曰く付きの岩と土地#2
前回からの続きです。
まだの方は先にそちらをお読みください。
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曰く付きの岩と土地#1
◆沖縄の不動産屋さんの本音
幸い抵当権が無い分幾らでも安く売り出す事は出来る。
奥さんは処分さえできればいくらでもいいというが、少しだけでも手元に資金を残してあげたい。どうせ関わるならお客様に少しでも還元してあげたいというのが本音だ。
とりあえず買った時の金額から水道引き込み代を差し引いた価格で売り出す事にするか。。。
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価格が抑えられているから反響は多い。
だが案内の時とかに「岩の言い伝え」を話すとみんなが引く。。。
そりゃそうだよな。死にたくないもんな。
現に前の所有者も今の所有者も死んじゃったんだし・・・
そこで水道管の引き込みの話をするとほぼ誰も見向きもしなくなるw
売り出しが長期化してくると反響の傾向が見えてきた。
この物件は連休とか観光客が増える時期に反響が多くなる。
海がきれいなエリアの格安の土地。
空港から海までのアクセスの間にある土地で観光客の目につきやすいということもあるんだろう。
ほとんどの反響がこれ
「安い土地があれば欲しいな~」
「1000万以下の予算でなにかあるっしょ?」
「旅行ついでに見ちゃおうぜ♪」
という軽いノリのアレだ。
正直沖縄の土地は高い。
TVやいろんなメディアの情報で田舎暮らしののんびりとした光景がよく流れるせいか沖縄の不動産を安いと勘違いしている奴は絶えない。
沖縄の土地は関東の田舎よりも高いものが多いんだぜ?
1000万円以下の戸建?別荘地?海が近くていい感じの土地?
そんなんが安く売ってるわけないだろ?
そんないい土地ならお前がネットで見つける前に無くなってるんだよ。
旅行ついで?は?買う気があるなら土地を見るためだけにチケット取るくらいの覚悟で来いよ。旅行ついでに不動産を見にきたバカップルの案内ほど無駄な時間はないからな。いい加減にしてほしいぜ全く。
こんな奴らを排除する法律を今国会に提出する議員さんが居ればすぐにでも投票してやるよ。
リゾート系の物件を持っている業者さんならみんな同意だと思う。
旅行がてらに見に来る奴らでちゃんと契約に至る人は滅多にいない。
猫のうん〇だらけの草を食べるお婆ぁを見かけるよりも確率が低いだろう。
「ついでに見たいんです」じゃねぇんだよ!ばーかばーか!
おっと話が逸れたので戻します。
※沖縄の不動産屋さんの怨念が憑依してきたみたいです。曰く付きの物件の紹介なので引き寄せたのかもしれませんね。
あくまでも私の本心ではありません。
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@REGATE5
◆これ買います
薄い薄~い反響を対応し、いつしか「売れないかもな」と諦めかけていたその時、まさかの購入者が現れた。
反響電話は着信ナンバーは【公衆電話】
「あの土地まだありますか?」
「はい!ございますが諸事情あって詳しい説明をさせていただきたいんですが」
「説明は要らないので買います」
え?マジで?ラッキー♪買い付けゲット♪
・・・いやいや、説明させてwww
「いや~。水道の事とか土地の告知事項みたいな事とかいろいろ説明しないといけないんですよ。問い合わせは多いんですが皆さん説明を聞いたら購入を見送るもんですから、なので皆さんに事前の説明をさせていただい・・・」
「では今日の15時に現地で待ってます」
ガチャ。
いやまだ喋ってるし!
おい!こっちの都合は無視かよwww
え?15時???あと30分じゃん!
名前も聞いていないしなんか唐突な人だな・・・
とりあえず物件の資料をかき集めて高速に乗る。
ギリギリの時間に現地に着くと髪の毛がボサボサで正気の無い人が立っている。
え?人???岩に潰された一族の怨霊??
