見出し画像

『最終のバス』夏休み怪談


8月になりました。夏真っ盛りで毎日が暑い日が続きますが、皆様夏バテ、熱中症にご注意下さい。夏という事で、夏と言えば怪談は欠かせません。なので今日は怪談を披露したいと思います。


『最終便のバス』



私の知り合いにバスの運転手さんがいるんですが、その人から聞いた話しをしたいと思います。

とある地方都市のバスの運転手をしているMさんなんですが、その土地では有名な観光地、冬はスキー、スノーボードをしに海外からの外国人も訪れる観光スポットがあるんです。その温泉は山岳にあるんですが、そこまでのバス路線がありまして、そのMさんは温泉からの最終便を運行したんだそうですが、その時の話しです。
最終便ですから、あと下って仕事は終わりという状況だったそうなんですが、季節は夏で山の温泉はシーズンオフ、なので最終便ともなると誰も乗らないんですね、ましてや地方都市だと尚更です。
バスは大型で、12列シートで補助席を合わせると60人乗りで、観光バスに使用するバスで運行していました。Mさんは5分前にターミナルの停留所にバスを着けて、お客さんの乗車を待っていました。夜の8時なので辺りは真っ暗で、誰も乗りそうもない、なんて思ってたので、その5分間でトイレに行ったそうなんです。
素早く用を足したMさんはバスの運転席に戻って、お客さん乗ってるかなと思って後ろを見ると誰も乗ってなかったんだそうです。
あ〜、やっぱり。今日も誰もいなかったなあ、なんて思いながら時間になったら発車したそうです。

発車して山を下り始めてしばらくすると、ふと運転席のルームミラーを見たんだそうです。するとですね、誰も乗っていないはずの座席の一番後ろの左側の席に、髪の長い女性らしき人が乗っていたんだそうです。下を向いて長い髪が顔にかかかって顔は見えなかったらしいんですが…。あれ?おかしいな、さっき見た時は誰も乗ってなかったのに…。まあ見間違いかな、きっとトイレに行ってる間に乗車したんだろうな、なんて思いながら運行していたんですね。ところが!ちょっと気になってもう一度ルームミラーを見て後ろ確認したんだそうです。するとですね、さっきは一番後ろに座っていたその髪の長い女性が、その一つ前の座席に座っていたんだそうです。あれ?後ろの座席から一つ前に座ってる、移動したのかな…なんて思ってまた山を下って行きました。

でも、なんかやっぱり気になるんで、もう一度後ろを確認してみたら。その女性は、また前の方に移動していたんだそうです。つまり前へ前へと移動してるんですね、あれこの人変だな、なんてその時は思ったそうなんです。

で、Mさんは運転に集中し、運行を続けたわけですけども、もうさすがに移動しないだろうと思って、後ろを確認しました。すると今度は右側の列に移動して更に前席の方へと移動していたんだそうです……。もうMさんはゾッとして震え始めました。このバスにはMさんとその女性しか乗ってないわけですから…、それはどんどんこっちの方に向かってくるわけですから…。

すると次の瞬間、体が動かなくなった。
まるで金縛りにあったかのように…!
普通金縛りって大半は寝ている時に起こるもんなんですが、仕事中にしかも運行中に起こった。

これはまずいぞと、思ったMさんはブレーキをかけようとしてんですが、足も上手く動かせない状態だった。でもなんとブレーキを踏む事が出来たらしんですけど、今度はブレーキが効かなかったそうです。

こっちへ向かってくる髪の長い女はいるわ、金縛りだわ、ブレーキが効かないわで…。
大パニック、大ピンチですよ。
そしてうしろ…、をミラーで見るとその女は席を立って通路を歩いてこっちへ向かって来たそうです!

Mさんはもう怖くなって…、でも体が動かない。うわ〜って思ってましたが、それだけではなかった。この先にはヘアピンカーブが待っていたんだ。このままではブレーキが効かずにヘアピンカーブを曲がれずガードレールを突き破って崖にバスごと落ちてしまう!

うわ〜どうしよう!と思ったMさんはですね瞬間、ある事を思い出したそうなんです。
それは家族の法事の時に、そのお寺のお坊さんに説法された時に、「何か辛い時や困った時、どうしようもない時に、南無阿弥陀仏なむあみだぶつを10回唱えなさい」という教えでだったんだそうです。そのMさんは寺が浄土宗だったので南無阿弥陀仏をそこで10回唱え始めました。
「南無阿弥陀仏……南無阿…」×10すると体がスッ〜と軽くなったそうな。

目の前にはヘアピンカーブ間近、Mさんはブレーキをかけてギリギリなんとか止まったそうなんですが、もう少し遅れたらガードレールを突き破っていたそうです。

で、止まった瞬間、ピンポーンと降車ボタン音が鳴ったそうです。
あっ、そう言えばあの女は何処にいる!って運転席の横を見たら、なんとその女が立っていたんだそう…。うわっ!とびっくりしたんですが、何も言わずに立っていて、降車ボタンが鳴ったんで、Mさんは開閉レバーを操作して前扉を開けたら、その女はスッと降りていった。そしてヘアピンカーブの先の暗闇へと消えていったそうです。

もしあのまま南無阿弥陀仏を唱えなかったらどうなっていた事か…。


これを読んでいる皆様、南無阿弥陀仏とは言わないけれど、もし困った時、どうしようもない時、あなたの宗派の御経でもいいし、もしくは亡くなった家族を思い出して、名前を呼んで助けを求め、故人を偲んで頂きたい。そうすればきっと救いがあるはずです。

亡くなった家族、故人を思い出しお盆を迎えてほしいと思います。












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?