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CYBERロマンスポルノ'20〜REUNION〜感想②

前回の記事の続きです。
まだ読んでいない方は、以下をご参照ください。



今回は、CYBERロマンスポルノ'20〜REUNION〜の中核を担った中盤パートの感想を書いていきます。


中盤部は、とことん「聴かせる」ミディアムポップ/バラード4曲で構成されていました。

8.シスター
9.ルーズ
10.カメレオン・レンズ
11.海月


はじめに断っておくと、恐らく、この4曲だけで本記事が終わってしまいます。多分。笑
それほどに、とてもとても深く心に残ったパートでした。


それでは、どうぞ。



8.シスター
「過去を遡りながら、今までリリースしてきた楽曲達にもREUNIONしたい。」
そうMCを締めくくった後、印象的なドラムロールと共に始まった8曲目『シスター』。

調べてみると、ライブで披露されたのは、星球と同じく8年前のPANORAMAツアー以来だった。この事実には、正直驚きを隠せなかった。確かに、毎回のライブで観客を焚きつけるくらいのインパクトがある曲ではないが、往年、多くのファンに愛されてきた曲だし、私の周りには、ファンでなくても知っている友人が多い曲だ。そんな曲を、満を持してこのライブに提げて来てくれたポルノに感謝。

語りたいことは沢山あるのだが、何よりもまず演出だ。異国情緒溢れるフォルクローレ調の伴奏は、より現代的でCYBERな演奏へとアレンジ。そこに親和性を持たせるかの如く、PVを彷彿とさせる「サイバーツリー」がステージに咲いた。

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シスターという曲が持つ神秘性は損なわず、より高い次元へと昇華させた、素晴らしい演出だった。

ここでもう一つ、「どうしてシスターが選曲され、ここに配置されたのか」がとても気になった。

シスターという曲には多くの解釈がなされて来たが、全てに共通していることは「別れ」と「旅立ち」というテーマだ。シスターの歌詞が描くのは、恋人との永遠の別れだと言われているが、この曲をリリースした時期が、ポルノグラフィティが大切なメンバーを一人欠いた時期であり、それでも二人で、また一歩ずつ前へ進んでいこうと決意を表したタイミングであった。

つまり、今回のライブで演奏された意図もまさしくその決意の表れだったのではないだろうか。別れや旅立ちを、単に喪失と捉えるのではなくて、また次へ足を進めるきっかけなのだと分からせてくれる。それが、私がここで受け取った一つのメッセージだった。図らずも、ライブはこのシスターをきっかけに、より深みへと展開していく。

《“別れ”とREUNION》



9.ルーズ
シスターの余韻を残しつつ、シームレスに移行した9曲目は『ルーズ』。

ライブで演奏されるのは2回目だが、ファンからの人気が非常に高い曲で、今回含め演奏された2回とも「この曲をやって欲しいという要望が多かった」と、ポルノ自身がその支持率について言及している稀有な曲だ。その人気に違わず、カップリングでありながらも、曲の完成度は折り紙付きである。

ルーズは、その独特で難解な世界観も魅力の一つだ。一見すると“失恋”を歌っているようだが、何度も反芻していると、徐々に混沌とした愛や想いの形が現れてきて、そう単純ではない情景であることが明かされる。

形あるものは「いつか」「なぜか」脆く壊れてしまうという
そんなルーズな仕掛けで世界(ここ)はできてる

歌詞の中で、まずこう述べられている。確かに、形があるといつかは壊れなければいけない道理はないように感じる。

その後も、歌詞の中で何度も「形」が引き合いに出され、その様相を変えていく。歪んで捻れ、混ざって溶けていく。そしてすぐに、形作る。まさしくカオスな世界に足を踏み入れている。ここに答えを求めるのは違うと思うが、映像になぞられると、彼らの解釈が投影されているのではないかと感じた。

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ルーズの演奏中に描かれていたのは、大きな丸い球体だった。曲が進行していくにつれて、それが形をどんどん作り変えていき、時には円状になってステージを埋め尽くした。

この光景からフラッシュバックしたのは、3曲目に演奏された星球。そして、シスターで映し出された「木」に宿る赤く丸い果実。そして、形が変わるルーズな世界に存在する丸い発光体。