「14時58分。いいでしょう。説明をしてください」
時計を見ながら目線を合わせずに一方的に話す。
「あ、初めまして私金城と申します」
「説明をしてください。」
名刺を差し出したがすぐにポケットに入れる。
もちろん目を合わせることはない。
岩の言い伝え、死者が出たこと、水道管のこと。。。
男は返事もせず頷きもせずただただ無言。
何を説明しても無反応でじっと土地を見ている。
岩の説明をした時は岩だけを凝視。。。
絶対にこちらと目を合わせようとはしない。
目が少し怖い。
あ。こりゃダメだw
この人コミュニケーションとれない系だ。。。
「では」
一言だけ発し男はそのまま去っていった。
ふぅ・・・そりゃな。ここまで苦戦していた物件がこんなにすぐ売れるわけないもんな。期待しちゃったじゃん!ばか!
僅かな希望が一瞬で霧散した。。。
◆メールの返事
事務所に戻って急いで出かけたせいで散乱した机を片付ける。
ピコ〜ン♪
お。メールか。
ん?見慣れないアドレス。。。
「先ほどはありがとう。進めてください」
え?誰?
あ、さっきの男?
「ご連絡ありがとうございます。
それではご希望の売買条件を添付の用紙にご記入ご捺印いただいて返送願います。お手数ですが何卒よろしくお願いいたします」
相手がわからないがとりあえず白紙の買い付け申込書を送ってみる。
名前も書いて返信をくれたら一石二鳥だ。多分あの人だけどな・・・
・・・・。
一時間待っても何の返事もない。
多分あの人っぽいけど名前も名乗ってこないし話を進めようがないじゃんw
「添付の資料でわかりにくいこととかがあればお気軽にご質問ください」
・・・。
「わからない項目とかあればお気軽にお申し付けください」
・・・・。
「資料が失念していた場合とかはお申し付けいただければすぐにお送りしますので、お気軽にお申し付けください」
・・・・・・。
夕方になっても夜になっても返事がない。
なんだったんだろう。なんか自分の感覚を疑ってしまうw
あの人。本当にいたよな?
岩を凝視している時とか土地を見ている時の目は少し怖いくらい真っ黒な目だったしな。。。
あれ?岩の何かに呼ばれた?まさかな・・・
翌朝になっても返事がない。
ま、こんなもんかw
また期待しちゃったよ。。。。
◆精神病院
でもあの人はなんだったんだろ?
あ。そうだ。とりあえずメアドを調べてみよう。
不動産をやっているとコンタクトを取った人を検索する癖がつく。
@〜〜〜.comとかを調べると相手の職場に繋がったりするし。
反響の時とかも相手の名前が分かればとりあえず検索するのが不動産屋仕草だ。
どれどれ。
カチ。
・・・・・・。
え?精神病院???
検索結果の一覧には精神病院がトップに出てきて、関連検索ではその患者とか病院のことについての説明文みたいなものがヒットする。
この病院はあの土地からそんなに遠くない立地。
精神病院か。。。あの人患者?ならなんとなくわかる気もする。
あの対応とか自閉症って感じだったし。
じゃ病院を抜け出してきたの?だから急いで帰ったの?
だから公衆電話だったのか。なるほど。
いやいや、だとしたら病院のメアドを使えるのおかしくない?
もしかしてお医者さん?勤務している看護師?
あのコミュ障で患者対応できるとは思えないんだけど・・・
やっぱり一夏の怖い話?
ていうか土地買うことできるの?
