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あぁZ世代・・・


こんにちは。
(株)REGATEの金城です。

GWも明けてようやく時間が取れましたので久しぶりのnote更新。
最近、不動産業界にも増えてきたZ世代。

このZ世代たちに頭を悩ます中高年が私のnoteの愛読者だと聞いているので
その方々が共感して首がもげるようなエピソードをご紹介します。

ちなみに首がもげたら早めに病院に行ってください。
責任は負いません

ではど~ぞ~



今回の主役の彼はZ世代の同業者。
ご縁がありTwitterで知り合い、いくつかの取引をさせていただいている。

不動産屋を始めたいと言って法人を設立したはいいものの、宅建の資格が無いと宅建業の免許が下りない事を知らなかった彼。
法人を一年寝かせて宅建を受験したというなかなか香ばしい経歴を持つ人間だ。

勿論、不動産取引の経験は皆無だが彼の周りにはお金持ちや資産家が多く、大型案件をガンガン引っ張ってきてくれる。

独立してから後輩育成をしていなかったし、独立開業した彼をサポートするのもありだろう。
不動産のイロハを教えながらお客さんを付けたり、付けてもらったりしながら彼の成長を見るのも乙なもんだ。


そんな彼との初めての取引。
案件はそこそこ大きめの資産の売却。
価格もいい感じだから同業が入れ食いになってしまうくらいの条件。

だが、この地主は彼の事を気に入ってくれていて他社に話を持っていく前に彼に任せてあげるという太っ腹ぶり。
地主さんも彼の若さと元気さを好み、私と同様に若い人間の成長を見守る事に楽しみを見出していたのかもしれない。
お金持ちの一つの趣味になっているんだろう。

ただ、だからと言って長期間売り出ししてしまうと資産家の地主の元には有象無象の同業がピラニアやハイエナのように食いつくのが目に見えていた。


スピード命の取引。
ピラニアたちが嗅ぎつける前に私の顧客をあてがって、すぐに契約をするという段取りになった。

今回は銀行融資がなく、現金決済の単純な取引だ。
抵当権の設定や売主の抹消も無いシンプルな案件。

素人の彼の一発目の契約としてはまあまあ難易度も低いし、いい勉強になるだろう。
宅建も取得したし重説もさせてあげてもいいかもしれない。
むろん書類の作成や調査は私がやる。そうすれば大きなトラブルは回避できるし。


そんな折、契約に先立って公課証明書などの文書を彼に用意してもらった。

・・・が。

ピコ~ン♪

「金城さん!お待たせしました!資料です!」

届いたデータは公課証明書の写真。
しかも画素が荒くピンチアップしても文字が読み取れない・・・
いや、こういう時は資料は写真じゃなくてね・・・

「ごめん。文字が読めないからスキャンしたPDFとかもらえる?」
「了解っす!」





ピコ~ン♪

次に届いたPDFはどこぞの地場のおっさんがファックスでもしたのか?と疑うくらいに右に傾いたスキャンデータ。。。
酒飲んで酩酊しながら頑張ってスキャンしたんかな?というくらいに歪んでいる。
それか大地震の中でコピー機にしがみついてスキャンしたか・・・