そう、これらの輪郭を表す「円(環)」こそ、ポルノグラフィティが思い描く「変わらないもの」なのではないか。

彼らは一貫して何か大切なものを、今回のライブでは"円"で描いて伝えようとしてくれている、そんな風に感じたのだ。では一体、その正体は、、?それを考え始めた矢先だった。次の曲が、私を更なる混沌へと引きずり込んできた。

《“混沌”とREUNION》



10.カメレオン・レンズ
「トゥ…トゥ…トゥ」と、たった3粒の音で空気を一変させた10曲目は『カメレオン・レンズ』。

比較的最近のシングル曲でありながら、ライブでの採用率が非常に高く、ドラマのタイアップの影響もあり、新たなファン層を獲得した名曲だ。終始張り詰めた緊迫感の中で、不実な恋の駆け引きが惜しげも無く表現されていく。そんな中現れたのは、やはり「球体」だった。

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おそらくこの球体は「月」を表しているのだろう。なぜなら、歌詞の中で象徴的に起用されているからだ。しかしここで、一つ引っかかった。カメレオン・レンズで「月」が表しているものは、『不実な心』だからだ。

せめて同じ空を見れたらと 君の肩を引き寄せてはみても
そこにはふたつの月がならぶ お互いを知らないまま

サビで描かれる光景は、一見するとロマンチックなものなのだが、「お互いを知らないまま」という最後のフレーズで、全てが反転する。つまり、二人並んで見ている月は、「全くの別物」なのだ。

ここまでで、あらためて丸い球体(円)に込められたメッセージの正体に靄がかかる。「大切にしているもの」「変わらないもの」と感じてきた気持ちは、果たして本当に真実だったのか、それとも嘘だったのか…。カメレオン・レンズを通してみた風景は、まるで深海に迷い込んだかのように暗幕を下ろしてきた。

《“嘘と真実”とREUNION》


11.海月
深海にまで身を落としてきて、出会った11曲目『海月』。イントロを聴いた瞬間からアウトロまで、息が詰まり思わず涙を流してしまった。

何を隠そう、この曲は私にとって非常に思い入れの深い曲であり、ちょうどライブが開催される前に、記事で書いたばかりの、大切な曲だからだ。

正直、シングルカットされたわけでもなければ何かのタイアップでもない、全くのマイナーな曲だったために、2019年のライブで聴いて以来、もう二度とライブでは演奏されないとタカを括っていた曲でもあった。それゆえに、こんなに早くまた海月と「再会」できたことが何より嬉しかったし、そして海月が、こんな大事な局面に選曲されたことにも、心が震えた。

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息を飲むほどに美しく漂う海月。
まさしくこの海月たちが、ここまで紡がれてきた「円」の正体だったのではないだろうか。もっと言い換えると、海月が表したのは、古から続く「愛」そのものなのだろう。

海月は、この世に生命を与えられてから、何度も輪廻転生を繰り返してきたという。その過程の中で、かすかな光を発しながら暗闇を漂い続け、惹かれあった生命同士が共鳴し、強く命を輝かせていく。その生き様はまるで、人が人として円(環)を作り支え合ってきた営みそのものだ。

そして、その人々の営みの中で育まれていくのが、「愛」なのである。

そう、ポルノグラフィティがライブの中で作り上げ表現してきた「円」とは、「愛」だったのではないだろうか。

それは時に形を変え、時に人を癒し、惑わせ、そしてまた人と人とをREUNIONさせてくれる。そんなこの世の理のようなテーマを、見事今回のライブで昇華してみせたのだと思う。

その大いなる愛を与えてくれた、気づかせてくれたのは紛れもなく彼らだが、それで終わらないから、私は彼らに一生ついていきたいと思うのかもしれない。

曰く、彼ら自身もまたその愛の享受者であって、「その愛をくれたのは、君たちなんだよ。」確かに、そう言ってくれたのだ。


この世界に鳴り響いてる
そのほとんどの音が邪魔で
そんな時も聴いていたのは
キミの声だけだったよ

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《“愛”とREUNION》




書き切れてよかった。

…続きます。



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