見出し画像

伝説のやつ#1

こんにちは!
㈱REGATEの金城です。

本日はとある人物をご紹介。


この人は私の人生で一番手を煩わせられた部下で、一番憎たらしくて腹が立った部下で、一番怒鳴りまくって血圧を上げた部下で、ありえない数の尻拭いに奔走させられた部下です。

そんなヤツにやらかされた数々の出来事をショートストーリーでお送ります。

最後まで読んで途中で血圧が上がって血管が切れてしまってもストレスで禿げ散らかしてしまっても私は責任を負いませんので予めご了承ください。
※私は書きながら当時を思い出してイライラして血管が切れそうになりました。あと禿げました。

正に伝説級の人です。
ではど~ぞ~


◆ご紹介


まずはどんな人物なのかをざっくりとご紹介します。


基本的な性格はおおらか、、、と言えば聞こえはいい。
いつもニコニコと愛想のいいヤツ。

とても明るい性格の持ち主だったので、スナックとかでじじばば相手に場を盛り上げるチーママ的な仕事をすれば一世を風靡したかもしれないと思う。

だが、ヤツが選んだ仕事は不動産仲介業・・・
運がいいのか悪いのか私の直属の部下になった。


ヤツの物忘れは日常茶飯事。
怒られたことも数秒後には忘れているような人間で、しかも本気で忘れるからマジでどうしようもない。。。

物忘れがひどすぎて携帯代金の支払いは督促が来るまで払わないのも毎月の事らしい。そのせいで100円のアプリをキャリアのかんたん決済でダウンロードしようとしたら審査に落ちて100円のアプリを手に入れられないという事もあった。100円の審査に落ちる人間を見れたのは今思えばとてもいい経験だ。

勿論、指示したことをちゃんとやってくれることはなく、毎回仕事をチェックすると抜かりなくミスが見つかるし、指示する前よりも状況が悪化してるような事も多々ある。

車の運転も助手席に座っていて何度死を覚悟したかわからないくらいの腕前。

簡単に言うとADHDの日本代表みたいな人です。

ただ、前述の愛想のよさも相まってご年配の売主さんには好かれやすくかわいがってもらえるキャラクターで、とっつきにくいようなお客様の懐に入っていっては専任媒介を取る事が得意だった。

そんなヤツとの物語です。




~ときめきお掃除~

ヤツが仕入れてきた中古の戸建て。
その物件は離婚した後に男の一人暮らしが長かったせいか室内も散らかってて、庭の草木も伸び放題。
こういった荒れた古屋の場合は売り出し前に室内の片付けや庭の草木の撤去、高圧洗浄などの作業を実施する。
5名くらいの男性スタッフの手を借りて丸一日かかるような内容の作業量だ。

前日に「明日は営業用のスーツじゃなくて、作業しやすい動きやすい恰好で来るように」と指示をだした。


当日のヤツの格好はビーチサンダルにハーフパンツとタンクトップ。。。近所のコンビニにでも行くの?というくらいな軽装・・・

「何お前その恰好?今から作業なんだけど」
「え~だって動きやすい恰好って言ったじゃないですか~」
「・・・」


物件を預かった担当者だからという理由で作業に参加させたというだけで、もともと戦力に考えていなかったので室内の簡単な掃き掃除や片づけを命じて、その他の男連中で大きな家具の搬出や庭の草木の刈り出し撤去作業に汗を流す。

容赦なく照り付ける真夏の日差しの中、切った木を運んだり、大量の残置物を搬出したりとみんなで汗だくになりながら動いている時、室内に目をやるとスマホを見ながらくつろぐヤツの姿。

「周りでみんなが汗かいて働いてんのに何やってんの?」
「え~?部屋の掃除の仕方をYouTubeで検索していたんですよ~。あ、ほら!いい方法見つかりましたよ!ときめくお掃除ってやつ知ってますか??一緒に見ます?」
「。。。」