まあ、さっきの写真よりは文字が読めるからまだましだが・・・

ただ、お客さんに写しを渡す時にこんなに歪んだデータをプリントするわけにはいかない。

「一応読めた!ありがとう!
契約の時には原本とコピーを持ってきてくれ!」
「りょ!っす!!」


りょ。。。
うん、まあ若者だしな。
意思疎通できているし、資産家の売主さんをホールドしているし。。。


う~ん、
この感じだとこっちで重説作って彼に読ませるのも不安だな。
今回は銀行決済じゃないから売主の自宅で署名押印を済ませる予定だし・・・

「今回は俺が重説と契約書の読み合わせするから、君は隣に座って聞いといてくれていいよ。売主さんのスケジュール調整だけよろしく!」
「はいっす~!」

はいっす・・・か。




****************

いよいよ契約の日は明日。

「金城さん!自分がデータを印刷して持っていきますか?」

彼にお願いをしたらページの入れ違いや落丁、綴じる部分の間違いなどが起きそうだ。あと製本テープもちゃんとやってくれるのかも自信がない。

結局、彼にプリントアウトと製本をお願いする勇気はなく、ウチで出力して製本して売主宅で彼の仲介印を貰う段取りにした。

「それはウチで用意するから大丈夫。明日は売主さんの必要書類と御社の仲介印を忘れないようにお願いします。
用意してもらうものは

・売主身分証
・売主実印
・売主印鑑証明書
・登記識別情報

★御社の仲介印と宅建士印

よろしく!」

「大丈夫っす!全部オケ!!」


・・・おけ。

うん。



翌日

朝一に念のためもう一度確認のライン。

「おはよう!今日は契約よろしく!売主の印鑑証明とかは万が一忘れていてもそのまま役所で取れるけど、御社の印鑑はその場に無いとダメだから確実に持ってくるように!」
「大丈夫っす!うぃっす!!」


・・・。


ちなみに売主の自宅から彼の事務所は車で高速を飛ばして40分くらいの距離。
忘れ物をしたからと言ってお客さんを待たせてる間に取りに行ける感じではない。


・・・本当に大丈夫だよな。不安が拭えない。


現地には少し早めに到着。
なるほど。こりゃ大資産家だ。
誰がどう見ても大豪邸だ。

買主さんもほどなくして到着。

時間までやる事がないので建物と敷地の広さに圧倒されながら周辺をうろうろして時間を潰す。

こっちが15分前に現地についてたとしても5分前に入るのが営業のマナーだ。
本当ならこういう事も彼に教えたいと思ってたが・・・

だが、その5分前になっても彼の姿はない。


ヴーーー・ヴーーー・・・
彼からの着信。
嫌な予感。



「金城さん!すみません!遅れるので先に入っちゃってください!」


やっぱりな。


いや、ていうか俺は売主とは面識ないしw
居酒屋じゃないんだから先に入っててっておかしいだろ。
ていうか同席させて重説とかを見せてあげたいんだけどw

少しの遅れならギリギリまで待つが。。。

「何分遅れる?」
「そうっすね~、15分くらいっすかね!」

おいおい。。。契約って大事な日よ?簡単に15分も遅れられたら・・・
あ、そうか。印鑑忘れるなって言ったけど遅れるなって言っていないもんな。仕方ない、俺のせいか。

「じゃ売主さんには先に買い側の不動産屋さんが行きますって連絡してよ」
「え?そのまま入ってもいいんじゃないですか?この時間で約束はしているし。売主めちゃいい人っすよ!」

いやね、いい人とか嫌な人とかじゃなくてね。。。
てか時間を約束しているってお前が約束守ってねぇじゃねぇか。。。


そんなやりとりをしていると勝手に大きな門が開いた。
自動で開け閉めするやつだ。流石は豪邸。
売主さんは中からこっちのやり取りを見ていたっぽい。


インターホンから声が聞こえる。

「外は暑いでしょう。中へどうぞ」


なるほど。確かに穏やかな感じの売主さん。

とりあえず彼が遅れてしまう事を詫びる。
なんで俺が謝らないといけないんだw

高級なソファーや調度品に囲まれた応接室に案内される。

彼が来るまで資料の確認などをして時間を稼ごうと思ったが、15分を過ぎても彼の姿は現れない。売主買主双方とも不動産の取引に慣れているようで用意してもらった資料は万全。これ以上確認する資料はない。

