがいわゆる"Internal focus"です!自分の腹横筋に意識を向けさせて行わせます.これでできる方はこのやり方でいいと思います!
 しかし中には,お腹をへこませることを優先するあまり腹直筋に力が入ってしまい腹横筋の選択的収縮ができない方もいます!

 そんな方には”External focus”です!
 キューイングの仕方のポイントとしては,”腹横筋に意識を向けさせないこと”です!
 例としては,「おへそで床を押して」「ティッシュが落ちないように口の上で拭き続けるようにする」「細い口で息を長く吐き続ける」などがあります.
 このように周囲の環境に目を向けさせるようなキューイングをすることで結果的に腹横筋の収縮を促せます.

 キューイングの仕方により効果的なエクササイズになるかならないかが決まると言っても過言ではないです!
 是非臨床で実践してみてください!!

□最後に

 ドローインは比較的低負荷で簡便性の高いEXとしてよく臨床で用いられています.しかしそのやり方や効果を知らずにやっていても意味がないので今回紹介したことを頭に入れながら臨床で処方してみてください!!
 

参考文献
1,Kim JS, Seok CH, Jeon HS. Abdominal draw-in maneuver combined with simulated weight bearing increases transversus abdominis and internal oblique thickness. Physiother Theory Pract. 2017

2,Morito T, Akuzawa H, Okubo Y, Adachi G, Oshikawa T, Kaneoka K. Comparison of abdominal muscle activity with various verbal instructions and onset activity analysis during draw-in maneuver. J Exerc Rehabil. 2022 Aug 26;18(4):264-271. 

3,Tsao H, Hodges PW. Persistence of improvements in postural strategies following motor control training in people with recurrent low back pain. J Electromyogr Kinesiol. 2008 Aug;18(4):559-67. doi: 10.1016/j.jelekin.2006.10.012. Epub 2007 Mar 2. PMID: 17336546.


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