う〜ん。深追いはやめとこうかなwww
◆買い付け
完全に諦めていた二日後、1通の郵便が届く。
差出人は片桐。
見たことも聞いたこともない名前だ。
中を見ると買い付け申込書が入っている。
わざわざ郵送してくれたんだ。
少し感心し買い付けに目を通す。
買い付けの希望欄にはこんな文字が
『このご時世になぜわざわざ書類を郵送しないといけないのか甚だ疑問ではあるがそれがそちらの仕様ということなら従いますが今後は改善してもらえるよう切に願う』
筆圧が強く怒りがこもっているようにも見えるwww
あ。ご返送くださいという言葉を郵送だと思ったのか・・・
なるほど。
でもスキャンして送り返してもいいですか?とか一言くらい返してくれたらいいのに。。。あの後のメールは無視だし・・・
とりあえず岩の亡霊とか怨霊じゃなくて安心だなw
買い付けの条件は満額買い付け。
せっかくの満額だし契約をすすめるか。ちゃんとコミュニケーションとれるか不安だらけだが・・・
前回のアドレスと片桐という名前で再検索。
すると精神病院の精神科医としてヒット。
いろんな論文も出しているすごい人っぽい。
とりあえずメールするか。
「この度は買い付け申し込みありがとうございます。
つきましてはご融資の確認と契約の日程を詰めたいのですが、ご希望日程をお知らせいただけますか?」
すぐに返信が来る。
「融資は〇〇銀行 担当は△支店長。融資内諾の証明書を添付します。契約は○日と△日の午後ならできます」
〇〇銀行の支店長が担当なら融資は問題ないし、内諾書も確認できて一安心。偉いお医者さんだしこれで与信がないとかありえないしw
売主はいつでも時間を取ると言ってくれているし、契約を確定だ!
「では〇〇日の13時に契約という段取りで進めます。後ほど契約書と重要事項説明書のドラフト(草案)をお送りしますので事前にご確認をお願いいたします」
・・・・。
時間確定の返事がない
あれ?忙しくなったのかな?
事前に作っておいたドラフトを添付して送る。
「わかりにくい点や疑問点があればお気軽にお申し付けください」
・・・・。
急患でも入ったのかな?精神病院の急患??なんか怖・・・
ま、とりあえず進めるしかない。この人を逃すと満額の買い付けチャンスはもう訪れないかもしれないし!
「手付け金は現金でお持ちしますか?小切手でも構いませんが」
「現金を用意していきます」
お。すぐに返事きた。今は時間があるのか?
「もしよければ携帯の番号を伺ってもいいですか?」
「携帯はありません。」
え?まじかよwwwとりあえず今は返事がきそうだ♪
「ありがとうございます!何か疑問点などがあればお早めにお申し付けください!契約書の内容などの修正も行いますので」
・・・・。
また無視www
なんだよもうw
電話が無くてメールだけだとやり取りしにくいな〜。
契約日の前日まで待ったが返事はない。
「明日は13時によろしくお願いします!印鑑などお忘れ物なきようご注意ください。
持参物・手付金(現金)・印鑑・身分証
よろしくお願いいたします!」
・・・・。
流石に前日まで連絡がないと不安になるwww
明日来てくれるよな?
「ご予定の変更とかがあればお早めにお申し付けください」
・・・・・。
えぇい!どうにかなるだろ!運頼みだwww
◆後日談
不安だらけの契約当日。
片桐さんは時間通りに来てくれて問題も無く淡々と進んだ。
契約後、融資銀行に連絡し支店長と会話をした。
「片桐先生は無駄なことが嫌いな人なんですよw
だから融資も窓口を通さずに直接私に来るんです。
いちいち窓口担当が中間管理職の決済確認を取る時間が無駄だと思っているらしいんですね。
あと、無駄な会話や必要のない確認事項は一切合切無視してきます。
人から電話が来るのも嫌いらしくて携帯も持たない主義。どうしても連絡取りたい時は病院に電話して折り返してくれってお願いするしかないんですよね〜www
まあ、こっちからお願いしたら忘れ物もしないし、時間も絶対に遅れないし返事がない時は了解した時だと思って割り切っています。」
全て納得w
こちらが問いかける「大丈夫ですか?」という質問には返信がなかったし、「疑問点はありますか?」とかも疑問がないから無視したんだな。
にしても先生という人たちは変わった人が多いなw
あれから片桐さんはあの土地にコンテナを置いて水道は引かずにタンクに溜めた水を利用して生活をしているらしい。
たまに通りがかるが少なくとも岩の呪いは片桐さんに襲い掛かっている様子はない。
あと、お婆ぁが体調を崩したという情報も入ってきていない。今のところ・・・
曰く付きの忌み嫌らわれる物件だったけど一人の変わり者のお客様を見つけて成約したお話でした。
「不動産売買は世界中からたった一人を見つけるだけでいいんだ」という格言を体現したようなお話でした。
では〜
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