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人生最後のカップラーメン


俺の命はあと15分。なぜなら俺の体には時限爆弾が仕掛けられてしまったからだ。

あと15分の命…。たった15分で全てが終わってしまう。周りには何もない、閑散とした山の中。

ただ目の前にはカップラーメンがいくつか置いてあるだけだ。こんな時にカップ麺なんか食ってられるか!と思ったが、これが最後の晩餐になるのならいっそのこと食って死のうと思ったのだ。
思い起こせば、今まで散々世話になってきたカップラーメン。人生最後の食事がそのカップラーメンになるのも悪くない気がした。

さて、何にする。定番のヌードルにするか、きつねうどんにするか…、いや天そばも捨てがたい!どうする?どうする?何を迷っている!時間がないぞ…。よし、ここは新発売の御当地のカップ麺にしようか…。迷っている時間はない、タイムリミットは迫っている。
よし、これだ!きつねうどんのカップラーメンにする。俺はきつねうどんのカップ麺と運命を共にする。急げ!時間が無いぞ!カップのフタを開け、お湯を注げ、都合よくポットもあるじゃないか…。どういった目的があるのか知らないが、今はそんな事を考えている暇はない。ただ死ぬのを待つよりも、俺はカップラーメンを食って死にたい。

カップにお湯を注ぐ、これほどまでお湯を注ぐのに命を掛けた事はなかった。
俺の好みは、お湯は少し多めに入れるんだ。丁度だと、少し塩っぱい気がするからだ。
そして、待つ、3分待つ。いつもの俺なら5分待つのだが、今日は3分だ。

3分という絶妙な待ち時間、今日は短く感じでしまった。

そして、3分経った。俺の命もあと12分と少し。俺はカップ麺のフタを開け、近くにあった割りばしで、うどんをススル!美味いうま!人生最後の食事に相応ふさわしかった。やはり俺の選択肢は間違っていなかった。死に際にカップラーメンを食うという事がだ。

そして、メインディッシュとも云うべき、そのカップ麺の主役、油揚げだ!きつねうどんも呼ばれる由縁ゆえんがここにある。俺にはこの油揚げを食うタイミングにはこだわりがある。最初に食う、中間に食う、最後に食う、ちょこちょこ間に食う、とするならば、俺は最初の方に食う、だ。この方というのもこだわりだ。いきなり食ってしまうのはなんか勿体ない。最後はもっとだめ、油揚げに浸透したあの特有の甘みが、長く汁の中で浸されると、甘味成分が逃げてしまうからだ。食うタイミングを少しだけじらす、そして食う!これは美味い!甘味が口の中いっぱいに広がる。だが、こんなに美味いカップラーメンを食うのも最後だ。俺はかつおだしの効いたスープを最後まで飲み干し、人生最後の食事を終えた…。

もう思い残す事はもうないもない…。

こういった場面では、こうするしかないのだ。

死ぬのを恐怖してただ待つよりも、美味いカップラーメンを食って幸せな気分を味わって死にたかった。

その方がいいに決まっている。

今、これを読みながらカップラーメンを食っているそこの君、いい気なもんだな。君はこんな状況に置かれてはいないだろうな。どうせあくびでもしながら呑気食っているのだろう。平和だな、と安心するのはご用心、君のすぐそばには爆弾が仕掛けられているかもしれない。そしたらこの俺のように最後の食事になるんだぞ。最後のカップラーメンの味はどうだ?。美味いか?よし、それじゃ一緒に旅立とう…。


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