ラーメン映画『タンポポ』(1985年)
監督・脚本/伊丹十三
今日は、私のビデオライブラリーからラーメンをテーマにした映画をご紹介いたします。
コレです伊丹十三監督作の映画『タンポポ』です。
この映画を最初に観たのは、私が確か小学3年生くらいの頃だったと思います。デレビ放送のゴールデン洋画劇場で観たのが最初でしたが、これはめちゃくちゃ衝撃的でした。
とにかく、ラーメンと食にまつわるエピソードのエッセンスが詰め込まれた作品で、軸としては映画『シェーン』をイメージしつつ、店主タンポポの店を立て直す、というラーメンウエスタンという惹句を謳った作品ではあるんですけど、それには留まらないものがあります。物語はタンポポの話しがメインなんですけども、オムニバスとも違う脱線エピソードって言うんでしょうか、それが印象的で衝撃でした。あれがあったからこそ、この映画が単なるタンポポとその店を育成するだけの映画にならなかったと思うし、伊丹監督の世界観が表れ、見事に昇華された作品になったと感じます。
メインのタンポポのラーメン屋の話しと、役所広司さん演じるヤクザの白服者のエピソードもサイドストーリーとして描かれ進行しているのも興味深く、食とエロスを融合させているのも面白い。食にまつわる一つ一つのエピソードも印象に残るものばかり。餅を詰まらせ、助けてもらったお礼にすっぽん鍋を振る舞う老人、オムライスを器用に作るホームレス(ノッポさん)、歯痛の男、海女さんの牡蠣、詐欺師と北京ダック、母ちゃん最後の料理など、特にチャーハンのエピソードは涙ぐましく、上手く見せるな〜と感心しました。日本映画史に残るマイ名シーンの一つです。因みに当時の私は北京ダックを知らず、親にあれは何だと聞きましたが、実際に食べたのは、ず〜っと後でした。白服の男のラストも凄く良くて、冒頭のシーンで一喝する伏線を、ラストで回収していて、白服の男らしい最後。生き様が見事でしたが、私はあのようにカッコ良くは死ねないでしょう。
そして、ラストのシーンのタンポポとゴローの別れの場面。ゴローはタンポポをジ〜っと見つめ、タンポポは一瞬かわすんですが、ゴローが立ち去る時に一瞬迷うんですけども、そのままお客とのやり取りでかき消され、あの持っていき方もしっかり計算されていますし、さらにゴローとピスケンとの最後、一言ずつ言葉を交わすシーンは、友情もそうなんですが、恐らくもう2度と会う事もないと互いに悟り合うシーンで、あそこも何かジ〜んくるものがあります。
ストーリーもそうなんですが本作は海外、特にフランスとかで人気がある映画みたいで、ラーメンに対する熱量と食を通じて見せるドラマがあって、芸術性も高い映画に仕上がっているのではないでしょうか。しかし、伊丹監督はほとんどラーメン屋には行かなかったそうですが、それがラーメンに対する熱量を生み出す一撃だったそうです。賛否別れる作品かもしれませんが、私にとって『タンポポ』は永遠の名作映画です。
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