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『 ほら、ここに 』

スランプ
と書いて

喪失
と読むのかもしれない。

夢を追いかけている
   そんな自分が好きだった

夢中にさせてくれる
   だから創ることが好きだった

頼まなくても
頑張らなくても

それはいつでも側にいて
   支えてくれるものだった

だからここまでこれたんだ!

そんな風に気づいた途端
それは突然、“特別な宝物”   になった

いつからだろう?

宝物とは
誰が見ても
輝いていなければいけない

と思いだしたのは…?

もっともっと磨いて
うんと大きくしたくなった

あの人のよりも
この人のよりも

さぁ、磨け
そら、磨け

いつからだろう?

夢や好きなことを
   追っているのか
      追われているのか


わからなくなったのは…?

磨いて、頑張って
頑張って、磨いた

なのに

どうして
宝は突然色褪せたのだろう?

どうしてペンは止まり
言葉は遠くに行ってしまったのだろう?

まるで僕を裏切るように

こんなことなら
夢も好きなことも
無い方が良かったんじゃないのか?

欲する気持ちが大きいほど
痛くて

気がつけば僕は
ペンを放り出して

〝二度と人を愛さない〟
と決めた人みたいに

頑なな決意を胸に握りしめて
窓辺に佇んでいた

その時
突然
窓の向こうに土砂降り!

庭に敷き詰められたレンガを
雨が乱暴に塗り替えていく

太陽に灼かれた熱を
急速に奪い去るように

火傷するほど
あんなに熱くなっていたのに。

軒下では
仕舞い忘れたジョウロが
雨に打たれて急きたてるように繰り返している

ダダダダダダダダ
ダカラダヨ・ダカラダヨ
メメメメメメメメ
メヲサマセ・メヲサマセ

答えはいつも
予期せぬ形でやって来る

本当に 〝 自分 〟が好きな人や
いつも 〝自分 〟でいられる人が
決まってそうであるように

彼らはそれと気づかない

〝 自分探しの旅 〟になんか
彼らはきっと出ないだろう

それはまるで心臓のように
当たり前に共にあるもので
追いかけたり探したりするものじゃないんだもの

語ることも
それと同じ

書こう
とするものではなくて

きっと
書いてしまうものなんだ。


気づくと
  雨は止み
   呟くように

僕は書いていた



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