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ヒゲダンのライブは○○がすごいという話

8月18日にメジャー2枚目のフルアルバム『Editorial』をリリースしたばかりのOfficial髭男dism(以下ヒゲダン)。2019年10月にリリースされたファースト『Traveler』からさらに音楽的な自由度を増した今作は、今年のJポップシーンの代表作となるであろう1枚です。


28日にはそのリリースに合わせてオンラインフリーライブを行うヒゲダン。楽曲の力もさることながら、このバンドはライブパフォーマンスにおいても特筆すべきものを持っています。本稿では、そんなヒゲダンのライブの魅力について言語化してみたいと思います。

彼らのステージの特徴として挙げたいのは2点。まず、ボーカル藤原聡の歌声です。こう書くとあまりにも当たり前のことのような気がしますが、彼が生で歌うことでヒゲダンの楽曲は時に録音された音源を上回る輝きを放ちます。

ヒゲダンのライブで堪能できる藤原聡の歌は、「安定したピッチ」と「深みのある感情表現」というとかく相反しがちな2つの要素を高次元で両立させています。楽曲の盛り上がりに合わせて感情のこもったパフォーマンスをしながらも、音楽として必要な「正しい場所に正しい音が配置されている」という状態を着実に作ってくれるわけで、聴き手としてストレスを感じることが全くありません。


その力量が如実に表れるのが、ハイトーンの歌いまわし。ライブでもテレビ出演でも音源と遜色ないシャウトを聴かせてくれる「Laughter」の大サビが好例です(印象に残っているのは2020年夏のFNS歌謡祭でのパフォーマンスです)。

パッケージに残っているもので凄まじいのが、「Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館」における「Pretender」です。ただでさえキーが高く歌いこなすのが簡単ではない楽曲がライブ終盤に配されている時点でチャレンジングなわけですが、張りのある歌声で1番サビをエモーショナルに歌い上げるとその流れで突入する2番Aメロのスムーズさはちょっとびっくりしてしまうほど。ラストのビブラートに至るまで非の打ち所がないこの日の歌唱には、ヒゲダンのライブで体験できるカタルシスが詰まっています。


そしてそんな歌声を支えるサウンドのあり方が2点目の特徴なわけですが、4人のバンドにサポートメンバーが加わる大所帯で鳴らされる音の華やかさは、ポップミュージックをまっすぐに志向するこの人たちならではのものなのではないでしょうか。

たとえば生のホーンセクションが加わることで、「宿命」はよりきらめきを増し、「FIRE GROUND」はより妖艶な雰囲気を漂わせます。最近のライブでは「I LOVE...」においてもトランペットのフレーズが楽曲の切なさを強化していました。

また、昨年の配信ライブでは「旅は道連れ」においてメンバーそれぞれでボーカルをリレーしつつ、楢﨑誠が楽器をサックスに持ち替えながらホーンセクションの面々とステージ上で絡む場面も。「持ち替える」という点では楢﨑はサックス以外にもシンセベースを弾いたり、藤原もショルダーキーボードを使ったりハンドマイクで歌ったりと、シチュエーションに応じて最適な編成が常に選び取られています。メンバー4人それぞれが音楽家として柔軟なスタンスでヒゲダンの音楽と接しているからこそ、バンドメンバー以外も一体となって楽曲の魅力を増幅させるトライが自然にできるのではないかと思います。


28日のオンラインフリーライブは20時半から約30分とのことで、ここまで触れたような歌と演奏の魅力が凝縮されたものになるのではないかと思います。また、この日のライブ開始3時間前から過去のライブ映像も合わせて公開されるとのことなので、改めて「ライブバンド」としてのヒゲダンのパワーを様々な角度から感じることのできる日になるはずです。

『Editorial』という素晴らしいアルバムを作り切った充実感の中で行われるヒゲダンのライブがどんなインパクトを残してくれるのか、とても楽しみです!


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