仕方ない、契約書も重説も俺が持っているから先に始めておくか。


********

それから10分。


「こんちゃ~っす!」


売主さんと買主さんに契約の詳細を説明していたら彼が入ってきた。

「あ、もう始めちゃってんすね?」

始めちゃってんすね?じゃねえよ。30分も遅れやがって。



ピロリロ~ン♪ピロリロ~ン♪ピロリロ~ン♪
彼の携帯が鳴る。

マナーモードに・・・
あ、そうか。
遅れるなっても言わなかったし、マナーモードにしろって言うのも言ってなかった。そうか、俺が悪いのか。



「あ、自分の事はいっすよ!そのまま続けてください!」

普通に電話に出る彼。


いや、いっすよじゃねえし。
契約に遅れてきて契約中に電話にでるとか。。。

いや、それも事前に言っていない俺が悪いんだよな。多分。


「・・・はいっすはいっす~♪では~!
いや~大きい案件決まりましたよ!お♪コーヒー飲んじゃっていいっすか?のど乾いちゃって♪あ、奥さん自分ホット苦手なんでアイスもらえます?」


・・・遅れるなとも言わなかったし、契約中のお客さんの前で別件の案件の電話に出て、遅れてきた事を詫びずに差し出されているコーヒーをアイスに注文替えするなって言わなかった俺が悪いんだ。



でもこれは彼がこの地主さんに好かれたから成立した案件だ。我慢我慢。
こっちは客付けさせてもらっている立場だし。。。

淡々と重説を進めていると隣に座る彼は携帯をいじっている。

イラ・・・
重説中にスマホ触るなって言っていないし。。。な。
俺が悪い。



にしてもこの地主さんは何故この彼に任せたんだろうか・・・





どうにか殺意を抑える。


一通りの重説を終え、締めの言葉

「疑問点や問題点が無ければ今からご署名ご捺印をお願いします」

売主と買主がそれぞれの書類に署名押印をする。


あとは彼の仲介印を押せば契約完了。







「金城さん。印鑑忘れましたw」



まじかよ・・・



・・・思わず彼を睨む。

きっとサイコパス診断をしたら確実にやばい数値が出るくらいの冷たい目をしていただろう。


「あれだけ忘れるなって言ったのに?」
「はいwww何でっすかね?www」


何でっすかね?じゃねえよ。
お客さんが居なかったらお前この場で埋めてるぞ。


気が遠くなりそうになりながらどうにかその場をやり過ごす。


売主買主の了承を貰って、一度彼が契約書を持ち帰って印鑑を押したのちに返却する事に。


でも彼にそのまま預けて押印漏れが無いはずがない。

一緒に事務所まで行って押させるのが一番安全か。
ちくしょう。午後の仕事をずらすしかないじゃないか。


様々な怒りが渦巻いたがコレがZ世代だ。
噂に聞いてはいたがここまでぶっ飛んでいるとは・・・

彼が直属の部下なら私は間違いなく何度かハコの中に入ってしまっただろう。今日一日だけでもいくつもの刑法に触れるだけの動機はあったはずだ。

だが、彼は部下ではないし、曲がりなりにも彼も不動産屋の代表だし、この案件も余所に持っていかれても仕方ないくらいにいい案件をウチに任せてもらえた。

怒りを抑えるだけで数百万の手数料を頂けるならいくらでも抑えるさ。


彼の事務所で押印を終えひと段落。


落ち着いたタイミングでTwitterを開いた。


【今日は売買契約!会社の印鑑忘れたwww】



プチン。。。

あの時俺が重説する横でスマホを開いていたのはこれを呟いてたんか・・・


確かに俺は契約に遅れるなとも言わなかったし、契約中のお客さんの前で別件の案件の電話に出て、遅れてきた事を詫びずに差し出されているコーヒーをアイスに注文替えするなって言わなかった。

そして何よりも忘れるなよと念押しした印鑑すらも忘れておきながら、その場でTwitterに投稿しているとは・・・


そこから先の記憶は途絶えている。


~完~



追記:彼とは今でもいい関係を保っている(はず)


では~


沖縄の不動産という独特な世界に迷い込んでいます!明るい外の世界の事は忘れました!これからも深海をはいずります!