見出し画像

ANKO MEMORIES。

今回は「あんこ」について。

お正月にお餅を大好きな「あんこ」でたくさん食べたので「あんこ」のことでも書こうかと思っていたら、「おはぎ」を取り上げた某テレビ番組が絶妙なタイミングで放送されていたのを見、にわかに熱が上がってしまい、さっそく影響されて買ってきて食べてしまったくらい「おはぎ」も好きなんだけど、とりあえず今回は「あんこ」のことを書くことに。ごまあんや白あん、みたらしあん、東北ならではのずんだあんなど、どれも好きだけど、そのなかでも、小豆を煮て砂糖入れた、ポピュラーな「小豆あん」が昔から好きだ。(ちなみに写真は塩釜の「太田屋」さんのおはぎ。)


いつから好きだったろうかと記憶をたどると、小学一年生の頃の思い出が一番古い。当時、近所に定食屋があって、その並びに軽食を売っている小さなお店もあった。そこには飲み物やソフトクリーム、フライドポテトなんかがあり、そのラインナップに「大判焼き」もあった。この「大判焼き」というやつ、世間では「今川焼」が最も一般的な呼び名なのかもしれないが、初めて覚えた「あれ」の名前が「大判焼き」なので、今でもそれが僕のデフォルト。学生時代を過ごした山形では「あじまん」とも呼ばれていたが、心の中では常に「大判焼き」と呼び続けていた。とにかく、その「大判焼き」が僕は好きで、よく祖母に買ってもらった記憶がある。学校行事でマラソン大会があった時にも、上位入賞のご褒美が確か「大判焼き」で、それ欲しさに頑張っていた。馬でいう「ニンジン」が僕のそれだった。確かに「大判焼き」は美味しかったが、今思えば、単純に一番安かったから買い与えられていたような気もする。当時、「大判焼き」は1個60円。(今は多分100円以上する…こういうところに時の流れを強く感じる…。)同じ店で売っていたソフトクリームやフライドポテトなんかは150円とか200円くらいだった記憶があるので、つまりはそっちは高いから安い方の大判焼きを選ぶように誘導されていただけなのか…。でも、そういう時に姉はフライドポテトをいつも食べていたような…。やはり、自ら好んで大判焼きを選んでいたのかもしれない…真相は闇の中。

何はともあれ、「大判焼き」から僕のあんこ好きは始まった。もしかしたら「大判焼きには、クリームや他の味もあるじゃないか」とお思いの方がいるかもしれない。今はバリエーションも豊富で、チョコやずんだや、甘くない系のものもあるし、当時のあのお店にも、確か「あんこ」と「クリーム」があった。でも、当時からその件については迷いはなかった。あんこ一択。とにかくあの味が好き。控えめな甘さはもちろん、やはり食感が違う。クリームも味やなめらかさは様々あれど、何んといっても「あんこ」のあの独特の舌ざわりがいい。この辺は「あの店この店のあんこ」「つぶあん・こしあん論争」にもつながるが、それについては後述するとして、あんこのざらりとした食感と控えめでやさしい甘さがたまらない。だから僕にとって「大判焼き」はあんこ以外に考えられない。「たい焼き」も同様。そういえば先日東京に行ってまでたい焼きを食べてきた僕だけど、その「たいやき わかば」さんにいたっては、「あんこ」のたい焼きしかなかった。メニューは「あんこのたい焼き」と、中身の「あんこ」のみだった。一般的なたい焼き屋に行く場合、大体中身を指定して注文する。「あんこ2つ、クリーム2つ」みたいな。ただし、このお店の場合、注文時に他と同じように「あんこ1つ」と言ってはいけない。「たい焼き」なのか、「あんこ」なのかがわからないからだ。たい焼きを食べたい場合は「あんこのたい焼き…」とかではなく、「たい焼きください」とだけ言うべき。これからわかばさんに行ってたい焼きを注文する予定のある人は、ぜひそこに気を付けて注文してほしい。

画像1

そんなわけで、記憶の始まりから「あんこ」好きだった僕は、その後も“あんこ人生”を送る。小学生の頃、「バースデーケーキ」という風習は、もともと我が家には無かった(もっと言うとサンタクロースも来なかった。これは昭和の田舎の農家の宿命だったかもしれない…)。ただ、姉が12月生まれだったことから、だんだんとクリスマスのイベントと関連付けられるようになり、姉の誕生日にはケーキが登場するようになった。そうすると弟だって「僕も!」となるのが自然な流れのような気もするが、ただ、ここで僕の「あんこ好き」が思わぬ方向に働いて、僕の誕生日には毎回「おはぎ(6月だから呼び名は「ぼたもち」なのかもしれない)」が(しかも大量に)作られるようになった。小学生の誕生日にケーキ…ではなく、おはぎ。バースデーおはぎ。カタカナ方がしっくりくるか。バースデーオハギ。いやそうでもなかった。件のテレビで特集されていたおはぎのプロの方は、「おはぎケーキ」なるものを作ってもらっていて、少しうらやましくも思ってしまったが、どっちにしろ結局なかなか渋いよな…と今になっては思うけど、当時は喜んで何個も食べていた(我が家で作られるおはぎはほぼ「あんこ」だった)。ただ、この風習も、今は亡き曾祖母が、「おはぎ、あんまり好きじゃないのよね…」というカミングアウトがあったことを機に、徐々に廃れていったように記憶している。