イラ・・・



~製本テープ~


そんな物件も無事に契約となり、ヤツにとって初めての重説だ。
こんなのでも宅建に受かっているんだよな。。。やれやれ。

不動産屋さんならみんな経験したことがあると思う製本テープのミス。
何千万もするような物件の契約書なんだからできるだけきれいに丁寧に仕上げたいものですよね。


ヤツが初めて製本した契約書と重説は・・・

ほら予想通り。

「お前、これをお客さんに出せると思っているの?」
「はい。何か間違えてます?」
「間違えとかの問題じゃない。製本テープ汚いし、ホッチキスで綴じる前に紙の両端をちゃんと合わせろ!」
「え~?テープは新品だから綺麗ですよ?ほら~。あと紙が勿体なくないですか?やり直したら。凸凹の部分ハサミで切れば大丈夫じゃないですか~?」
「・・・いいからすぐにやり直せ!!」
「え~~~せっかく作ったのに~~~」


~現地で待ち合わせ~


一日の仕事を終えて翌日のスケジュールを整理する。
繁忙期はいろんな部下の同行や契約書チェックなどで分刻みのスケジュールになる事が多い。

そういえばヤツの案件で大事なアポがあったな。
ヤツはもう帰宅しているのでラインで質問を投げる。

『明日の○○さんのアポだけど何時?場所は?自宅?どこかの喫茶店?』
『え~っと・・・まだ時間と場所が決まっていませんw』
『・・・すぐに確認して連絡しろよ。俺も明日忙しいから』
『り』

イライラ・・・
せめて「りょ」だろ・・・



その日、予想通りだがヤツからの連絡は無いまま時間だけが過ぎた・・・




翌朝、いつものように始業一時間前に事務所に出勤し、その日の資料などをチェックしているとヤツからのライン。

『金城さん!○○さんのアポですけど▽◆市のイオンのフードコートに8時なので直行しますね。現地で待ち合わせでお願いします』


この連絡が来たのは朝の7時30分。
▽◆市のイオンは車で一時間はかかる。。。


マジでこ〇す・・・




ここまでは初級です。
これはまだヤツの行動のほんの些細な一部にしかすぎません・・・


どうですか?思い出したらイライラが止まらないので少し禿げてきた気がします・・・まだ大丈夫ですか?気分は悪くなっていませんか?

ここから先は皆さんも育毛剤をご用意のうえ読み進めてください。





~評価証明書は?~


ヤツの案件で初めての決済を迎えた。
前日から全ての決済書類を確認し、チェックリストもヤツ専用のものを用意。
ヤツ専用とだけあって同じ書類を三回はチェックできるようにチェックボックスを三つも作った。
前日の段階で全てのチェックボックスが埋まっている。
念のためにこっちでも書類をチェック。

ここまでやるか?
甘やかしすぎじゃないか?
と言われようともここまでやらないとヤツをお客様の前に出すわけにはいかない。俺の仕事はどうしようもない人間でも一人前の不動産仲介営業に育てることだ。

領収書、印紙、評価証明書、契約書コピー、測量の成果簿、、、
よし。大丈夫。準備万端。


翌朝。
決済場所は事務所から車で一時間はかかる遠方の金融機関だ。
忘れものとかをしたら全ての人に迷惑がかかる。
念のため昨日チェックした書類ファイル一式を俺の鞄に入れる。
ヤツに持たせたら8割の確率で忘れる恐れがある。。。

余裕を持って30分前に着くように出発。

「いよいよお前の初めての決済だな。紆余曲折あったけどとりあえず営業としての節目になる。おめでとう」

ヤツのおぼつかない運転の中、助手席でねぎらう。
奴は運転中にも関わらず全力で横に座る俺を見る。

「うよきょくせつ?ふしめ?なんですかそれ?」


「・・・前を見ろ。前。」





決済銀行には事故もなく無事に30分前に到着した。
既に売主さんも来ていて買主さんの到着と融資の実行待ちの状態だ。
司法書士も先に来ていたので必要書類を再確認する。



「あれ?評価証明書は?」

???
昨日確かにチェックしたし、チェックリストには三つの印と最後に俺がチェックした赤ペンも入っている。

「あ・・・」

ヤツを見るといたずらがバレた悪ガキ見たいに肩をすくめて「てへ」という憎たらしい顔をしている。

「評価証明書どうした?」
「昨日金城さんが帰った後に少し勉強しようと思って評価証明書を見ていたんです~w そのままデスクの引き出しに入れたかもしれませんwww」

何を勉強?評価証明書で勉強?はぁ??????