そして高校生時代。この頃には、近所の定食屋も軽食屋もなくなって、すっかり更地になってしまっていた。それから十数年後に、ようやくその場所にコンビニができるわけだけど、逆に言うと、それまでは何もなかった。いかにも田舎の県道沿いらしい風景で、そこには自販機数台だけが残っていた。それでもないよりはマシで、一応は真面目に試験勉強するような高校生だった僕は夜中まで勉強して起きていることもあり、そういう時に深夜ラジオを聞いたりしていのだけど、のどが渇いたときにはその自販機によく買いに行っていた。真夜中に小銭を握りしめて家を抜け出す、というスリルもあって、ひそかな楽しみになっていた。ただ、いかんせんバリエーションの限界があり、それもさすがに飽きてくる。スポーツドリンク、炭酸飲料、お茶、コーヒー、コーンスープ、そして行き着いたところ…それが、「おしるこ缶」。最初は誰がこんなもの買うのかとさえ思っていたそれに、僕はハマってしまって、毎晩毎晩おしるこ缶を買って飲んでいる時期もあった。あの、他のどの飲み物とも違う独特なのどごしと甘さ、粒の食感。とにかく美味しかった。そのことを当時の友人たちに話したら、大爆笑と完全否定をされたことをよく覚えている。確かに高校生が飲むものではないのかも…。あれからいくらか年を重ねての今は、当然のことながら胸を張って自販機でおしるこ缶を買っている。これもひとえに、あの時の高校生だった僕が買い続けたことにより、今でも生産販売が続いているのだろうと、少しだけ思っていたりもする。ただ、おしるこは当然期間限定品。寒い時期しかない。そういう「レア」感に駆り立てられて買ってしまうのかもしれない。と言いつつも、実はコンビニのレジでは自意識が邪魔をして、おしるこ缶を諦めて無難に缶コーヒーを買ってしまう自分もいる。コンビニで躊躇なくおしるこ缶を買うことができたら、その時こそ本当の意味で「大人の男」になれるのかもしれない…。

画像2

こうやって幼少期から着々と形成された味覚のおかげか、大人になっても、あんこが大好き。と言いつつも、あんこ以外の甘いもの(クリームやチョコ系)も全般に好きなので、もともと甘党なだけだった気もする。お酒も飲めないし。それでも、どちらかと言えば洋菓子よりも和菓子の方が好きだ。これは、年寄りの多い家で育ったから、出されるお菓子が「和」ばかりだったことが大きいのかもしれないけども。挙句、最近ではついに、「あんこへのこだわり」も持ち始めてしまっていて、周囲から少し面倒くさがられてもいる。そりゃ「東京に行ってまでたい焼きやあんみつを食べてくる」とか「テレビで取り上げられていた美味しいどら焼きやあんこを売っているお店まではるばる買いに行く」とかしてると、そう思われても仕方ないが、「市販の安い甘すぎるあんこは買わない」とか「有名な秋保の「さいち」のおはぎには目がなく、ゴマやきな粉よりも、なんとしてでもあんこを食べようとする」とか「パン屋にいったら多少高くてもとにかくあんぱんを買ってしまう」とか、その程度。逆に、「いろんなパンから好きなものを選べる時に、真っ先にあんぱんをあてがわれてしまう」とか、「「あずきバー」や「あいすまんじゅう」は僕が食べるんじゃないかとみんな遠慮していつまでも冷凍庫に残っている」という、ありがた迷惑も多々ある。好きだから別に構わないんだけど、高校生の頃ならまだしも(当時もよくなかったかもしれないが)四十目前の今となっては、さすがにあんこの過剰摂取は怖い。体重がどうとか、内臓脂肪や血糖値がどうとか、夢のない話はここでは避けておくけども、とにかくそういう観点から、摂取量には敏感でいるつもりだ。となると「量より質」は当然の流れ。家族に心配されない程度の量で、できるだけ美味しいあんこを食べるように心がけていきたい。

本当はもっといろんなことを、それこそ「つぶあんとこしあん」とか、「好きなあんこスイーツ」や「映画『あん』」についても書きたかったのだけど、大判焼き~おはぎ~おしるこの思い出を綴ってみたら、例のごとく結構な長さになってしまったので、とりあえず今回は「甘い記憶」でとどめてこの辺で。そりゃあんこの甘さに懐かしさを感じるわけだ。最後にひとつだけ。年末に買いにいった仙台の「望月製餡所」さんの「つぶあん」も「こしあん」、そして大福各種。どれも美味しかったです。機会があればまた買いにいきます。そして「あんこ」の続きも機会があればまた書きます。それではまたそのうちに。

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?