売主さんもいる手前怒鳴るわけにもいかん。
出発前に再度確認しなかった俺にも責任はある。
落ち着け俺。。。

金融機関から物件の評価証明を取れる役所が近い。車で5分で行ける。
不幸中の幸いだ。
30分前に気づけて良かった。

「今すぐ市役所行って評価証明書取得して来い!」

司法書士が委任状のひな形を持っていたので売主さんに署名押印をしてもらってすぐにヤツに渡す。

「いってきま~す」

のほほんと出ていくヤツ。
殺意とはこういう時に沸くモノなんだな。


・・・・・一時間経過。
買主さんも来て、金融機関の担当者も揃ってみんなでヤツを待つ。

「おっかしいな~もうすぐ戻ってくるはずなんですけど・・・」

市役所まで車で5分では着くはず。。。
あいつどこにいるんだ?

トゥルルルー・トゥルルルー・トゥルルルー・・・・

「はぁい。金城さん。なんですか~?」

イラ・・・
売主さんも買主さんもみんないる。・・・怒りを抑えて話す。

「遅すぎる。みんな待ってるんだけどどこにいる?」
「あ~。今那覇に居ます。役所に着いたら財布の中に10円しかなくて、事務所にお金を取りに戻っていました~。ちゃんと事務員さんから借りれましたよ〜」
「社会人として財布に10円しかないとか大丈夫か????!!てか、お前事務所まで戻ったの?」

「はい~でもさっき事務所出たので大丈夫ですよ~。今高速乗りました~」

「・・・事務所に戻ったならお前の机の評価証明書取ってこればよかったんじゃ・・・」
「あ~警察来たので切りますね~」

ツーーー・ツーーー・ツーーー・・・・


イライライラ・・・


トゥルルルー・トゥルルルー・トゥルルルー・・・・

ヤツからの着信。

「もう高速乗ったんなら仕方ない。早く来いよ・・・」
「それがですね~さっきの警察に捕まりました~携帯で話していたからってwww」
「・・・」


司法書士の職権で評価証明書を取得するという事で追加費用を支払って決済を終わらせた。
最初からそうすればよかったと思うけど決済の30分前に気が付いて、車で5分の市役所で取得できるとなれば誰が司法書士の職権でやろうと決断できるだろうか?少なくとも俺の判断が間違えていたとは思えない。
悔やむとすればヤツに行かせたという事か・・・
先にお金を持っているか確認すればよかったのか?でも評価証明書って300円だぜ?それを持っているか確認するのか??いい年した大人に300円持っているか?って???

反省と後悔と怒りが織り交ざる。この気持ちはなんて表現すればいいのだろう・・・

死ぬほど腹が立ってすぐにでも駆けつけてヤツを殴りたいが、ヤツが車を使っているので帰る足が無い・・・畜っ生xrtyk7hp dbs8-3j2q-!----!!!!


トゥルルルー・トゥルルルー・トゥルルルー・・・・

ヤツからの着信。

「今警察の手続き終わったんですけど~。」
「もう決済も終わったよばか」
「あ。そうなんですね~。終わっちゃったなら事務所戻っていいですか?お腹すいちゃって」
「・・・・いや、ここまで来い。」
「え~~~。遠いな~~~。なんで〜〜」
「・・・」

こいつ俺を同乗させていたことを忘れていやがる・・・



もう皆さんは頭皮が干上がってしまいましたか?
長くなったので続きは次回。

では~

次回:伝説のやつ#2


沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!